「エアコンから変な臭いがする」
「吹き出し口から水が飛んできた」
なんて経験、ありませんか?
お店でお客様とお話ししていると、実はこういったトラブルの原因が「ドレンパン」にあることが意外と多いんです。
普段は目に見えない場所にあるパーツですが、ここがカビやヘドロで汚れていると、せっかくフィルターを掃除しても嫌な臭いは消えませんし、最悪の場合はお部屋が水浸しになるトラブルにもつながります。
でも、いざ「自分で掃除してみよう」と思っても、場所がよく分からなかったり、分解が難しそうだったりと、悩んでしまうことも多いですよね?
実は、このドレンパンのお手入れには「自分でやっていい範囲」と「プロに任せるべき一線」が明確にあるんです。無理をして故障させてしまう前に、正しい知識を持っておくことが何より大切だと思います。
この記事では、家電量販店で働く私の視点から、ドレンパンの役割や汚れる原因、そして自分でできるギリギリのケア方法から信頼できる業者の選び方まで、包み隠さずお伝えします。
- ドレンパンの場所と汚れる原因を解説
- 自分でできる詰まり解消法と道具を紹介
- 分解掃除のリスクとプロに頼む基準
- 業者選びで失敗しないための重要ポイント
エアコン掃除でドレンパンをきれいにする重要性

まずは、そもそもドレンパンがどこにあって、なぜ掃除が必要なのかをしっかり理解しておきましょう。ここを知っておくだけで、トラブルが起きた時の対処がまったく違ってきますよ。
エアコンのドレンパンはどこの場所にあるか
「ドレンパンって、そもそもエアコンのどこにあるの?」という質問、お店でも本当によく聞かれます。簡単に言うと、ドレンパンは「熱交換器(銀色のアルミフィンの部分)」の真下に隠れているんです。
エアコンが冷房運転をすると、冷たいコップの表面に水滴がつくのと同じ原理で、熱交換器にたくさんの結露水が発生します。その水滴を受け止めて、外に流すための「受け皿」がドレンパンなんですね。
基本的には前面パネルを開けてフィルターを外したさらに奥、送風ファンの上あたりに位置しているんですが、最近のエアコンはデザインがすっきりしている分、部品がぎっしり詰まっていて、外からパッと見ただけでは確認しづらい構造になっています。
特に最近のモデルは、本体のボディ(ケーシング)とドレンパンが一体化しているものが多くて、「ここだけ取り外して洗う」というのがすごく難しくなっているんです。
「見えない場所だからこそ、汚れが溜まっていても気づきにくい」というのが、このパーツの厄介なところなんですよね。
ドレンパンに水が溜まる原因とリスク
ドレンパンの中は、冷房を使っている間はずっと水が溜まっている状態で、湿度はほぼ100%です。そこに、エアコンが吸い込んだホコリや油汚れが流れ込んでくるわけですから、カビや雑菌にとってはまさにパラダイスのような環境なんですよ。
ここで繁殖した菌が作り出すのが、「バイオフィルム」と呼ばれるヌルヌルしたスライム状の汚れです。キッチンの排水溝などでも見かける、あのピンクや茶色のヌメリですね。
これが厄介なのは、ただ臭いだけじゃなくて、ゼリー状に固まって排水口を塞いでしまうことなんです。
放置すると水漏れの原因に!
このスライム汚れが排水口やドレンホースを詰まらせると、行き場を失った結露水がドレンパンから溢れ出し、送風口からボタボタと水が垂れてくる「水漏れ事故」に直結します。
カーテンや畳が濡れてしまう前に、異変に気付くことが大切ですね。
「エアコンから酸っぱい臭いがする」という時も、このドレンパン内のスライムが原因であることが多いんです。
水が溜まったままだと常にカビの胞子を部屋中にまき散らすことにもなりかねないので、衛生面でもリスクが高い場所だと言えます。
ドレンホースの水抜きで詰まりを解消

もしも「エアコンから水が漏れてきた!」という緊急事態になったら、まず試してほしいのが「ドレンホースの吸引(水抜き)」です。
これはドレンパンを直接掃除するわけではありませんが、詰まりを解消して溜まった水を排出する、最も効果的で安全な方法なんですよ。
使う道具は「ドレンホースクリーナー」という専用のポンプです。
ホームセンターやネットでも手軽に買えますし、一家に一台あっても損はないと思います。
おすすめは、藤原産業の「SK11 サクションクリーナー SWT-210D」あたりですね。
使い方は簡単で、外にあるドレンホースの出口にポンプを差し込んで、ハンドルを「引く」だけです。
絶対に「押して」はダメ!
ハンドルを押したまま操作すると、ホース内の汚水や空気が室内のエアコン側に逆流して、部屋中が大変なことになってしまいます。
必ず「引く時だけ繋いで、押す時は外す」を繰り返してくださいね。
これでホース内に詰まっていたスライム状のヘドロが「ズズズッ」と出てきて、ドレンパンに溜まっていた水が一気に流れれば成功です。業者を呼ぶ前に、まずはこれを試してみる価値は大いにありますよ。
水漏れの原因別の対処法や修理費用の目安については、エアコンから水がポタポタ落ちる原因と解決方法を詳しく解説した記事も参考にしてみてください。
自分でドレンパンをメンテナンスする難しさ
「水抜きだけじゃなくて、ドレンパンそのものをきれいにしたい」と思う気持ち、すごく分かります。
でも、正直に言いますね。
一般の方がDIYでドレンパンを完璧に掃除するのは、かなりハードルが高いというのが現実なんです。
先ほどもお話しした通り、ドレンパンはエアコンの奥深くにあります。
市販のエアコン洗浄スプレーを吹きかけたくなるかもしれませんが、それがドレンパンの汚れにしっかり届くかというと、かなり微妙なところです。
逆に、中途半端に洗剤成分が残ってしまうと、それが新たなカビの栄養源になったり、プラスチック部品を傷めて割れてしまったりするリスクもあるんです。
エアコンメーカーの三菱電機も、市販の洗浄スプレーは故障や水漏れ、発煙・発火の原因になる可能性があるため使用を推奨していないと注意喚起しています。
(出典:三菱電機「エアコン掃除で洗浄スプレーを使ってはいけない!オススメできない理由とエアコン内部を掃除する方法をご紹介」)
また、三菱電機の「霧ヶ峰」シリーズのように「はずせるボディ」を採用していて掃除がしやすい機種もありますが、多くのメーカーのエアコンはそう簡単にはいきません。
「外さずに隙間から掃除する」にしても、見えない奥の汚れまでは取り切れないことが多いので、あくまで「応急処置」レベルだと考えておいた方が良いかもしれませんね。
ドレンパンの取り外し方は非常に困難
ネットで検索すると「自分でドレンパンを分解洗浄しました!」という動画やブログが出てくることもありますが、私はこれをお客様には絶対におすすめしません。
なぜなら、リスクが大きすぎるからです。
ドレンパンを取り外すためには、前面パネルやルーバーだけでなく、電気の配線が集まる「電装ボックス」や、機種によっては「送風ファン」まで外さなければならないことが多いんです。
さらに難易度が高いのが、熱交換器(アルミフィン)を持ち上げないとドレンパンが外れないケースです。
ガス漏れ事故の危険性
熱交換器を持ち上げる際に、繋がっている冷媒配管(銅管)に無理な力が加わると、配管に亀裂が入って「プシュー」っとガス漏れを起こす可能性があります。
一度ガスが抜けてしまうと、エアコンはただの送風機になってしまい、修理代も高額になります。
また、元通りに組み立てたつもりでも、ドレンホースとの接続が甘くて、運転した瞬間に大量の水漏れが発生する…なんて失敗談もよく聞きます。
「壊してもいい覚悟」がない限り、分解作業はプロに任せるのが正解かなと思います。
エアコンクリーニングで故障が起きるケースやリスクを減らすためのポイントは、エアコンクリーニングで壊れる確率と安心して依頼するためのコツをまとめた記事でも詳しく解説しています。
エアコン掃除でドレンパンまで洗浄するなら

それでもやっぱり汚れが気になる!
という方のために、ここからは「外さずにできるケア」や「失敗しないプロへの頼み方」について、もう少し突っ込んでお話ししますね。
ドレンパンを外さず掃除するテクニック
分解は怖いけど、なんとかしてヌメリを減らしたい。そんな時に使えるテクニックとして、「隙間からのアプローチ」があります。
完全にピカピカにするのは難しいですが、臭いの原因をある程度減らすことは可能です。
まず、エアコンのコンセントを抜いて、ルーバーを手で優しく開きます。懐中電灯で奥を照らすと、フィンの下やファンの奥にドレンパンの縁が見えることがあります。
ここに黒カビが見えるようなら、物理的に拭き取ってあげるだけでも効果がありますよ。
使う道具は、100円ショップなどでも売っている「サッシ用の隙間ブラシ」や、割りばしにキッチンペーパーやガーゼを巻き付けた自作の棒(いわゆる「松居棒」のようなもの)が便利です。
これを隙間から差し込んで、優しく汚れをこすり落とします。
ただし、奥まで無理に突っ込むと、熱交換器のフィンを曲げたり、見えないセンサーを破損させたりすることがあるので、あくまで「見える範囲」にとどめておくのがコツですね。
隙間から行うドレンパンの簡易掃除方法
もう少し本格的にやりたいという上級者の方には、専用の洗浄剤を使う方法もあります。
例えば、ショーワの「くうきれい」シリーズのようなムース状の洗浄剤や、イチネンTASCOの「ドレンパン・ドレン配管洗浄剤 TA917」といった業務用の製品です。
ただ、ここで一番大事なのは「すすぎ」です。
洗剤をかけっぱなしにするのは絶対にNG!
薬剤で浮いた汚れや洗剤成分が残っていると、かえってカビが大繁殖してしまいます。
園芸用の加圧式噴霧器(ペットボトルに付けるタイプでもOK)などを使って、これでもかというくらい水で洗い流す必要があります。
しっかりとした養生を
水を使うので、エアコンの下にはビニールシートを敷き、エアコン本体にも洗浄カバー(KB-8016など)を装着して、周りが汚れないようにする準備も必須ですよ。
この「準備と後片付け」が実は一番大変だったりします(笑)
ドレンパン洗浄に対応した掃除業者の選び方

「やっぱり自分では不安だな…」と思ったら、迷わずプロに頼みましょう。
ただし、ここで注意してほしいのが、「普通のエアコンクリーニングではドレンパンまで外して洗わないことが多い」という事実です。
一般的な1万円前後のクリーニングは、カバーを外して高圧洗浄機で洗うスタイルですが、これだとドレンパンは付けたままで行われます。もちろんある程度はきれいになりますが、ドレンパンの裏側や入り組んだ部分のヘドロまでは落ち切らないことがあるんです。
もし「徹底的に臭いを消したい」「水漏れを直したい」という目的があるなら、「ドレンパン分解洗浄」というオプションがある業者を選んでください。
例えば「おそうじ本舗」などは、オプションでドレンパン外しを明記していますし、「ヤマダ建物クリーニング」のような完全分解に特化した業者さんもいます。
料金は少し高くなりますが、中途半端に掃除して臭いが残るよりは、一度リセットするつもりで頼む価値はあると思いますよ。
悪質業者を避けて信頼できるところに依頼するためのチェックポイントは、エアコンクリーニングの業者選びで失敗しないための全知識を解説した記事もあわせて確認しておくと安心です。
エアコン掃除とドレンパン管理のまとめ
ここまで、エアコン掃除の中でも特に厄介な「ドレンパン」についてお話ししてきました。
見えない場所だからこそ、気づかないうちに汚れが溜まってトラブルの元になりやすいんですよね。
最後に、今回のお話を分かりやすくまとめてみました。
ご自身の状況に合わせて、最適なケア方法を選んでみてください。
| 対処法 | 難易度・費用 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| ドレンホースの吸引(水抜き) | 簡単・安い (道具代 2~3千円) |
水漏れしている人、とりあえず詰まりを直したい人。まずはこれから! |
| 隙間からの簡易掃除 | 中・安い (道具・養生が必要) |
少し臭いが気になる人。DIYが好きで慎重に作業できる人。 |
| 業者による分解洗浄 | お任せ・高い (2万円~) |
徹底的にきれいにしたい人。故障のリスクを避けたい人。 |
エアコンは一度買ったら長く使う大切な家電です。
無理な分解で壊してしまうよりも、日頃はフィルター掃除や水抜きなどの簡単なケアをして、数年に一度はプロにしっかり洗ってもらうのが、結果的には一番コスパが良い付き合い方かもしれませんね。
この記事が、あなたの快適なエアコン生活のお役に立てれば、家電店員としてこんなに嬉しいことはありません!



