キッチンで冷蔵庫の扉を開けて、いちばん上の棚に手を伸ばした瞬間。奥のほうが影になって見えず、つま先立ちで手探りした経験はありませんか?
背が低めの冷蔵庫、つまり高さ170cm以下で大容量のモデルを探しているあなたなら、この「見えない上段」のもどかしさは身にしみているかと思います。
奥から出てきたのが、いつ買ったか思い出せないタレの小瓶だったりすると、もうため息しか出ませんよね…。
結論から言うと、背が低めの冷蔵庫は上段まで目が届くぶん、食品の管理がぐっとラクになります。
ただし、高さを削ったぶんの容量は、横幅と奥行きで取り戻すしかありません。ここを知らずに高さだけで選ぶと、今度は「入らない」で困ることになります。
この記事では、売り場でよく聞かれる質問をもとに、高さを抑えながら容量も確保する考え方を、実際のモデルの寸法つきで整理していきますね。
- 背が低い冷蔵庫が向く人の特徴
- 170cm以下で狙える容量の上限
- 身長から逆算する高さの目安
- 奥行きと横幅の見落とし対策
背が低めの冷蔵庫が使いやすい理由
まずは、なぜ低めの冷蔵庫がこんなに支持されているのか。そこから見ていきましょう。
高さ170cm以下の冷蔵庫は、最上段まで無理なく見渡せるぶん食品の使い忘れが減り、身長が低めの方や高齢のご家族がいるお家ほど使いやすくなります。
つまり「小さい冷蔵庫を選ぶ」のではなく、「毎日ちゃんと使い切れる冷蔵庫を選ぶ」という発想なのです。
上段まで見渡せて食品を忘れない
低めの冷蔵庫でいちばん効いてくるのは、実は最上段が視界に入るかどうかです。
見えない場所に置いた食品は、記憶からもきれいに消えます。棚の奥で干からびたチューブ調味料、心当たりがある方も多いのではないでしょうか?
身長155cmの方が高さ180cmの冷蔵庫を使うと、最上段の棚はちょうど目線より20cmほど上。手は届いても、中身は見えません。
ここが170cm以下になると、最上段が目線とほぼ同じ高さか、少し上くらいに収まります。扉を開けた瞬間に全体が把握できるので、買い物前に在庫を確認する時間もぐっと短くなりますよ。
食品ロスが減れば、月々の食費にも地味に効いてきます。容量が少し小さくても、使い切れる冷蔵庫のほうが結果的に得をする…というのは、けっこうよくある話かなと思います。
背伸びせず出し入れできる安心感
もうひとつの利点は、体への負担が小さいことです。
上段から重い保存容器を下ろすとき、つま先立ちのまま腕を伸ばす姿勢は、想像以上に危なっかしいものです。
作り置きを詰めたガラス容器や、麦茶を入れた2Lのボトル。落とせばケガにつながりますし、高齢のご家族なら転倒の心配もあります。
背の高い冷蔵庫で起こりやすいこと
最上段が「開かずの棚」になり、実質的な容量が減ってしまいます。カタログ上は大容量でも、使える容量は身長次第で変わるというわけです。
低めのモデルなら、こうした無理な姿勢そのものがなくなります。
ちなみに、上段が余ったからといって冷蔵庫の上に電子レンジを置くのは、放熱と耐荷重の面で注意が必要です。
高さ170cm以下で狙える容量の上限
使いやすさはわかった、では容量はどこまで我慢すればいいのか。ここがいちばん気になるところですよね。
先に正直なところを言うと、高さ170cm以下で400Lを超えるモデルは、選択肢がかなり限られます。
幅60cmなら330Lが現実的な線
幅60cmの標準的な冷蔵庫で高さを170cm以下に抑えると、容量はおおむね330L前後が上限と考えておくと失敗しません。
実際に、現行モデルの寸法を並べてみると傾向がはっきり見えてきます。
| モデル | 容量 | 高さ | 幅 |
|---|---|---|---|
| 三菱 MR-CX33M | 330L | 約1,698mm | 600mm |
| 三菱 MR-C33M | 330L | 約1,698mm | 600mm |
| 三菱 MR-CX27M | 272L | 約1,630mm | 540mm |
| 三菱 MR-CX37M | 365L | 約1,820mm | 600mm |
| アクア AQR-36A | 362L | 約1,775mm | 600mm |
下の2機種を見ていただくと、365Lや362Lといった容量帯は高さが178cm前後まで伸びていることがわかります。数値はいずれもメーカー公表値ですが、あくまで執筆時点の目安として見てくださいね。
【出典】三菱電機『冷蔵庫 CXシリーズ MR-CX37M 製品仕様』
【出典】アクア『冷蔵庫 AQR-36A(定格内容積362L)』
つまり330Lと365Lの差、たった35Lのために、高さは12cmも変わってしまうということです。
この12cmが、あなたにとって背伸びの12cmになるのか、それとも許せる範囲なのか。容量表だけを眺めていると、この視点はどうしても抜け落ちます。
容量そのものの目安から考え直したいときは、容量別に冷蔵庫の選び方を整理した記事もあわせて見ていただくと、家族構成との照らし合わせがしやすくなるかと思います。
400L超えを望むなら何を譲るか
それでも400L以上がほしい。そういうご家庭もありますよね。
その場合に譲る候補は、高さ以外の三つです。奥行き、横幅、そして予算。
幅68cmクラスまで広げられるなら、高さを抑えたまま容量を増やせるモデルの選択肢は一気に広がります。ただし、キッチンの通路が狭いお家では、扉を開けたときに人がすれ違えなくなる点に注意が必要です。
奥行きで稼ぐ方法もありますが、こちらは後ほどお伝えするとおり、使い勝手の面で落とし穴があります。
まとめ買いや作り置きの量が多くて容量を削れないご家庭は、四人家族の食材管理のコツをまとめた記事で収納の工夫を先に見ておくと、必要な容量そのものが下げられる場合もありますよ。
身長から冷蔵庫の高さを逆算する
ここまで読んで、「じゃあ我が家の正解は何センチなの?」と思われたのではないでしょうか。
そこで、売り場でお客様に説明するときによく使う、かんたんな逆算の考え方をお伝えします。
目安は、ふだん使う人の身長プラス15cm。これを冷蔵庫の高さの上限にする、という考え方です。
人の目線は、だいたい身長より10cmほど低い位置にあります。そこから見上げて中身が確認できる範囲を足すと、身長プラス15cmあたりが「見える棚」の限界になるわけです。
身長155cmの方なら170cm、身長150cmの方なら165cm。この数字が、あなたにとっての「高さ低め」の実際のラインになります。
逆算の目安
身長155cm → 高さ170cmまで
身長150cm → 高さ165cmまで
身長145cm → 高さ160cmまで
あくまで一般的な目安なので、最終的には売り場で実物の前に立って確かめてみてくださいね。
この計算のいいところは、家族で数字が割れたときの判断がしやすくなることです。
いちばん背が低い人に合わせるのか、いちばん冷蔵庫を使う人に合わせるのか。ここは家庭ごとに答えが違います。私は「使う頻度が高い人」を基準にすることが多いかなと思います。
葵のワンポイントアドバイス
売り場では、気になったモデルの前で実際に扉を開けて、最上段を覗き込んでみてください。カタログの数字より、この一回のほうがずっと正確に判断できます。
高さだけで選ぶと後悔する落とし穴
高さの基準が決まったところで、次は見落としやすいポイントを潰していきましょう。
実は、買ってから「しまった」となる原因の多くは、高さ以外のところにあります。
奥行きが深いと手前しか使えない
高さを抑えたモデルは、容量を確保するために奥行きが深くなる傾向があります。
奥行き68cm前後の機種になると、腕を伸ばしてもいちばん奥までは届きにくくなります。
そうなると何が起きるか。奥のスペースが物置き化して、結局は手前の3割だけで生活する…という、低めを選んだ意味が薄れる状態になってしまうのです。
とはいえ、奥行きが深いこと自体が悪いわけではありません。ペットボトルや鍋ごと入れたい方には、むしろ深いほうが便利です。
大事なのは、奥まで使い切る前提で選ぶこと。回転式のトレーやコの字ラックを最初から用意しておくだけで、奥の食材が驚くほど扱いやすくなります。
搬入経路と設置スペースの測り方
そして、最後の関門が搬入です。
本体が入る場所を測っただけで安心してしまう方が多いのですが、確認すべきなのは玄関から設置場所までの通り道の全部かなと思います。
- 玄関ドアの有効幅
本体の幅または奥行きに、プラス10cmほどの余裕がほしいところです。 - 廊下の曲がり角
直角に曲がる場所は、本体の高さぶんのスペースが必要になります。 - 設置場所の左右と上
放熱のため、メーカーが指定する隙間を必ず空けてください。
特に見落としがちなのが、扉を全開にしたときの必要スペースです。
壁ぎわに置くと、扉が90度までしか開かず、野菜室のケースが引き出せないことがあります。設置予定の場所で、扉の開く向きまで含めて確認しておきましょう。
測るときのコツ
寸法はメーカーの「設置に必要な寸法」を見てください。本体サイズより数センチ大きい数字が指定されています。
高さ170cm以下のおすすめ冷蔵庫
ここからは、実際に高さを抑えつつ容量を確保しているモデルを具体的に見ていきます。
数を並べても迷うだけなので、性格のはっきり違う三台に絞ってお伝えしますね。
三菱MR-CX33Mが向いている人
高さ170cm以下で容量も機能もほしい方に、まず候補に挙がるのが三菱電機の「MR-CX33M」です。
定格内容積330Lで、本体サイズは幅600×高さ1,698×奥行656mm。170cmをぎりぎり切りながら、三人暮らしまでなら十分に回せる容量を確保しています。
このモデルの魅力は、野菜室が真ん中にあることです。白菜やキャベツ、2Lのペットボトルといった重いものを、腰をかがめずに出し入れできます。低めの高さと真ん中野菜室の組み合わせは、上も下も無理な姿勢が要らないという点で、体への負担がかなり軽くなります。
保存面では、約マイナス3℃から0℃で肉や魚を凍らせずに保つ「氷点下ストッカーA.I.」を搭載しています。買ってきたお肉を冷凍せずに数日置けるので、解凍の手間が減るのはうれしいところ。冷凍室も80Lあり、上下2段に分かれているため、アイスや冷凍ごはんと大型の冷凍食品を分けて整理できます。
一方で、正直に言うと弱点もあります。価格帯は市場想定で17万円台と、同じ330Lクラスの中では高めです。まとめ買いをせず、冷凍食品もあまり使わないご家庭だと、機能を持て余す可能性はあるかなと思います。
三菱MR-C33Mで価格を抑える
同じ330Lでもう少し予算を抑えたいなら、同じ三菱の「MR-C33M」という選択肢があります。
こちらも本体サイズは幅600×高さ1,698×奥行656mmで、高さと容量はMR-CX33Mとほぼ同じ。市場想定価格は14万円台とされており、数万円の差が出ます。
【出典】三菱電機『冷蔵庫 Cシリーズ MR-C33M 製品仕様』
特徴は、上下に分かれた合計17Lの2段チルドです。ハムやチーズなどの加工食品と、生鮮食品を分けて置けるので、使い忘れやニオイ移りを防ぎやすくなります。
差が出るのは保存機能のほうです。氷点下ストッカーのような肉や魚を生のまま長持ちさせる機能はないため、下ごしらえした食材を数日置きたい方には物足りなく感じるかもしれません。年間消費電力量も342kWhと、MR-CX33Mの325kWhよりやや多めです。
電気代の差は、目安として年間で数百円から千円程度。この差をどう見るかは、使う年数と本体価格の差で判断するのがいいかと思います。10年使う前提なら、本体価格の差のほうが大きく効いてきますね。
160cm台まで下げたいときの一台
「170cmでもまだ高い、160cm以下がいい」という方には、同じCXシリーズの「MR-CX27M」があります。
定格内容積272L、本体サイズは幅540×高さ1,630×奥行656mm。高さは163cmまで下がり、幅も54cmとスリムです。
ここで正直にお伝えしておくと、272Lは大容量とは言えません。二人暮らしで、まとめ買いをそれほどしないご家庭が現実的な守備範囲です。三人以上のご家族には、冷凍室の70Lが物足りなくなる可能性が高いかなと思います。
それでも、このモデルには明確な出番があります。身長145cm前後の方や、シニアのご夫婦のお住まい。あるいは、上に電子レンジやオーブンを置きたくて、どうしても高さを削りたいキッチン。真ん中野菜室と氷点下ストッカーA.I.は上位モデルと同じように使えるので、容量以外の使い勝手は落ちません。
幅54cmという細さは、搬入経路が狭いお家でも効いてきます。玄関やキッチンの入口が狭くて諦めていた方は、この幅なら通ることも多いですよ。
メーカーごとの得意分野から絞り込みたいときは、各社の冷蔵庫の特徴を比べた記事も判断材料になるかと思います。
なお、モデルの入れ替わりは毎年あります。正確な寸法や価格は、購入前に必ずメーカーの公式サイトや販売店でご確認ください。
高さ低めの冷蔵庫に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 低めの冷蔵庫は電気代が高くなりますか?
A. 高さが低いこと自体が電気代を押し上げるわけではありません。
年間消費電力量は容量と搭載機能で決まる部分が大きく、同じ容量帯なら高さの違いによる差はごくわずかです。
気になる場合は、カタログに記載された年間消費電力量の数値で比べてみてくださいね。
Q2. 冷蔵庫の上に電子レンジを置いても大丈夫ですか?
A. 機種によります。天面が耐熱仕様で耐荷重が明記されているモデルなら可能です。
ただし放熱スペースの確保が必須で、指定されていない機種に無理に置くのは避けてください。
取扱説明書の設置条件のページに記載があるので、購入前に確認しておくと安心です。
Q3. 幅と奥行きはどちらを優先すべきですか?
A. キッチンの通路に余裕があるなら、幅を広げるほうが使いやすくなります。
奥行きで容量を稼ぐと、奥の食材が取り出しにくくなって死角が生まれやすいためです。
通路が狭くて幅を広げられない場合だけ、奥行きで調整するという順番がおすすめです。
Q4. 買い替え時に古い冷蔵庫はどうすればいいですか?
A. 冷蔵庫は家電リサイクル法の対象なので、リサイクル料金と収集運搬料金がかかります。
新しい一台を購入する販売店に引き取りを依頼するのが、いちばん手間がかかりません。
料金は容量やメーカーで変わるため、見積もりの段階で確認しておきましょう。
低めの冷蔵庫が毎日を軽くする理由
ここまで、高さ170cm以下の冷蔵庫について整理してきました。
最後にもう一度お伝えしたいのは、冷蔵庫選びは大きさ比べではないということです。
カタログのいちばん上に載っている大容量モデルが、あなたのキッチンで力を発揮するとは限りません。最上段が見えず、奥に手が届かないなら、その容量は数字の上だけのものになってしまいます。
身長プラス15cmを上限にして、幅と奥行きで容量を取り戻す。この順番で考えると、迷いはずいぶん減るかと思います。
毎日開け閉めするものだからこそ、ほんの少しの「見やすさ」の差が、一年たつと大きな差になります。
まずはメジャーを一本持って、設置場所の幅と奥行き、そして玄関から冷蔵庫までの通り道を測ってみてください。
その数字を持って売り場に立てば、あなたに合う一台はぐっと見つけやすくなるはずです。







