新しい炊飯器を探しているとき、どこのメーカーがいいのか、故障が多いメーカーはないのか気になりますよね。
実際に家電売り場で働いていると、「買ってはいけない炊飯器ってありますか?」「圧力IHは壊れやすいって聞いたんですが本当ですか?」といったご質問をよくいただきます。
確かに、毎日使う炊飯器だからこそ、壊れにくいものを選びたいと思うのは当然のことです。
でも実は、炊飯器が「壊れやすい」と感じる理由は、メーカーそのものよりも選び方や使い方に原因があることが多いんです。
おいしく炊けることはもちろん大切ですが、長く使い続けられる炊飯器を見つけるには、各メーカーの特徴をきちんと理解し、ご自身のライフスタイルに合ったものを選ぶことが重要になってきます。
また、内釜が長持ちするメーカーの見分け方や、電池交換ができない理由、入れてはいけないもの、途中で止まる対処法など、実際に使い始めてから「知っておけばよかった」と思う情報もたくさんあります。
この記事では、家電売り場でお客様から寄せられる疑問をもとに、炊飯器選びで失敗しないための具体的なポイントをわかりやすくお伝えします。
壊れやすい炊飯器メーカーの特徴とは?

- 故障が多いメーカーの傾向
- 買ってはいけない炊飯器の共通点
- 圧力IHは壊れやすいって本当?
- 内釜が長持ちするメーカーの選び方
- 壊れにくい炊飯器の見分け方
まずは「壊れやすい」と言われがちな炊飯器に共通する特徴から見ていきましょう。
特定のメーカーを名指しするより、こうした「傾向」を知っておくことが失敗しない炊飯器選びの第一歩になりますよ。
故障が多いメーカーの傾向
炊飯器が「壊れやすい」と感じる時、いくつかの共通した傾向があるんです。
もちろん、どんなメーカーでも初期不良や個体差はありますが、購入後に「しまった!」とならないために、知っておきたいポイントをご紹介します。
主な傾向としては、以下の3つが挙げられます。
家電がメインではないメーカー
最近は、家具やインテリアブランド、デザイン雑貨のメーカーが家電を手掛けることも増えました。デザインがとてもおしゃれで、キッチンに置きたくなる気持ち、すごく分かります。
ただ、家電を専門に扱っていないメーカーの場合、耐久性や長期使用を前提とした設計ノウハウが、老舗の家電メーカーに比べて不足している場合があります。
また、万が一故障した時のアフターサービスやサポート体制が、家電専業メーカーほど整っていないケースも見受けられるため、少し注意が必要かもしれません。
ジェネリック家電メーカー
「ジェネリック家電」と呼ばれる、大手メーカーの型落ちの技術などを活用して、機能をシンプルにし、価格を抑えた製品も人気があります。アイリスオーヤマさんや山善さんなどが代表的ですね。
ひと昔前は「安かろう悪かろう」というイメージもあったかもしれませんが、現在の品質は本当に向上しています。私のお店でも人気ですよ。
しかし、やはり大手メーカーが長年培ってきた技術力や品質管理と比べると、どうしても初期不良にあたる確率は少し高くなる傾向がある、というのが正直なところです…。
価格と品質のバランスをどこに置くか、ですね。
海外メーカー
冷蔵庫や洗濯機でよく見かける海外メーカーも、炊飯器を出していることがあります。魅力は何といってもその価格です。
安さももちろん大切なんですけど、炊飯器って毎日使うものじゃないですか。
だからこそ、万が一の時のサポート体制がしっかりしている国内メーカーを選ぶのは、安心を買うという意味でも大きなポイントだと思いますよ。
買ってはいけない炊飯器の共通点
「壊れやすい」とは少し違いますが、「買って後悔した…」というご相談につながりやすい炊飯器の共通点もあります。
これは製品の耐久性というより、ご家庭のライフスタイルに合っていないケースがほとんどなんです。
容量が合っていない(特に少なすぎる)
「二人暮らしだから3合炊きで十分」と思って購入しても、来客時や、週末にまとめて炊いて冷凍したい時に「足りない!」となることがあります。
炊飯器は、容量の5〜7割程度で炊くのが一番おいしく炊けると言われています。容量いっぱいで毎回炊飯すると、炊きムラが出やすくなるだけでなく、本体の寿命を早める原因にもなりかねません。
設置場所のサイズや環境を考えていない
これは本当に盲点になりやすいです!
特に「蒸気レス」や「蒸気カット」機能がない炊飯器を、食器棚のスライドテーブルなどに置く場合は注意が必要です。炊飯中に出る高温の蒸気が棚の天板に当たり続けると、湿気で棚がふやけたり、カビの原因になったりするんです。
購入前には、フタを開けた時の高さも含めて、設置場所に十分なスペース(特に上部)があるかを確認してくださいね。
お手入れが面倒なもの
美味しくご飯を食べるためには、毎回のお手入れが欠かせません。ですが、このお手入れが面倒だと、だんだん使うのが億劫になってしまいます…。
最近のモデルはシンプルになっていますが、内蓋のパーツが細かく分解できすぎたり、溝が多くて洗いにくかったりするモデルもあります。店頭で「お手入れは簡単ですか?」と聞いて、実際にパーツを外させてもらうのが一番ですよ。
型番が古い・中古品
フリマアプリなどで中古品を探す方もいますが、炊飯器はあまりおすすめできません。
新品でも、製造から何年も経っている「型落ち」品は、上記の部品保有期間が短くなっている可能性があるので、安くなっていても注意が必要です。
圧力IHは壊れやすいって本当?
「圧力IH炊飯器は、マイコンやIHに比べて壊れやすいですか?」というご質問もよくいただきます。
実際のところ、本体が特別壊れやすいわけではありません。ただ、圧力IH特有の「劣化しやすい部品」があるんです。
それが、フタの内側にある「パッキン」です。
圧力IHは、炊飯時に釜内部に高い圧力をかけることで、お米の芯まで熱と水分を浸透させ、もちもちに炊き上げます。そのため、圧力を密閉するパッキンには、他の方式よりも大きな負荷がかかるんですね。
このパッキンが劣化してくると、以下のような症状が出始めます。
「圧力IHが壊れた!」と感じる原因の多くは、このパッキンの寿命なんです。
パッキンの寿命は、使用頻度にもよりますが約1~3年が目安とされています。これはメーカーから取り寄せて自分で交換できる(またはメーカー修理で交換)部品です。
パッキンの劣化だけで本体ごと買い替える必要はありませんので、安心してくださいね。
内釜が長持ちするメーカーの選び方

炊飯器の心臓部とも言える「内釜」。
この寿命が炊飯器の寿命と言っても過言ではありません。
内釜の寿命は、主に内側の「コーティング」の寿命です。
コーティングが剥がれてしまうと、熱の伝わり方が悪くなって炊きムラができたり、ご飯がこびりつきやすくなったりします。
内釜を長持ちさせるメーカー(製品)を選ぶには、以下の2点をチェックするのがおすすめです。
内釜の「保証期間」をチェック
メーカー保証は通常1年間ですが、内釜のコーティング剥がれに対して「3年保証」や「5年保証」といった長期保証を付けているメーカーがあります。
例えばタイガーは「内なべ5年保証」、日立も「内釜6年保証」をうたっているモデルがあります。
こうした長期保証は、メーカーが「それだけ内釜の耐久性に自信がありますよ」という証拠とも言えますよね。
コーティングの工夫をチェック
各社、コーティングが剥がれにくいように様々な工夫をしています。
どのメーカーも耐久性には力を入れていますが、こうした「ウリ」の部分を確認するのも良いと思います。
しかしどんなに良いコーティングも、使い方を間違えればすぐにダメになってしまいます。内釜が剥がれる最大の原因は「内釜の中で直接お米を研ぐ」ことです。
お米の粒が研磨剤のようになって、細かい傷が無数についてしまいます。必ず別のボウルでお米を研いでから、内釜に移すようにしてください。これだけで、内釜の寿命は格段に延びますよ!
壊れにくい炊飯器の見分け方
では、結局のところ、どんな炊飯器が「壊れにくい」と言えるんでしょうか?
私の経験上、最も堅実な選択は「国内の大手メーカー製で、機能がシンプルなモデル」を選ぶことです。
大手メーカー(象印、タイガー、パナソニック、日立、東芝、三菱電機)の製品は、やはり長年の実績があり、品質管理がしっかりしています。極端に安いモデルでなければ、耐久性に大きな差はないと感じています。
面白いことに、機能がてんこ盛りの最高級モデルよりも、必要な機能(IHや圧力IH)だけを搭載した「中級モデル」の方が、構造がシンプルな分、故障するリスクポイントが少ないとも言えます。
また、一番安価な「マイコン式」は、炊き上がりの味はIHに劣りますが、機能が非常にシンプルなため、構造的に最も壊れにくい炊飯器とも言えますね。
「多機能で高いモデルが壊れた」という話は時々聞きますが、「シンプルなIH炊飯器が壊れた」というご相談は少ない印象です。長く使うなら、大手メーカーのスタンダードなIHモデルが一番安心かもしれませんね。
炊飯器が壊れやすいメーカーと対策

- 主要な各メーカーの特徴
- おいしく炊けるおすすめモデル
- 炊飯器に入れてはいけないものリスト
- 途中で止まる時の対処法
- 電池交換できない理由と寿命
- 耐久性が高いおすすめ炊飯器5選
後半はもう少し具体的に、主要メーカーが耐久性のためにどんな工夫をしているのか、そして炊飯器を壊さないために私たちが気をつけるべき「対策」について、詳しくご紹介していきますね。
主要な各メーカーの特徴
大手メーカーは「壊れやすい」というより、それぞれ「壊れにくくする工夫」と「おいしさ」へのアプローチが違います。
ここでは、各社の特徴をざっくりと比較してみましょう。
(※炊き方や内釜の名称は、モデルや年度によって変わります)
| メーカー | 代表的な炊き方 | 内釜・耐久性の工夫 |
|---|---|---|
| 象印 | 炎舞炊き | 「鉄(くろがね仕込み)豪炎かまど釜」など。鉄素材の高い発熱効率と蓄熱性を追求。プラチナコートも特徴的。 |
| タイガー | ご泡火(ほうび)炊き | 「本土鍋」を採用したモデルが有名。「内なべ5年保証」など、内釜の耐久性に自信を持っているモデルが多いです。 |
| パナソニック | おどり炊き | 「ダイヤモンド竈釜」が特徴。硬度の高いダイヤモンド粒子コーティングで、耐久性と高い熱伝導性を両立しています。 |
| 日立 | ふっくら御膳(圧力スチーム) | 「大火力 沸騰鉄釜」など、鉄を採用した内釜が特徴。日立も「内釜6年保証」など、長期保証に強みがあります。 |
| 東芝 | 真空圧力IH | 「鍛造かまど銅釜」など熱伝導性の高い銅を使用。真空技術で保温中のご飯の劣化を防ぐ機能も得意です。 |
| 三菱電機 | 本炭釜 | 「炭」を削り出して作った内釜が有名。非常に高価で熱伝導は抜群ですが、割れやすいデリケートな側面も。 |
| アイリスオーヤマ | 銘柄炊き | 圧倒的なコストパフォーマンス。品質は向上中ですが、耐久性やコーティング技術はまだ発展途上な面もあります。 |
こう見ると、各社アプローチが違って面白いですよね。
個人的には、内釜の保証が長いタイガーや日立は、耐久性という面で安心感が大きいなと思います。
おいしく炊けるおすすめモデル
「壊れにくさ」と「おいしさ」は、ぜひ両立させたいですよね。
店頭での人気やお客様からのお声も踏まえて、いくつかピックアップしてみますね。
高品質・高耐久重視派:パナソニック (例: SR-VSX1シリーズ)
パナソニックの最上位モデル「おどり炊き」は、価格は高めですが、その分炊き上がりの美味しさ、機能性、そして釜の耐久性(ダイヤモンド竈釜)など、全体的な満足度が非常に高いモデルです。
コスパ・バランス重視派:アイリスオーヤマ (例: RC-PDA50)
「ジェネリック家電」とご紹介しましたが、今のアイリスオーヤマは「安かろう悪かろう」ではありません。圧力IHでこの価格、というのは驚きです。しっかり国内メーカーとしてのサポートも受けられますし、「ひとまず圧力IHを試したい」「コスパ重視」という方には十分おすすめできますよ。
食感で選ぶなら
- もっちり派: 象印の「炎舞炊き」は、お米の甘みと粘りを引き出すのが得意です。
- しゃっきり派: 三菱電機の「本炭釜」は、粒立ちが良く、しゃっきりとした炊き上がりが特徴です。
「おいしい」は、実は人によって好みが分かれます。「もっちり・甘い」が好きか、「しゃっきり・粒立ち」が好きか。ご自身の好みに合わせてメーカーを選ぶのも、失敗しないコツですよ。
炊飯器に入れてはいけないものリスト

ここが一番重要かもしれません。
炊飯器の故障原因で非常に多いのが、「メーカーが禁止している使い方」をしてしまうことです。
特にSNSなどで流行る「炊飯器レシピ」には、非常に危険なものが含まれていることがあるので、絶対に真似しないでください。
これは故障だけでなく、やけどや爆発、火災につながる可能性がある、本当に大切な情報です。
【危険】絶対にNGな使い方
以下の使い方は、蒸気口(蒸気が出る穴)を塞ぎ、内部の圧力が異常に高まって突然フタが開いたり、中身が噴き出したりする危険があります。
内釜を傷めるNG行為
「炊飯器調理」に対応したモデルもありますが、その場合も必ず「取扱説明書に記載されているレシピ」の範囲内で行ってくださいね。
SNSの情報を鵜呑みにするのは本当に危険ですよ!
途中で止まる時の対処法
炊飯の途中でピーピーと音が鳴って止まってしまうと焦りますよね。これは炊飯器が何らかの異常を検知したサインです。
まずは慌てずに、液晶パネルに表示されている「エラーコード」を確認してください。
例えば、象印なら「E01」や「H17」など、メーカーごとにコードが決まっています。取扱説明書や公式サイトでそのコードを調べれば原因が分かることが多いんです。
よくある原因としては、
一度電源プラグを抜き、数分待ってから差し直すとリセットされる場合もありますが、何度も繰り返すようであればセンサーの汚れを確認し、それでもダメなら点検・修理を検討してください。
電池交換できない理由と寿命
「炊飯器のコンセントを抜いたら、時計がリセットされちゃって、予約炊飯ができなくて不便!」という経験はありませんか?
これは、時計や予約時刻を記憶するための内蔵リチウム電池が切れているサインです。
この電池、実はテレビのリモコンのように簡単には交換できません。なぜなら、本体の基板に「ハンダ付け」でガッチリ固定されているからなんです。
これは接触不良を防ぎ、長期間安定して動作させるための設計なのですが、交換はメーカー修理扱いになってしまいます。
電池切れだけで修理に8,000円…となると、結構悩ましい金額ですよね。特に購入から5年以上経っていると、「これを機に買い替えようかな」と考えるお客様も多いです。
耐久性が高いおすすめ炊飯器5選
最後に、「壊れにくい」という耐久性を重視する方へ、店頭での評判やお客様からのお話も踏まえたおすすめの炊飯器を5つご紹介しますね。
1. パナソニック「おどり炊き」SR-VSX1シリーズ
こちらはパナソニックの最上位モデルになりますが、やはり品質はピカイチです。
「ダイヤモンド竈釜」という内釜を採用していて、これがとっても硬くて丈夫なんです。コーティングの耐久性が高いので、長く使ってもご飯がこびりつきにくく、美味しく炊き続けられるのが嬉しいポイントですね。
価格は高めですが、その分、機能性・耐久性ともに満足度は非常に高いですよ。
2. タイガー「ご泡火炊き」JPI-X100
タイガーの炊飯器で特におすすめしたいのが、内釜の保証が手厚いモデルです。この「ご泡火炊き」シリーズの多くは「内なべ5年保証」が付いています。
本土鍋や多層釜など、釜自体の性能もさることながら、「5年も保証してくれる」というメーカーの自信が、なによりの安心材料じゃないでしょうか。もっちりとした炊き上がりも人気です。
3. 日立「ふっくら御膳」シリーズ
日立も内釜の保証に力を入れているメーカーです。モデルにもよりますが「内釜6年保証」という、業界でもトップクラスの長期保証を付けていることがあります。
圧力とスチームで炊き上げる「ふっくら御膳」は、ご飯の味も好評です。内釜のコーティング剥がれをとにかく心配される方に、日立の長期保証はすごく人気があります。
4. 象印「極め炊き」NW-VD18
「炎舞炊き」のような上位モデルも人気ですが、耐久性や安定した動作を求めるなら、スタンダードなIHモデルも根強い人気があります。
このNW-VD18のようなモデルは、機能がシンプルなIH炊飯器です。構造が複雑ではない分、故障するリスクポイントが少なく、長年「象印さんのIHで十分おいしい」と愛用されているお客様も多いんです。基本的な性能と耐久性のバランスが良いモデルですね。
5. アイリスオーヤマ 圧力IH RC-PDA50
「耐久性」とは少し視点が変わりますが、「コストパフォーマンスと安心感」で選ぶならアイリスオーヤマも選択肢に入ります。以前のイメージと違って品質も向上していますし、何よりこの価格で圧力IHが手に入るのはすごいです。
「高価なものを長く使うより、手頃なものを数年で買い替えるかも」という方には、こうしたコスパ重視のモデルも合っていると思いますよ。
総括:壊れやすいメーカーの炊飯器を避けるコツ
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。



