ふとエアコンの吹き出し口を覗き込んだとき、奥の方で回っている筒状の部品に、黒い点々がついているのを見てギョッとしたことはありませんか?
「うわっ、これ全部カビ!?」なんて背筋が凍るような瞬間、ありますよね。
実はそれ、エアコンの風を作り出す心臓部とも言える「シロッコファン」なんです。この回るところが汚れていると、部屋中にカビの胞子を撒き散らしているのと同じことになってしまいます。
「自分で掃除できるのかな?」
「業者に頼むと高いし…」
と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
私もお店でお客様とお話ししていると、「フィルターは掃除したけど、奥の回るところはどうすればいいの?」という相談を本当によく受けます。
実は、完全にピカピカにするのは少しコツが入りますが、便利グッズを使えば自分でもある程度は綺麗にできるんですよ。
この記事では、家電量販店で働く私の視点から、シロッコファンの汚れの原因や、自分でできる掃除方法、そしてプロに頼むべきライン引きまで、包み隠さずお話ししちゃいます。
これを読めば、あの不快な黒い汚れとの戦い方に決着がつくはずです。一緒に綺麗な空気を取り戻しましょう!
- シロッコファンの黒い汚れの正体と原因
- 分解なしでできる手軽な掃除テクニック
- 100均グッズを活用したコスパの良い洗浄法
- 自力掃除のリスクとプロに依頼する判断基準
エアコンのシロッコファン(回るところ)|掃除の基本

まずは、敵を知ることから始めましょう。あの奥で回っている筒状の部品、シロッコファンを掃除しようと思い立ったとき、いきなり洗剤を吹きかけるのはちょっと待ってください。
ここでは、なぜあそこが汚れるのか、どれくらいの頻度で手入れが必要なのか、そして何より「やってはいけないこと」といった基本的な知識をしっかり押さえておきましょう。
ここを理解していないと、最悪の場合エアコンが壊れてしまうこともあるので要注意ですよ。
回るところが黒いのはカビ汚れ
吹き出し口から見えるシロッコファン、つまりエアコンの回るところが黒い状態になっているのを見つけると、本当にショックを受けますよね。
「フィルターはこまめに掃除していたのに、なんで?」と思われるお客様も多いんですが、実はこれ、ほとんどがカビとホコリが混ざり合った汚れなんです。
冷房を使っているとき、エアコンの内部は結露して湿気がたまります。シロッコファンは風を送るために高速で回転していますが、運転を停止した後、内部に残った水分と、吸い込まれた微細なホコリがファンに付着し、それを栄養分としてカビが爆発的に繁殖してしまうんです。
特にリビングやキッチンに近いエアコンは、料理の油煙も吸い込んでいるので、油汚れが接着剤のようになってホコリを固め、そこにカビが生えるという悪循環が起きやすいんですよね。
この黒い汚れを放置したままエアコンを使うと、カビの胞子を含んだ風を部屋中に浴びることになります。アレルギーの原因になったり、独特の酸っぱいニオイがしたりするのは、まさにこれが原因。
お店でも「エアコンが臭いんです」という相談の8割くらいは、このシロッコファンの汚れが犯人だったりするんですよ。
シロッコファンの掃除頻度
じゃあ、どれくらいのペースで掃除すればいいの?
と気になりますよね。
私がお店でご案内するときは、目安として「本格的な掃除は1〜2年に1回」とお伝えしています。
ただし、これは使用状況によって大きく変わります。
例えば、夏場に24時間つけっぱなしにしているご家庭や、ペットがいて一年中稼働している場合などは、汚れがたまるスピードも早いので、1年に1回はチェックしてあげたいですね。
逆に、寝室や客間など、あまり使わない部屋のエアコンなら、2〜3年に1回でも大丈夫なこともあります。
エアコン内部クリーニングの頻度を、部屋の環境ごとにもっと詳しく知りたい方は、エアコンクリーニングを業者依頼する頻度の目安を解説した記事も参考にしてみてください。
「えっ、もっと頻繁にやらなきゃいけないと思ってた!」という方もいるかもしれませんが、シロッコファンの掃除は結構手間がかかるので、あまり神経質になりすぎると疲れちゃいますからね。
ただ、掃除の頻度を下げるための裏ワザとして、「冷房を使った後は必ず送風運転をして内部を乾燥させる」のがすごく効果的です。最近のエアコンには「内部クリーン」機能がついているものも多いですが、あれも結局は乾燥させてカビを防ぐ機能ですからね。
日頃の乾燥ケアをしっかりしていれば、あの大変な掃除の頻度を少し減らせるかもしれませんよ。
自分で掃除する際の注意点
「よし、自分でやってみよう!」と思い立った行動力は素晴らしいですが、ここでちょっとストップ。シロッコファンの掃除は、フィルター掃除とはレベルが違う難易度とリスクがあるんです。
一番怖いのは、洗剤や水が電装部品(基盤など)にかかってしまい、エアコンが故障したり、最悪の場合は発火したりする事故です。私のお店でも、「自分で掃除しようとしてスプレーをかけたら動かなくなった」というお問い合わせ、悲しいことに毎年のようにいただきます。
実際に、誤った内部洗浄が原因で火災に至った事故事例は公的機関でも報告されており、(出典:製品評価技術基盤機構(NITE)「エアコンの内部洗浄による事故に注意」)こちらのレポートでも、洗浄液が電気部品にかかって発火したケースが紹介されています。
それに、シロッコファンの羽はプラスチックでできているものが多いですが、経年劣化で脆くなっていることがあり、ブラシで強くこすりすぎて羽を折ってしまった…なんて失敗談も。
羽が一部でも欠けると、回転のバランスが崩れて「ガタガタ!」という異音の原因になってしまいます。また、養生(ビニールなどで周りを覆うこと)が甘いと、汚れた水が壁紙や床に垂れて、部屋中が大惨事になることも。
「絶対に無理はしない」「電装部分には触れない」「養生は完璧にする」。
この3つは、自分でお手入れをする際の鉄則として心に刻んでおいてくださいね。
分解せずに掃除するには

分解作業なんて怖くてできない…という方が大半だと思いますし、私も個人的には無理に分解することはお勧めしません。そこで活躍するのが、分解せずに隙間から掃除できる専用グッズたちです。
私のおすすめは、ショーワの「くうきれい」のような、ムース状の洗剤で汚れを浮かして落とすタイプのクリーナーですね。これの良いところは、泡が汚れに密着してくれる点です。
また、コジットの「汚れごっそりすき間職人」のような、ファンのカーブにフィットする形状のブラシも、物理的に汚れをこそぎ落とすのには最強です。お店には置いていないことも多いですが、ホームセンターやネット通販なら手に入りやすいですよ。
おすすめ便利グッズ
- ショーワ「くうきれい」:泡で汚れを落とす定番キット。養生シート付きなのが嬉しい。
- コジット「隙間汚れごっそり職人」:絶妙なカーブでファンの裏側まで届くブラシ。
こういった専用グッズを使う最大のメリットは、分解というハイリスクな作業を飛ばして、一番汚れている部分に直接アプローチできることです。
もちろん、完全に新品同様とはいきませんが、目に見える黒カビをごっそり落とすだけでも、気分はずいぶんスッキリしますよ。
洗浄スプレーは使っていい?
「市販のエアコン洗浄スプレーでシューっとやれば、一発でキレイになるんじゃない?」
ドラッグストアでスプレー缶を見ると、そう思っちゃいますよね。その気持ち、痛いほど分かります。
でも、家電量販店の店員として、ここでは心を鬼にして言わせてください。
「市販の洗浄スプレーをシロッコファンに使うのは、基本的に絶対おすすめしません!」
まず、スプレー缶程度の水圧では、複雑に入り組んだシロッコファンの汚れを吹き飛ばすことはできません。それどころか、表面の汚れを奥の方へ押し込んで詰まらせてしまう「パッキング現象」を引き起こすことが多いんです。
さらに怖いのが、「洗剤の洗い残し」です。
多くのスプレー製品は「洗い流し不要」と書いてありますが、泡状の洗剤成分が内部に残ると、それが新たなカビの栄養源になってしまい、数週間後には掃除前よりもカビだらけ…なんていう「リバウンド現象」が起きかねません。
エアコン掃除でシロッコファン(回るところ)を綺麗にする

さて、ここからはもう少し踏み込んで、具体的な掃除の実践編です。
スプレーや養生が大掛かりでハードルが高いと感じる方には、もっと手軽な方法もあります。
100均アイテムの活用法から、最終手段である業者の利用まで、私が知っている知識をフル動員してお伝えしますね。
簡単にできる拭き掃除の手順
「スプレーとか養生とか、正直面倒くさい!」という方には、もっと原始的ですが確実な「拭き掃除」がおすすめです。
これは私が自宅で「今日はちょっとだけ掃除しようかな」という時にやる方法なんですが、用意するのは「割り箸」と「キッチンペーパー(またはお掃除シート)」、そして「輪ゴム」だけ。
割り箸にキッチンペーパーを巻き付けて輪ゴムで止めた「特製お掃除棒(マツイ棒的なやつですね)」を作ります。
ここに、中性洗剤(ウタマロクリーナーなどがおすすめ)を少し染み込ませて、シロッコファンの羽を一枚一枚、丁寧に拭いていくんです。
拭き掃除のコツ
ファンの羽を少しずつ回しながら、地道に拭き取っていきます。無理に奥まで突っ込まず、届く範囲を綺麗にするだけでも効果はあります。
この方法の良いところは、水を使わないので養生が最低限(床に新聞紙を敷く程度)で済むことと、電装部を濡らすリスクがほぼゼロなこと。
ただし、ファンの羽は何百枚もあるので、途中で「これ、いつ終わるの…?」と心が折れそうになるのがデメリットかも。
ウェットティッシュタイプの「カビトルデス」などを棒に巻き付けて使うのも、除菌効果が期待できておすすめですよ。
使いやすいシロッコファン掃除ブラシ
シロッコファンの掃除を劇的に楽にするには、ブラシ選びが本当に重要です。
お店でお客様から「歯ブラシでやってもいい?」と聞かれることがありますが、正直なところ、歯ブラシだと柄が短すぎて奥まで届かないし、ブラシが硬すぎてプラスチックの羽を傷つける可能性があるので、あまりおすすめできません。
理想的なブラシの特徴は、まず「適度にしなること」です。
シロッコファンは円筒形をしているので、真っ直ぐな棒だとカーブに沿わず、汚れを逃してしまいます。 ワイヤー入りで自由な角度に曲げられるブラシだと、ファンの裏側の見えない汚れにもアプローチしやすいですね。
次に大切なのが「ブラシの毛足の長さ」です。
短すぎると羽の隙間の奥に届きませんし、長すぎると絡まって抜けなくなります。市販されている「ファン専用ブラシ」は、このあたりが計算されているのでやっぱり使いやすいんです。
あと、地味に大事なのが「柄の長さ」。
エアコンの設置場所が高い場合、柄が短いと脚立の上で無理な体勢になりがちですが、長い柄なら安定した姿勢で掃除ができるので、安全性という意味でも長いものがおすすめです。
掃除ブラシは100均でも代用可能
専用ブラシが良いのはわかるけど、わざわざ買うのもなぁ…という方、朗報です。
実はダイソーやセリアなどの100均にも、代用できる優秀なアイテムがたくさんあるんです。
私の一押しは、本来は水筒や急須の注ぎ口を洗うための「注ぎ口洗いブラシ」や「隙間用ブラシ」のコーナーにある商品。
特に、何本かセットになっている細いブラシや、先が曲がっているタイプのブラシは、シロッコファンの狭い隙間にシンデレラフィットすることがあります。
また、ダイソーの「カビとりスティック」のような、スポンジタイプの棒も使いやすいですね。
100均アイテム活用の注意点
100均のブラシは芯が金属でできているものが多く、先端の保護キャップが外れると、エアコンの内部を傷つける恐れがあります。使用前に必ず先端が保護されているかチェックしてくださいね。
使い捨て感覚でガシガシ使えるのも100均の魅力。「汚れたら捨てる!」と割り切って、何種類かサイズ違いを買っておくのも賢い方法かなと思います。
コストを抑えて綺麗にしたい方は、ぜひキッチングッズ売り場やお掃除コーナーをパトロールしてみてください。
本格的に洗うためのシロッコファンの外し方
ここからは上級者向けのお話ですが、「どうしても裏側まで完璧に洗いたい!」という場合、シロッコファン自体を取り外す(分解する)という方法もあります。
ただし、これはリスクが非常に高いので、自信がない方は絶対に真似しないでください。あくまで知識としてお伝えしますね。
一般的な壁掛けエアコンの場合、前面パネル、ルーバー、本体カバーを全て外し、さらに熱交換器(アルミフィン)を持ち上げながらファンを引き抜く…という、パズルのような工程が必要です。
特に難しいのが、ファンの右側にある固定ネジを緩める作業。 機種によっては、このネジの隙間が非常に狭く、特殊なドライバーがないと回せないことがあります。
また、左側の軸受け部分が固着していて、どんなに引っ張っても抜けない!というトラブルも「分解あるある」です。
無理に引き抜こうとして、熱交換器の配管を曲げてガス漏れさせたり、プラスチックの爪を割ってカバーが閉まらなくなったりしたら、修理代でエアコンがもう一台買えるくらいの金額になってしまうことも…。
自分でどこまで分解して良いのか迷う場合は、エアコンクリーニングに完全分解が必要かどうかを詳しく解説した記事も参考にしてみてください。
YouTubeなどでは簡単そうにやっている動画もありますが、あれは慣れている人がやっているから簡単に見えるだけ。もしチャレンジする場合は、元に戻せなくなる覚悟と、壊れたら買い換えるくらいの気持ちで臨む必要があります。
掃除業者に頼むのもひとつの手

ここまで読んで、「うわ、やっぱり自分でやるの面倒くさそう…」「壊すのが怖い」と思われた方も多いはず。
正直に言いますね。
私も自宅のエアコン掃除は、3回に1回はプロの業者さんに頼んでいます(笑)
やっぱり餅は餅屋、プロの技術と機材は違います。
業者のクリーニングには大きく分けて2種類あって、壁にかけたまま高圧洗浄機で洗う「壁掛けクリーニング」と、エアコンを一度取り外して工場で丸洗いする「完全分解洗浄」があります。
シロッコファンの汚れが気になるなら、通常の壁掛けクリーニングでも十分効果はあります。
高圧洗浄機の水圧で、ファンの奥のカビを一気に吹き飛ばしてくれるので、自分では絶対に届かない部分までピカピカになりますよ。
業者選びのポイント
安すぎる業者は、分解を最小限にして表面しか洗わないケースも。「シロッコファンまでしっかり高圧洗浄しますか?」と事前に確認すると安心です。
具体的な料金相場や、大手と個人業者の違いなどをもっと詳しく知りたい方は、エアコンクリーニングの業者選びで失敗しないための解説記事もチェックしてみてください。
費用は1万円〜1万5千円程度かかりますが、掃除用具を揃える手間や、失敗して故障させるリスク、そして何よりあの大変な作業時間を考えれば、決して高くはない投資かなと思います。
「自分へのご褒美」として、数年に一度はプロにお任せして、綺麗な空気で深呼吸するのもおすすめですよ。
エアコンのシロッコファン(回るところ)掃除の総括
ここまで、エアコンの回るところであるシロッコファンの掃除について、色々な角度からお話ししてきました。黒いカビ汚れは見た目も悪いし健康にも良くないので、見て見ぬふりはできませんよね。
最後に、今回ご紹介した掃除方法の選び方をまとめてみましたので、ご自身の状況に合わせて選んでみてください。
| 方法 | 難易度 | コスト | おすすめな人 |
|---|---|---|---|
| 拭き掃除 | ★☆☆ | ほぼ0円 | とりあえず表面の汚れを取りたい人 コストをかけたくない人 |
| 専用スプレー | ★★☆ | 2~3千円 | 分解なしでしっかり洗いたい人 養生作業が苦にならない人 |
| 業者依頼 | ☆☆☆ | 1万円〜 | 完璧に綺麗にしたい人 故障のリスクを避けたい人 |
この記事が、あなたのエアコン掃除に少しでもお役に立てたら嬉しいです。



