新しい炊飯器を選ぼうとしてネットや店頭で調べていると、必ず出会うのが「IH炊飯器」と「マイコン炊飯器」という2つのタイプです。
値段を見ると数千円から数万円まで幅があって、機能説明を読んでも専門用語ばかりで、結局どちらを選べば良いのかわからなくなってしまいませんか?
IHとマイコンの根本的な違いは加熱方法にあります。マイコン炊飯器は釜の底にあるヒーターで下から加熱するのに対し、IH炊飯器は電磁誘導により釜全体を発熱させて炊き上げます。この加熱方法の違いが、炊き上がりの食感、価格、保温性能、電気代など様々な面に影響してくるのです。
でも実際のところ、価格が高いIH炊飯器を選べば必ず美味しくなるのでしょうか?
一人暮らしなら安いマイコン炊飯器で十分なのでしょうか?
内釜の素材によっても味は変わるのでしょうか?
そして気になる電気代の違いはどの程度なのでしょうか?
この記事では、両者のメリットとデメリット、炊き上がりの特徴、内釜素材の選び方、電気代の比較、そしてあなたのライフスタイルに最適な炊飯器の選び方まで、家電のプロとして培った知識を分かりやすくお伝えします。
きっと読み終わる頃には、自分にぴったりの炊飯器が見つかるはずです!
IH炊飯器とマイコン炊飯器の根本的な違い

- マイコン炊飯器のメリット・デメリット
- IH炊飯器のメリット・デメリット
- 加熱方法と炊き上がりの特徴
- 内釜の素材も重要なポイント
- 気になる電気代の違い
まずは、マイコン炊飯器とIH炊飯器が技術的に何が違うのか、基本的な特徴を整理していきましょう。
この違いが炊きあがりや価格、機能の差に直結してくるんです。
マイコン炊飯器のメリット・デメリット
マイコン炊飯器は、昔からあるタイプの炊飯器ですね。本体の底に搭載されたヒーターで、内釜を直接加熱するのが特徴です。
この仕組みはとてもシンプルなので、たくさんのメリットがあります。
マイコン炊飯器のメリット
私も家電量販店で働いていると、新生活を始める学生さんや単身赴任の方には、まずマイコン炊飯器をおすすめすることが多いですね。手軽に導入できるのが一番の強みだと思います。
ただ、もちろんデメリットというか、IHに比べて少し苦手な部分もあります。
マイコン炊飯器のデメリット
特に5.5合炊きで5合パンパンに炊くような場合は、マイコンの弱点である「炊きムラ」が顕著に出やすくなるので注意が必要ですね。
IH炊飯器のメリット・デメリット
次にご紹介するIH炊飯器は、ここ10年ほどで一気に主流になったタイプです。「IH」というのは電磁誘導加熱(Induction Heating)の略で、これはIHクッキングヒーターと同じ原理なんですよ。
内釜自体を電磁誘導によって発熱させるのが最大の特徴です。この仕組みのおかげで、マイコン炊飯器の弱点を克服するようなメリットがたくさん生まれました。
IH炊飯器のメリット
家族で食事の時間がバラバラだったり、冷めたご飯を食べることが多かったりするご家庭では、IHの「保温性能の高さ」はすごく重宝すると思います。
一方で、高性能な分、マイコン炊飯器と比べるといくつかのデメリットも存在します。
IH炊飯器のデメリット
高機能な炊飯器は、その分構造も複雑になりがちです。予算はもちろんですが、毎日のお手入れの手間も考えて選ぶのが大切だと思います。
加熱方法と炊き上がりの特徴
先ほどもお伝えしたように、マイコンとIHの最大の違いは「加熱方法」にあります。ここをもう少し詳しく見てみましょう。
マイコン炊飯器は、釜の底にあるヒーターが熱くなります。イメージとしては、ホットプレートの上にお鍋を置いているような状態ですね。底から熱が伝わって、釜の中の水が沸騰し、お米が炊きあがります。このため、熱源に近い底部分は火力が強く、熱が伝わりにくい上部は火力が弱くなりがちです。
一方、IH炊飯器は、炊飯器本体にあるコイルから磁力線を発生させ、内釜自体を「電磁誘導」で発熱させます。釜全体がまるごとヒーターになるようなイメージなんです。これにより、釜の底も、側面も、上部も、全体から一気に大火力で加熱することができます。
この加熱方法の違いが、炊きあがりにどう影響するのでしょうか?
| マイコン炊飯器 | IH炊飯器 | |
|---|---|---|
| 加熱方法 | 釜底のヒーターで加熱 (釜の下から温める) | 電磁誘導で釜全体が発熱 (釜全体で温める) |
| 火力 | 弱い(ムラが出やすい) | 強い(ムラが出にくい) |
| 炊きあがり | ・ふんわり、柔らかめ ・水分が多いとべちゃっとしやすい ・炊飯量が多いとムラが出やすい | ・粒立ちが良く、しゃっきり ・お米の旨味や甘みを引き出しやすい ・大量に炊いても均一に仕上がる |
マイコン炊飯器は、火力が穏やかなので、ふんわりと柔らかいご飯に炊きあがる傾向があります。
ただ炊く量が多いと、どうしても上下で炊きムラの差が出てしまいやすいんですね。底はおこげができているのに、上は少し芯が残っている…なんてことも起こりがちです。
IH炊飯器は、高火力で釜全体を加熱し、釜内のお米を激しく対流(おどらせる)させます。
これにより、一粒一粒がお米の芯までしっかり加熱され、旨味と甘みを閉じ込めたまま、粒立ちの良いしゃっきりとしたご飯に炊きあがります。
最近はマイコン炊飯器でも、内釜を分厚くしたり、フタにもヒーターを入れたりしてIHに近い炊きあがりを目指しているモデルもあります。
内釜の素材も重要なポイント

炊飯器の「加熱方法」と同じくらい、炊きあがりの味を左右するのが「内釜」です。特にIH炊飯器は、この内釜に各メーカーがものすごくこだわっています。
なぜなら、IHは釜自体が発熱するので、釜の素材や構造によって熱の伝わり方(熱伝導率)や、熱の保ち方(蓄熱性)が大きく変わってくるからなんです。
主な素材の特徴をちょっとご紹介しますね。
アルミ釜・ステンレス釜
比較的安価なモデルや、マイコン炊飯器に多いのがこのタイプです。アルミは熱伝導率が高く、熱がすぐに伝わるのが特徴ですが、反面、冷めやすいという特性もあります。ステンレスは丈夫でお手入れしやすいですが、熱伝導率はやや低めです。最近は、これらの素材を組み合わせた「多層釜」が主流ですね。
鉄釜
鉄は「発熱効率」と「蓄熱性」が非常に高い素材です。IHとの相性が抜群で、発生した熱を逃さず、釜全体で一気に高温にできるのが強み。岩手県の伝統工芸品である「南部鉄器」を採用した高級モデルもありますよ。粒立ちのしっかりした、かまどで炊いたようなご飯を目指せます。
銅釜
銅は、「熱伝導率」が鉄やアルミよりも格段に高いのが特徴です。熱が瞬時に釜全体に伝わるため、炊きムラを極限まで抑えることができます。熱しやすく冷めやすい特性はありますが、その分、きめ細やかな火力コントロールが可能です。
土鍋釜・炭釜
金属とは全く違うアプローチがこちらです。土鍋や炭は「蓄熱性」が非常に高く、一度温まると冷めにくいのが特徴です。また、「遠赤外線効果」により、お米の芯までじっくりと熱を浸透させ、甘みや旨味を最大限に引き出すと言われています。ふっくら、もっちりとした炊きあがりが好みの方に人気ですね。
コーティングも要チェック!
内釜の外側に「土鍋コーティング」や「炭コーティング」を施して、それぞれの素材の特性(蓄熱性や遠赤外線効果)をプラスしているモデルも多いです。
また、内側は「フッ素コーティング」が基本ですが、より傷に強い「ダイヤモンドコーティング」などもあり、お手入れのしやすさや耐久性にも影響します。
内釜は、お米の味にこだわりだすと本当に奥が深い世界です。ご予算が許せば、ぜひ内釜の素材にも注目してみてください。
気になる電気代の違い
「IH炊飯器って、火力が強い分、電気代も高いんじゃない?」と心配されるお客様もいらっしゃいます。
これは半分正解で、半分はそうとも言えないんです。
まず、1回の炊飯にかかる電気代を見てみましょう。
確かに、IH炊飯器はマイコン炊飯器よりも大きな電力(ワット数)を使って一気に炊き上げます。でも、その分、炊飯時間が短いことが多いんですね。
結果として、1回あたりの電気代は、マイコン炊飯器とIH炊飯器で大きな差は出ない、というのが実情です。だいたい1回あたり5円~10円程度(炊飯量やモードによります)と言われています。
むしろ、差が出やすいのは「保温」にかかる電気代なんです。
マイコン炊飯器は、保温中も底のヒーターを定期的にオン・オフして温度を保つため、電力を消費し続けますし、熱も逃げやすい傾向があります。
一方IH炊飯器、特に上位モデルは、釜自体の蓄熱性が高かったり、フタや側面も含めて細かく温度を管理したり、真空技術で釜の熱を逃がしにくくするなど、保温時の消費電力を抑える工夫がされているものが多いんです。
1回の炊飯代はあまり変わらないけれど、保温機能はIH炊飯器の方が省エネで、しかも美味しく保てる傾向がある、と覚えておくと良いと思います。
とはいえ、一番の節約は「長時間保温しないこと」です。
炊飯後、すぐに食べない分はラップに包んで冷凍保存するのが、電気代の面でもご飯の美味しさの面でも一番おすすめですよ。
IH炊飯器とマイコン炊飯器の違いと選び方

- マイコン炊飯器はまずい?
- 一人暮らしならマイコン炊飯器で充分?
- 圧力は不要でIHで十分という人
- どちらでも味は変わらない?
- 保温機能の違いもチェックしよう
- 便利な炊飯メニューや調理機能
基本的な違いがわかったところで、次は「じゃあ、自分にはどっちが合っているの?」という選び方のポイントを見ていきましょう。
お客様からよく聞かれるご質問にもお答えしていきますね。
マイコン炊飯器はまずい?
「マイコン炊飯器って、安いけど美味しくないんでしょ?」とストレートに聞かれることもありますが、私は「そんなことはないですよ!」とお答えしています。
確かに先ほどご説明したように、IH炊飯器に比べると火力が弱く、炊きムラが出やすいという弱点はあります。特に5.5合炊きで目一杯の5合を炊いたりすると、底の方と上の方で炊きあがりに差が出て、「あれ?」と思うことはあるかもしれません。
でも、マイコン炊飯器が得意な「少量炊き」、例えば3合炊きのモデルで1合や2合を炊く場合、IH炊飯器と比べても遜色ないくらい美味しく炊けるモデルもたくさんあるんです。
実際、お客様からも「一人暮らしで毎回1合しか炊かないから、マイコンで全然満足してるよ」というお声はよく聞きますね。
もし、マイコン炊飯器で「ちょっと美味しくないな」と感じた時は、以下のようなことを試してみてください。
マイコン炊飯器は「まずい」のではなく、「特性を理解して、得意な使い方をしてあげる」ことが大事なんだと思います。
一人暮らしならマイコン炊飯器で充分?
これは先ほどの話にもつながりますが、「充分な場合が多い」というのが私の答えです。
一人暮らしの方のライフスタイルを考えると、マイコン炊飯器のメリットがすごく大きいんですよね。
これらの理由から、「とりあえずご飯が炊ければOK」「コストを最優先したい」という方であれば、マイコン炊飯器で充分に満足できるケースがほとんどだと思います。
ただ、もちろん例外もあります。
「一人暮らしだけど、お米の味には絶対にこだわりたい!」という方や、「平日は忙しいから、週末に5合炊いて冷凍保存している」という方。
こういう方の場合は、少量でも美味しく炊ける上位モデルのIH炊飯器や、まとめ炊きが得意な5.5合炊きのIH炊飯器を選んだ方が、満足度は高くなると思います。
圧力は不要でIHで十分という人
IH炊飯器を見ていると、今度は「圧力IH」という言葉が出てきて、また悩ましくなりますよね(笑)
「圧力IH」というのは、IHの加熱に加えて、炊飯中に釜の中に圧力をかける機能がついたものです。圧力をかけることで水の沸点が100℃以上に上がり(約105℃~110℃など)、高温でお米のデンプンをα化させ、甘みや粘りを強く引き出すことができます。もちもちとした食感が好きな方には、圧力IHはすごく人気があります。
では、「圧力IH」ではなく、通常の「IH」で十分なのはどんな人でしょうか?
お店でお話を聞いていると、「もっちりしすぎるより、一粒一粒がしゃっきりしたご飯が好き」という方は意外と多いんです。こういう方は、あえて圧力なしのIH炊飯器を選ばれますね。
また、圧力IH炊飯器は圧力機能がつく分、どうしても価格が上がりますし、圧力をかけるためのパッキンなど内ぶたの部品が複雑になりがちです。
ですから、
- しゃっきり、粒立ちの良いご飯が好みの方
- 予算を少しでも抑えたい方
- お手入れはシンプルな方が良い方
こういった方々は、圧力機能がついていない、シンプルなIH炊飯器で十分満足されているケースが多いですよ。
圧力なしでも、IHの高火力があればマイコン炊飯器よりもしっかり美味しく炊きあげてくれますからね。
どちらでも味は変わらない?

「マイコンでもIHでも、結局は炊くお米が同じなら味は変わらないんじゃない?」というご質問も、たまにいただきます。
これは…そうですね、「炊飯器とお米の組み合わせ、炊く量によって変わってきます」とお答えするのが一番正確かもしれません。
例えば、先ほどからお伝えしているように、3合炊きの高性能マイコン炊飯器(厚釜など)で1合を炊くのと、5.5合炊きの安価なIH炊飯器で1合を炊くのでは、もしかしたらマイコン炊飯器の方が美味しく炊ける可能性も十分あります。
IH炊飯器も、5.5合炊きモデルは3合~4合炊くのが一番得意だったりして、少なすぎる量を炊くのは苦手な場合があるんです。
また、「味」の感じ方も人それぞれですよね。
「ふんわり柔らかいご飯」を美味しいと感じる方にとっては、マイコン炊飯器の炊きあがりの方が好み、ということもあり得ます。
単純に「IHだから絶対美味しい」「マイコンだから美味しくない」と値段だけで決まるものではない、というのがポイントです。
ただ、「どんなお米でも」「どんな量でも(1合~5合など)」「安定して」「粒立ち良く」炊きあげる能力、という平均点で比べると、やはりIH炊飯器の方が優れている、とは言えると思います。
ご自身の「美味しい」と感じる食感や、普段炊くお米の量を考えて選ぶのが、一番失敗しないコツですね。
保温機能の違いもチェックしよう
炊飯器選びで、意外と見落としがちなのが「保温機能」です。ここは生活スタイルによってはすごく重要なポイントになるんですよ。
マイコン炊飯器の保温は、基本的に炊飯に使った底のヒーターで温め続けるシンプルな方式が多いです。そのため熱源に近い底のご飯は水分が飛んで硬くなったり、黄ばんできたりしやすいんですね。保温時間も、美味しく食べられる目安は「12時間程度まで」とされているモデルがほとんどです。
一方、IH炊飯器は、保温機能にもこだわったモデルが多いのが特徴です。
こういった高度な機能のおかげで、「24時間」や、中には「40時間」も美味しく保温できる、とうたっているモデルもあります。
「朝炊いたご飯を、夜遅く帰ってくる家族にも美味しく食べさせたい」
「家族で食事の時間がバラバラだから、保温機能は絶対に妥協できないんです」
こういったお客様は、迷わずIH炊飯器を選ばれますね。
保温性能を重視するなら、IH炊飯器、特に各メーカーの上位モデルは本当に優秀だと思います。
ただ先ほどもお伝えしましたが、一番美味しいのは炊きたてです。保温は便利ですが、頼りすぎず、食べきれない分は早めに冷凍保存する習慣をつけるのがおすすめですよ。
便利な炊飯メニューや調理機能
最後は、炊飯以外の便利機能の違いです。
ここもIH炊飯器のほうが多機能な傾向がありますね。
一番大きな違いは「炊き分け機能」です。
IH炊飯器の上位モデルになると、お米の銘柄(コシヒカリ、あきたこまち等)を選ぶだけで、そのお米の特性に合わせた火加減で炊き上げてくれる機能や、「しゃっきり」「ふつう」「もちもち」「おこげ」など、好みの食感を細かく設定できる機能が充実しています。
マイコン炊飯器は、こうした細かい炊き分けは苦手で、「白米」「玄米」「おかゆ」「早炊き」といった基本的な炊飯モードが中心になります。
また、「調理機能」(煮込み料理、ケーキ、パン焼きなど)はどうでしょうか?
これは、実はマイコン炊飯器にも搭載されているモデルが結構あります。シンプルなヒーター構造が、逆に煮込み料理などに使いやすいんですね。
ただ、IH炊飯器の方が温度コントロールが細かくできるので、パンの発酵から焼き上げまでできたり、本格的なローストビーフが作れたりと、より高度な調理ができるモデルもあります。
「お米の味をとことん追求したい」なら、炊き分け機能が豊富なIH炊飯器がおすすめです。
「炊飯以外にも色々使ってみたい」という場合は、マイコン・IH問わず「調理機能」がついているかをチェックしてみてください。意外と安価なマイコン炊飯器が、調理鍋として優秀だったりもしますよ。
ご自身のライフスタイルをイメージして、どんな機能が必要か、ぜひ楽しみながら選んでみてくださいね。
総括:炊飯器のIHとマイコンの違い
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。




