掃除機を選ぶ際に、必ずといっていいほど目にする「吸込仕事率」とは一体どんな意味なのでしょうか?
家電量販店でも、お客様から最も多く寄せられる質問の一つがこの吸込仕事率に関するものなんです。
ワット数で表示されるこの数値は、確かに掃除機の性能を示す重要な指標ではありますが、数値が高ければ必ずしも優秀な掃除機というわけではありません。実は、測定方法や掃除機のタイプによって大きく意味が変わってくるため、正しい理解が必要なんですね。
特に最近では、ダイソンをはじめとする海外メーカーがダストピックアップ率という新しい指標を採用するなど、従来の吸込仕事率だけでは判断できない状況も生まれています。コードレス掃除機やロボット掃除機の普及により、評価方法も多様化しているのが現状です。
この記事では、吸込仕事率の基本的な意味から実際の選び方のポイント、さらには各タイプ別のランキング情報まで、掃除機選びに必要な知識を分かりやすくお伝えします。
吸引仕事率とは|基本情報

掃除機の性能を理解する上で最も基本となる吸込仕事率について、まずは詳しく見ていきましょう。測定方法から実際の選び方まで、知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。
吸引仕事率とは
「吸込仕事率」とは、掃除機の性能を表す重要な指標なのは間違いありません。
吸込仕事率とは、JIS規格により定められた掃除機の吸引力を示す数値で、W(ワット)という単位で表されます。消費電力と同じワット表記ですが、これは全く別の概念なので注意が必要ですね。
具体的には、掃除機が吸い込む空気の量(風量)と、物を浮き上がらせる力(真空度)を掛け合わせて算出されるんです。計算式は「吸込仕事率=0.01666×風量(立方メートル/min)×真空度(Pa)」となります。
測定は日本電機工業会の規格に基づいて行われ、新品のフィルターを取り付け、ヘッドを外した状態で専用機を用いて計測されます。つまり、掃除機本体だけの吸引力を純粋に測定したものということですね。
ただし、ここで注意したいのは、吸込仕事率は空気を吸い込む力を測定したもので、実際にゴミを吸い取る能力とは異なるということです。あくまで掃除機の基本性能を示す目安の一つと考えておきましょう。
吸込仕事率の目安
掃除機のタイプによって、吸込仕事率の数値は大きく異なります。まずは各タイプの一般的な数値を把握しておくことが大切ですね。
キャニスター型掃除機の場合、300~500W程度が強い吸引力の目安とされています。紙パック式であれば500~600W程度の製品が多く、高性能なものでは600Wを超える場合もあります。一方、サイクロン式は200~400W程度とやや低めの数値になる傾向があるんです。
スティック型やコードレス掃除機では、20~100W程度がスタンダードです。50~100W程度あれば十分な吸引力を実感できるでしょう。軽量モデルでも35W程度の吸込仕事率を持つ製品が増えています。
ハンディクリーナーはさらに数値が低くなり、10~50W程度が一般的です。ただし、最近では強力な吸引力を持つモデルも登場しており、60W以上の製品も見つけることができます。
これらの数値を参考にする際は、掃除する環境も考慮する必要があります。カーペットの奥に入り込んだハウスダストまでしっかり掃除したい場合は、300W前後の吸込仕事率を目安にすると良いでしょう。
フローリング中心の環境であれば、それほど高い数値は必要ありません。むしろ取り回しやすさや軽量性を重視した方が実用的かもしれませんね。
吸込仕事率はあてにならない?

吸込仕事率は確かに掃除機の性能を示す指標ですが、「高い数値=優秀な掃除機」とは限らないんです。これにはいくつかの理由があります。
まず、測定方法に注目してください。吸込仕事率はヘッドを取り外した状態で測定されるため、実際の掃除性能とは異なる場合があります。いくら本体の吸引力が強くても、ヘッドの性能が劣れば効果的にゴミを集められませんからね。
ヘッドには主に3つのタイプがあります。モーターブラシは最も集じん力に優れ、タービンブラシは中程度、床ブラシは軽量ですが集じん力は劣ります。同じ吸込仕事率でも、ヘッドの違いで掃除効果は大きく変わるということです。
また、集じん方式による違いも見逃せません。紙パック式はゴミがたまると吸引力が低下するため、より高い吸込仕事率が必要になります。一方、サイクロン式は吸引力が持続しやすいため、数値が低くても実用性は高いんです。
最近では「ダストピックアップ率」という新しい指標も注目されています。これは実際に床にゴミをまいて、どれだけ吸い取れるかを測定するもので、より実用的な評価方法といえるでしょう。
さらに、コードレス掃除機では、バッテリーの充電状態や劣化によって吸引力が変動するため、吸込仕事率を表記していないメーカーも多いんです。
私も普段の店頭では、お客様に「数値だけでなく、実際の使用環境に合った機能や使いやすさも重視してくださいね」とお伝えしています。吸込仕事率は参考程度に留めて、総合的に判断することが大切です。
ダイソンはどれくらい?

ダイソンといえば「吸引力の変わらない掃除機」で有名ですが、吸込仕事率はどの程度なのでしょうか。それには実は少し複雑な事情があるんです。
ダイソンは以前のV8シリーズまでは吸込仕事率を公表していましたが、それ以降の新しいモデルでは非公表としています。公表されていた当時のデータを見ると、V8の強モードで115W程度でした。
これは他のコードレス掃除機と比較すると相当高い数値です。例えば、マキタの上位モデルCL282FDが最強モードで60W程度ですから、約2倍の数値ということになりますね。
現在の最上位モデルであるV12シリーズは、前フラッグシップのV11を凌駕するパワフルさを実現しているとされています。機能面でも吸引したゴミ量とサイズを計測するピエゾセンサーや、床の暗所に落ちているゴミを可視化するレーザーなど、先進技術が搭載されています。
ダイソンの「Digital Slim」シリーズは、本体重量が2kg未満と軽量でありながら高い吸引力を両立しています。実際の検証でも、フローリング・カーペットともに優秀な結果を示しているんです。
ハイエンドの「Detect」シリーズでは、Digital Slimの最大2.3倍の吸引力を持つモデル(Gen5:2.3倍、V12:1.5倍)もあります。ペットの毛や微細なハウスダストまで徹底的に除去したい場合には、これらのモデルが効果的でしょう。
ダイソンの特徴は、14個のサイクロンによる最大100,000Gの遠心力で、微細なホコリを気流から取り除く技術にあります。この技術により、吸込仕事率の数値以上の実用性を実現しているといえるでしょう。
カーペットでの必要ワット数

カーペットを効果的に掃除するためには、どの程度の吸込仕事率が必要なのでしょうか。それは床材の種類によって要求される性能は大きく異なります。
フローリング中心の環境であれば、それほど高い吸込仕事率は必要ありません。スティック型の50W程度でも十分対応できるでしょう。しかし、カーペットになると話は変わってきます。
毛足の短いカーペットであれば、100~150W程度の吸込仕事率があれば安心です。これは一般的なコードレス掃除機の上位モデルで実現できる数値ですね。
問題は毛足の長いカーペットや、厚手のラグです。これらの場合は300W前後の吸込仕事率を目安にした方が良いでしょう。繊維の奥に入り込んだハウスダストや細かなゴミまでしっかり吸い取るためには、相応のパワーが必要なんです。
ペットを飼っている家庭では、さらに高い性能が求められます。ペットの毛は静電気で繊維に絡みつきやすく、普通の掃除機では取り切れない場合があります。2500Pa以上(ロボット掃除機の場合)や、キャニスター型の400W以上が推奨されるでしょう。
ただし、吸込仕事率だけでなくヘッドの性能も重要です。モーターブラシ搭載のヘッドであれば、比較的低い吸込仕事率でもカーペット掃除に対応できます。回転ブラシがゴミをかき出してくれるからですね。
また、掃除の頻度も考慮してください。毎日こまめに掃除するのであれば、それほど高いパワーは必要ありません。週に数回程度の掃除であれば、より強力な吸引力が求められるでしょう。
実際の使用では、カーペットの材質や使用環境によっても最適な数値は変わります。購入前に実際に試用できるのであれば、ぜひ体験してみることをおすすめします。
吸引仕事率とは|ランキング情報

続いて、2025年の吸込仕事率ランキングをタイプ別にご紹介します。各メーカーの注目モデルから、あなたにぴったりの掃除機を見つけるための情報をお届けしますね。
コードレス機の吸込仕事率ランキング

2025年現在のコードレス掃除機における吸込仕事率の上位モデルをご紹介しましょう。
順位 | メーカー | モデル名 | 吸込仕事率 | 重量 | 価格帯 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 日立 | パワかるスティック PV-BL30K |
約150W (HIGH運転時) |
約1.4kg | 4-5万円 | 小型・軽量ながらハイパワー、自走式ヘッド搭載 |
2位 | ダイソン | V12 Detect Slim Fluffy SV46FF |
非公表 (Digital Slimの約1.5倍相当) |
2.2kg | 4-6万円 | レーザー検知機能、Hyperdymiumモーター搭載 |
3位 | シャープ | RACTIVE Air POWER EC-SR9 |
約100W (従来機の約1.5倍) |
1.7kg | 5-6万円 | 史上最強パワーと低騒音化を両立 |
第1位:日立 パワかるスティック PV-BL30K
日立の「パワかるスティック PV-BL30K」は、約150W(HIGH運転時)という高い吸込仕事率を実現しています。
パワフルなジェット3Dファンモーター搭載で、約1.4kgという軽さを実現しており、ワンタッチゴミ捨てやからまんブラシといった便利な機能も搭載しているバランスの良いコードレス掃除機です。
軽さとパワーの両立で一歩リードしており、自走式ヘッドで実際の重量以上に軽い使い心地を提供します。
第2位:ダイソン V12 Detect Slim Fluffy SV46FF
Hyperdymium(ハイパーディミアム)モーターが毎分最大125,000回転することで、「Dyson Digital Slim」と比べて+50%パワフルな吸引力を実現しています。
具体的な吸込仕事率は非公表ですが、「Hyperdymiumモーター」を搭載したコードレススティッククリーナーで、モーターが毎分最大125,000回転し、微細なホコリから大きなゴミまでしっかり吸引します。
レーザー検知機能により、目に見えないゴミも可視化できる先進的な機能が特徴です。
第3位:シャープ RACTIVE Air POWER EC-SR9
軽量高出力モーターを搭載した「RACTIVE Air POWER(ラクティブ エア パワー)」で、「ノイズリダクション設計」の進化により「RACTIVE Air」史上最強パワーと低騒音化を両立しています。
25.2Vのリチウムイオンバッテリーと新設計のモーターを採用し、吸排気経路の設計を見直すことで、最大吸引力は従来機(2018年モデル「EC-AR2SX」)の約1.5倍を実現しており、約100W相当の性能を発揮します。
キャニスター型の吸込仕事率ランキング

コード式のキャニスター型掃除機は、安定した電力供給により高い吸込仕事率を実現できます。2025年の注目モデルを性能順にご紹介しましょう。
順位 | メーカー | モデル名 | 吸込仕事率 | 重量 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | 日立 |
CV-SV90K
消費電力840W / 運転音59dB
|
300W | – | 高性能小型ファンモーター搭載、99%以上の吸込力持続性能、静音性両立 |
1位 | 三菱電機 |
TC-ED2D
掻き出す植毛 + 拭き植毛ブラシ
|
300W | – | 強い吸引力、2種類の植毛ブラシであらゆる床材に対応 |
1位 | パナソニック |
MC-JP860K
V字構造ブラシ搭載
|
300W | 2.0kg | 軽量設計でありながら300W実現、V字構造ブラシでゴミを残さず吸い取り |
第1位には日立の「CV-SV90K」がランクイン。吸込仕事率300W(消費電力840W)の高性能小型ファンモーターを搭載し、運転音は59dBと静音性も両立しています。99%以上の吸込力持続性能も魅力的です。
同じく同率1位に三菱電機の「TC-ED2D」がエントリー。吸込仕事率300Wの強い吸引力で、掻き出す植毛と拭き植毛の2種類を採用したブラシにより、あらゆる床材に対応します。
最後も同率1位でパナソニックの「MC-JP860K」。本体質量2.0kgの軽量設計でありながら吸込仕事率300Wを実現し、V字構造のブラシでゴミを残さず吸い取ります。
これらの上位モデルに共通するのは、単に吸込仕事率が高いだけでなく、実用性を高める様々な工夫が施されていることです。静音設計、軽量化、メンテナンス性の向上など、数値だけでは分からない魅力があるんです。
キャニスター型を選ぶ際は、吸込仕事率とともに本体重量も確認しましょう。最近は2.2~2.3kg程度の軽量モデルが主流になっており、取り回しやすさが向上しています。
また、運転音にも注目してください。高い吸引力を持つモデルでも、65dB以下の静音設計を実現している製品が増えています。集合住宅にお住まいの方には特におすすめの機能ですね。
サイクロン式の吸込仕事率ランキング

サイクロン式掃除機は遠心分離によりゴミと空気を分ける仕組みのため、紙パック式と比べて吸込仕事率の数値は低めに出る傾向があります。しかし、実用性は決して劣りません。
順位 | メーカー | モデル名 | 吸込仕事率 | 重量 | 価格帯 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 三菱電機 | TC-ED2D | 300W | – | 3-4万円 | 強力な旋回気流、ブラシ底面の真空度を高める設計 |
2位 | 東芝 | トルネオV VC-CLX72 | 約200W | 2.3kg | 4-5万円 | 2段階遠心分離技術、軽量設計で扱いやすい |
3位 | シャープ | EC-CT12 | 180W | 2.5kg | 2-3万円 | 独自エアフロー設計、効率的な空気の流れを実現 |
第1位:三菱電機 TC-ED2D
三菱電機の最新サイクロンモデルが堂々の1位にランクイン。吸込仕事率300Wを実現し、強力な旋回気流によってゴミと空気を効率的に分離します。ブラシ底面の真空度を高めつつ、回転ブラシでゴミをしっかりかき出すのが特徴です。サイクロン式としては驚異的な数値を達成しており、実用性と数値性能を両立した優秀なモデルです。
第2位:東芝 トルネオV VC-CLX72
東芝の軽量サイクロンが2位に続きます。吸込仕事率は約200W程度と控えめながら、2段階遠心分離技術により優れた実用性を発揮。本体重量も2.3kg程度と軽量で扱いやすく、フィルターレス構造により手間のかからない設計が魅力です。数値以上の清掃効果を実感できるモデルです。
第3位:シャープ EC-CT12
シャープのサイクロンモデルが3位にエントリー。独自のエアフロー設計により、効率的な空気の流れを実現しています。吸込仕事率は180W程度ですが、ヘッドの工夫により実際の清掃効果は数値以上。遠心分離式サイクロンとHEPAクリーンフィルターの組み合わせで、微細なホコリもしっかりキャッチします。
サイクロン式を選ぶ際の重要なポイントは、ゴミ分離能力の高さです。優秀なサイクロン機構であれば、フィルターの目詰まりを防ぎ、吸引力を長時間維持できます。
また、ダストカップの容量と形状も確認しておきましょう。ゴミ捨てが簡単で、手を汚さずに済む設計の製品がおすすめです。透明なダストカップであれば、ゴミの蓄積状況も一目で分かりますよね。
メンテナンス性も大切な要素です。フィルターやダストカップが水洗い可能で、お手入れが簡単な製品を選ぶと長く快適に使用できるでしょう。
先述のように、サイクロン式は数値だけで判断するのではなく、実際の使用感や維持管理のしやすさも含めて総合的に評価することが重要です。
ロボット掃除機の吸込仕事率ランキング

ロボット掃除機は内蔵バッテリーで駆動するため、従来の吸込仕事率ではなくPa(パスカル)値で性能が表示されることが一般的です。2025年の高性能モデルをご紹介します。
順位 | メーカー | モデル名 | 吸引力 | 価格帯 | 主要機能 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | ECOVACS | DEEBOT T30 PRO OMNI | 11,000Pa | 10万円以上 |
全自動
水拭き
自動ゴミ収集
|
2位 | ECOVACS | DEEBOT X2 OMNI | 8,000Pa | 10万円以上 |
段差2.2cm
水拭き
同時掃除
|
3位 | Anker | Eufy X10 Pro Omni | 8,000Pa | 10万円以下 |
高コスパ
モップ洗浄
自動乾燥
|
第1位はECOVACSの「DEEBOT T30 PRO OMNI」で、驚異の11,000Paを実現。これは一般的なロボット掃除機の2,000Paを大きく上回る数値です。カーペットの奥深くまで入り込んだゴミも徹底的に吸引できるでしょう。
第2位は同じくECOVACSの「DEEBOT X2 OMNI」で8,000Pa。先ほどお伝えしたように、段差2.2cmまで乗り越えられる走破性も魅力的です。水拭き機能も搭載し、吸引と水拭きを同時に行えるんです。
第3位にはAnkerの「Eufy X10 Pro Omni」がランクイン。8,000Paのパワフルな吸引力で、自動ゴミ収集機能やモップ洗浄乾燥機能まで搭載しながら10万円以下という高いコストパフォーマンスが評価されています。
ロボット掃除機を選ぶ際は、Pa値とともにダストピックアップ率も確認しましょう。実際にゴミを床にまいて吸い取る能力を測定したもので、95%以上であれば優秀といえます。
また、床材に応じた選び方も大切です。2,000Paはフローリング中心の環境に適しており、2,500Pa以上はペットの毛や毛足の長いカーペットがある家庭におすすめです。
ただし、Pa値が高いほど消費電力や騒音も増加する傾向があります。使用環境とのバランスを考慮して選択することが重要ですね。
最近の高級モデルでは、LiDARセンサーやカメラを搭載した賢い走行システムも注目されています。吸引力だけでなく、効率的な清掃パターンや障害物回避能力も含めて総合的に判断しましょう。
総括:掃除機の吸込仕事率とは
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。