洗濯機を開けた瞬間、お気に入りの白いシャツにピロピロした黒いカスがペタッと張り付いているのを見つけて、がっかりした経験はありませんか?
まるでワカメのようにゆらゆらと漂うこの謎の物体の正体は、実は洗濯槽の裏側で密かに繁殖していた黒カビなんです。
この厄介な黒いカスが服についてしまう原因は、日頃の洗濯習慣や洗濯機のお手入れ不足にあることがほとんど。
でも安心してください。
適切な取り方を知れば、この問題はしっかり解決できます。
オキシクリーンやカビキラー、ハイターなど身近なアイテムを使った効果的な掃除方法から、洗濯槽クリーナーの正しい選び方まで、家電のプロとして長年お客様のお悩みに向き合ってきた経験をもとに、実用的な解決策をお伝えします。
また、どうしても改善されない場合の最終手段として買い替えのタイミングについても触れていきますので、今すぐ実践できる対策から長期的な視点での解決方法まで、幅広い情報をご紹介していきますね!
洗濯機から出るわかめのような黒いカスの正体

- ワカメのような黒いカスの正体とは?
- 汚れが溜まってしまう原因
- 服についたときの応急処置
まずは、敵の正体を知ることから始めましょう。
あの黒いピロピロした物体が何なのか、なぜ発生してしまうのか。そしてもし大切な衣類についてしまったらどうすれば良いのか。
ここでは、黒いカスにまつわる基本的な知識から解説していきますね。
ワカメのような黒いカスの正体とは?
洗濯後に衣類に付着している、ワカメのような黒いカスの正体は「黒カビ」です。
もう少し詳しくお話しすると、洗濯槽の裏側で発生した黒カビが、洗剤の溶け残りや皮脂汚れ、ホコリなどと混ざり合って塊になり、洗濯の水流で剥がれ落ちたものなんです。
洗濯槽は、一見するとピカピカのステンレスで清潔に見えますよね。でもその裏側は、私たちの見えない部分でカビが繁殖するには絶好の環境になっています。洗濯のたびに少しずつ剥がれ落ちたカビの塊が、洗濯物と一緒にぐるぐる回って、最終的に衣類に絡みついてしまう、というわけですね。
「ピロピロワカメ」なんて呼ばれることもありますが、正体がカビだと知ると、ちょっと気持ち悪いと感じる方も多いのではないでしょうか。
この黒いカスを見つけたら、それは「洗濯槽の裏側がかなり汚れていますよ」という洗濯機からのサインだと思って、すぐに対策を始めることをおすすめします。
汚れが溜まってしまう原因
そもそも、なぜ衣類をきれいにするための洗濯機に、カビが発生してしまうのでしょうか?
その理由は、洗濯槽がカビの繁殖に必要な「栄養」「湿度」「温度」という3つの条件を満たしやすい場所だからです。
特に、洗剤や柔軟剤を規定量より多く入れてしまうと、溶け残った成分が洗濯槽の裏側にヘドロのように蓄積し、カビの絶好の栄養源になってしまいます。
カビが好む高い湿度
カビは、湿度が高い場所を好みます。洗濯が終わった直後の洗濯槽内は、水分で満たされており、湿度が非常に高い状態です。
洗濯後にフタを閉めたままにしておくと、湿気がこもってしまい、カビがどんどん繁殖しやすい環境を作り出してしまいます。
カビが活発になる温度
カビは20℃〜30℃の温度で最も活発に繁殖すると言われています。近年の住宅は気密性が高く、年間を通して室内がこの温度帯に保たれていることが多いですよね。
特に、節水のためにお風呂の残り湯を使って洗濯するご家庭も多いと思いますが、温かいお湯は洗濯槽の温度を上げ、かえってカビの活動を活発にさせてしまう原因にもなるんです。
このように、「栄養」「湿度」「温度」の三拍子が揃った洗濯槽は、残念ながらカビにとっては天国のような場所。だからこそ、定期的にお掃除をして、カビが住みにくい環境を保ってあげることが大切なんですね。
服についたときの応急処置
洗濯槽の掃除が必要だと分かっていても、忙しくてすぐにはできないこともありますよね。そんな時に限って、お気に入りの白いシャツに黒いカスが…なんてことも。
もし衣類に黒いカスが付いてしまったら、慌てて指でゴシゴシこするのは絶対にやめてください。カビの塊が崩れて、繊維の奥に入り込んでしまい、かえって取れにくくなってしまいます。
ここでは、衣類を傷めずにできる応急処置の方法をいくつかご紹介します。
乾かしてから、はたき落とす
一番シンプルで簡単な方法です。
まずは、衣類を完全に乾かします。
黒いカスも乾燥すると、ポロポロと取れやすくなります。乾いたのを確認したら、ベランダなど屋外で衣類をバサバサと振ったり、生地を優しく指ではじいたりして、カスをはたき落としましょう。
粘着力の弱いテープ(マスキングテープなど)で、そっと貼り付けて取るのも効果的ですよ。
酸素系漂白剤でつけ置き洗い
はたき落とすだけでは衛生面が気になる、という方には、つけ置き洗いがおすすめです。
この時、洗濯槽にはまだカビが残っている可能性が高いので、必ず洗濯ネットに入れてから洗うようにしてください。ネットに入れることで、他のカビが再び付着するのをある程度防ぐことができます。
洗濯機のわかめのような黒いカスを取る方法

- 黒いカスの取り方
- 洗濯槽クリーナーの選び方
- オキシクリーンを使った掃除
- カビキラーを使った掃除
- ハイターは洗濯槽の掃除に使える?
- ドラム式洗濯機を掃除するときの注意点
- 掃除してもなくならない、きりがない場合
- 最終手段としての買い替えも検討
黒いカスの正体と原因がわかったところで、いよいよ本格的なお掃除に取り掛かりましょう。
ここでは、基本的なお掃除の手順から、市販クリーナーの正しい選び方、そして「掃除しても全然なくならない!」という時の最終手段まで、状況に合わせた解決策を具体的にお伝えしていきます。
黒いカスの取り方
洗濯機の黒いカスを取り除くための基本的なお掃除は、「月に1回、洗濯槽クリーナーを使って槽洗浄コースを運転する」ことです。
最近の洗濯機には、洗濯槽のお手入れ専用の「槽洗浄コース」が搭載されていることが多いので、まずはそちらを活用するのが一番簡単で確実だと思います。
基本的な手順は以下の通りです。
もし、お使いの洗濯機に「槽洗浄コース」がない場合は、標準コースでも代用できますよ。
その場合は、高水位まで給水した後にクリーナーを入れ、「洗い」を5分〜10分ほど行った後、一時停止して数時間つけ置きします。その後、再度標準コースで最後まで運転すればOKです。
大切なのは、これを「汚れが気になってから」ではなく「月に1回の習慣」として定期的に行うこと。そうすることで、カビが大量に繁殖するのを防ぎ、いつでも清潔な状態をキープできます。
洗濯槽クリーナーの選び方
お店に行くと、たくさんの洗濯槽クリーナーが並んでいて、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。
洗濯槽クリーナーは、主成分によって大きく「塩素系」と「酸素系」の2種類に分けられます。それぞれに得意なことと苦手なことがあるので、特徴を理解して選ぶことが大切です。
ここでは、両者の違いを分かりやすく比較してみました。
種類 | 酸素系クリーナー | 塩素系クリーナー |
---|---|---|
主成分 | 過炭酸ナトリウム | 次亜塩素酸ナトリウム |
汚れの落とし方 | 強力な泡の力でカビを「剥がし取る」 | 化学的な作用でカビを「分解・殺菌する」 |
メリット | ・汚れ落ちが目に見える ・刺激臭が少ない ・環境にやさしい | ・殺菌力が非常に高い ・つけ置き不要で手軽 ・手間がかからない |
デメリット | ・お湯を使う必要がある ・つけ置きに時間がかかる ・浮いたカビをすくう手間がある ・ドラム式には不向きな場合が多い | ・ツンとした塩素臭がある ・汚れ落ちが目に見えにくい ・取り扱いに注意が必要(混ぜるな危険) |
こんな人におすすめ | ・初めて掃除する人 ・汚れを徹底的に落としたい人 ・刺激臭が苦手な人 | ・手軽に済ませたい人 ・定期的にメンテナンスしている人 ・ドラム式洗濯機を使っている人 |
初めてお掃除する方や、半年以上お手入れをしていなかった方には、目に見えて汚れがごっそり取れる「酸素系」が達成感もあっておすすめです。
一方で、こまめに掃除している方や、とにかく手軽に済ませたい方は「塩素系」を選ぶと良いでしょう。
また、重要なポイントとして、多くのドラム式洗濯機では、故障の原因になる可能性があるため「酸素系クリーナー」の使用が推奨されていません。ドラム式をお使いの方は、基本的に「塩素系」を選ぶか、メーカー指定の純正クリーナーを使用するのが安心ですね。
オキシクリーンを使った掃除
「酸素系クリーナー」の代表格といえば、SNSなどでも話題になるのが「オキシクリーン」ですよね。
「オキシ漬け」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。その強力な発泡力で、洗濯槽の裏にこびりついた汚れを根こそぎ剥がし取ってくれるのが特徴です。
ただし、効果を最大限に引き出すには、いくつかポイントと手間が必要です。
オキシクリーンでの掃除は、汚れが目に見えて取れるので達成感は大きいですが、「時間がかかる」「お湯を準備するのが大変」「ゴミをすくう手間がかかる」といったデメリットもあります。
時間に余裕がある時に、じっくり取り組むのがおすすめですよ。
カビキラーを使った掃除
一方、「塩素系クリーナー」の代表格といえば「洗たく槽カビキラー」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
酸素系が「物理的に剥がす」のに対し、こちらは強力な殺菌力でカビを「化学的に溶かして分解する」のが特徴です。
最大のメリットは、何と言ってもその手軽さです。
これだけで、見えない部分のカビまでしっかり分解・除菌してくれます。汚れがごっそり浮いてくることはないので、掃除した実感は湧きにくいかもしれませんが、洗浄力は非常に強力です。
忙しくて掃除に時間をかけられない方や、定期的なメンテナンスを手早く済ませたい方には、本当に便利なアイテムだと思います。
私も普段の月1メンテナンスには、この手軽な塩素系クリーナーを使っています。そして半年に1回くらい、時間のある時に酸素系で徹底的に掃除する、という使い分けをしていますよ。
塩素系クリーナーを使う際に、一つだけ注意してほしいのが「ニオイ」と「換気」です。独特のツンとした塩素臭がするので、掃除中は必ず洗面所の窓を開けたり、換気扇を回したりするようにしてくださいね。
また、酸性タイプの製品と混ざると有毒ガスが発生する危険があるため、他の洗剤などと混ぜて使うのは絶対にやめてください。
ハイターは洗濯槽の掃除に使える?
「専用のクリーナーじゃないとダメ?」
「家にある衣類用のハイターは使えないの?」
という質問も、お客様から本当によくいただきます。
結論から言うと、市販の「衣類用塩素系漂白剤(ハイターなど)」でも代用は可能です。
実際に日常のお手入れ方法として、衣類用の塩素系漂白剤の使用を推奨しているメーカーもあります。
専用クリーナーの主成分の多くが「次亜塩素酸ナトリウム」なのですが、これが衣類用ハイターの主成分と同じなので、カビを分解・殺菌する効果がしっかり期待できるんですね。
使い方もとても簡単で、水量50Lに対して約200mlを目安に洗濯槽へ直接入れ、「槽洗浄コース」または「標準コース」で運転するだけです。専用クリーナーに比べてかなり安価に手に入るので、コストを抑えたい方には嬉しいポイントですよね。
ただし、注意点がいくつかあります。
私の個人的な考えとしては、「普段の軽いお手入れにはハイターを使い、数ヶ月に一度、徹底的にきれいにしたい時に専用クリーナーを使う」という使い分けが、コストと効果のバランスが取れていて良いのではないかと思います。
ドラム式洗濯機を掃除するときの注意点

最近はドラム式洗濯機をお使いのご家庭も増えてきましたよね。ドラム式洗濯機のお手入れは、縦型洗濯機とは少し勝手が違うので、いくつか注意が必要です。
最も重要なポイントは、先ほどもお伝えしたように「酸素系クリーナー(オキシクリーンなど)の使用は基本的に避ける」ということです。
これには、ドラム式特有の2つの理由があります。
ですので、ドラム式洗濯機のお手入れは、泡立ちが少なく、少ない水量でも効果を発揮する「塩素系クリーナー」を使うのが基本となります。
ドラム式は構造が複雑なので、自己流のお手入れは避けて、取扱説明書をしっかり確認するのが一番安心ですね。
お店でも「ドラム式にオキシクリーンを使ったらエラーが出た」というお話を時々伺います。大切な洗濯機を長く使うためにも、必ず機種に合ったお手入れ方法を選んでくださいね。
掃除してもなくならない、きりがない場合
「月に1回、ちゃんとクリーナーで掃除しているのに、黒いカスがなくならない…」
これは本当に厄介な問題ですよね。
お手入れを頑張っても改善されない場合、いくつか原因が考えられます。
長年の汚れが蓄積している
特に、購入してから何年も一度もお手入れをしていなかった場合、市販のクリーナーだけでは落としきれないほど頑固なカビが、洗濯槽の裏側にびっしりとこびりついている可能性があります。
クリーナーを使うことで表面の汚れは落ちますが、その奥に潜むカビが少しずつ剥がれ落ちてきている状態ですね。
クリーナーの種類が合っていない
先述のように、クリーナーには種類があります。
もし、ずっと手軽な塩素系だけを使っていたなら、一度、時間と手間をかけて酸素系クリーナーでごっそり汚れを剥がし取ってみると、状況が改善されるかもしれません。
その逆もまた然りです。
それでも、どうしても黒いカスが出続ける…という場合は、ご家庭でのお手入れの限界かもしれません。その場合は、最終手段としてプロの力を借りるという選択肢があります。
ハウスクリーニング業者などが提供している「洗濯機クリーニング(分解洗浄)」サービスです。
専門のスタッフが洗濯槽を取り外して、普段は手の届かない裏側の隅々まで高圧洗浄機などで徹底的に洗浄してくれます。
料金はかかりますが、その効果は絶大です。新品同様のピカピカな状態に戻ることも少なくありません。
最終手段としての買い替えも検討
いろいろな対策を試しても改善しない、あるいは洗濯機自体が古くなってきた…という場合は、思い切って「買い替え」を検討するのも一つの賢明な選択だと思います。
一般的に、洗濯機の寿命は設計上の標準使用期間として7年〜10年とされています。長年使用していると、モーターやベルトなどの部品が劣化してくるだけでなく、掃除では落としきれない汚れやカビが内部に蓄積してしまいます。
特に、以下のようなサインが見られたら、買い替えを考えるタイミングかもしれません。
家電量販店で働いていると実感するのですが、最近の洗濯機はカビ対策の機能が本当に進化しているんです。
例えば、洗濯のたびに自動で槽内を洗浄してくれる「自動おそうじ機能」や、洗濯終了後にイオンを放出してカビ菌の発生を抑制する機能など、日頃のお手入れの手間をぐっと減らしてくれるモデルがたくさん出ています。
また、洗剤や柔軟剤を最適な量だけ自動で投入してくれる機能も、溶け残りを防いでカビの栄養源を断つという意味で、非常に効果的です。
分解洗浄の費用も、機種によっては1万5千円〜3万円ほどかかる場合があります。もし古い洗濯機にその費用をかけるのであれば、最新の省エネ・カビ対策機能付きのモデルに買い替えた方が、長期的に見て電気代や水道代の節約にもなり、結果的にコストパフォーマンスが良くなる可能性も十分にありますよ。
総括:洗濯機のわかめのような黒いカスの対処法
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。