毎日使う炊飯器のフッ素コーティングが剥がれてきて、ご飯に黒い粉のようなものが混じっていることに気付いたことはありませんか?
フッ素加工された炊飯器は確かに便利ですが、コーティングの剥がれや危険性について不安を感じている方も多いのではないでしょうか。テフロン加工との違いがよく分からなかったり、剥がれた部分を食べてしまっても大丈夫なのか心配になったりしますよね。
実は、体に安全な炊飯器を選ぶポイントがいくつかあるんです。
フッ素加工の剥がれが気になる場合は修理という選択肢もありますし、最初からフッ素加工なしの炊飯器を選ぶという方法もあります。
土鍋やステンレス、鋳物ホーローなど、素材そのものの力でお米を美味しく炊き上げる炊飯器も数多く登場しています。
この記事では、フッ素加工炊飯器の安全性に関する疑問から、フッ素加工を使わない炊飯器の選び方まで、家電のプロとして店頭でお客様からよく聞かれる質問にお答えしながら、安心して毎日使える炊飯器選びのコツをご紹介します。
フッ素加工なし炊飯器の気になる疑問点

- フッ素加工の炊飯器は危険?
- テフロン加工との違い
- フッ素を食べてしまっても大丈夫?
- 各メーカーの公式見解まとめ
- 体に安全な炊飯器の条件
- 内釜のコーティング剥がれの原因
まずは、多くの方が疑問に思っているフッ素加工の安全性について、一つひとつ見ていきましょう。正しい知識を知ることで、安心して炊飯器を選べるようになりますよ。
フッ素加工の炊飯器は危険?
「フッ素加工=危険」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、通常の炊飯で危険性が高いというわけではないんです。
フッ素樹脂(PTFE)が問題視されることがあるのは、高温に加熱されたときに有毒なガスが発生する可能性があるからです。情報によると、フッ素樹脂は260℃を超えると劣化しはじめ、360℃以上で分解ガスが発生するとされています。
ただ、炊飯器の温度は炊飯中でも100℃程度なので、空焚きのような異常な使い方をしない限り、有毒ガスが発生する心配はほとんどないんですね。
もう一つ、過去にはフッ素樹脂を釜に貼り付ける接着剤として使われていた「PFOA」や「PFOS」という化学物質に、有害性が指摘されていました。これらは体内に蓄積しやすく、健康への影響が懸念された物質です。
しかし、これらの物質は規制が進み、現在日本で製造・販売されている炊飯器には使用されていません。そのため、2021年以降に購入した新しい炊飯器であれば、この点については安心して良いと思います。
テフロン加工との違い
「フッ素加工」と「テフロン加工」、よく聞く言葉ですが、この二つの違いをご存知でしょうか?
実は、テフロン加工はフッ素樹脂加工の一種なんです。アメリカのデュポン社(現ケマーズ社)が開発したフッ素樹脂の商品名が「テフロン」で、それが有名になったため広く知られるようになりました。
つまり、やっていることは同じなんですね。フライパンなどでよく見る「マーブルコート」や「ダイヤモンドコート」も、フッ素樹脂に他の素材を混ぜて耐久性を高めたもので、大きな括りではフッ素樹脂加工の仲間になります。
加工の名称 | 内容 |
---|---|
フッ素樹脂加工 | フッ素樹脂を使ったコーティングの総称 |
テフロン加工 | デュポン社(現ケマーズ社)のフッ素樹脂加工の商標名 |
ダイヤモンドコートなど | フッ素樹脂にダイヤモンド粒子などを混ぜて耐久性を高めた加工 |
このように、呼び方が違うだけで基本的な仕組みは同じだと覚えておくと、調理器具を選ぶときに分かりやすいかもしれません。
フッ素を食べてしまっても大丈夫?
内釜のコーティングが剥がれてきて、ご飯に混ざってしまったら…と考えると心配になりますよね。
この点について、各メーカーは公式サイトで「万が一口に入っても、体に吸収されずに排出されるため、健康への影響はない」という見解を示しています。フッ素樹脂は化学的に安定した物質で、消化・吸収されることがないから、と説明されていますね。
参考:パナソニック公式サイト「内釜のフッ素加工や塗装(外側)が剥がれても使えるか」
また、コーティングが剥がれた部分のご飯が茶色く変色することがありますが、これも心配いりません。これは金属のサビではなく、フッ素が剥がれた部分にお米のでんぷん質がこびりつき、焦げやすくなるためです。衛生面での問題もないとされています。
とはいえ、ご飯をよそうたびに黒いものが混ざっていると、あまり良い気はしないですよね…。
精神衛生上、あまりに剥がれがひどくなってきたら、買い替えや修理を考えるタイミングかもしれません。
各メーカーの公式見解まとめ

フッ素加工の剥がれについて、主要な炊飯器メーカーがどのような見解を出しているか、まとめてみました。店頭でもよく聞かれるポイントです。
どのメーカーも「剥がれても安全性に問題はない」という点で共通していますが、表現に少しずつ違いがあります。
このように、各社とも安全性については問題ないとしています。
ただし、ご飯がこびりつきやすくなるなど、使い勝手は悪くなるので、その点が買い替えを判断する一つの基準になりそうですね。
体に安全な炊飯器の条件
「それでもやっぱり化学物質は気になる」という方のために、より安心して使える炊飯器を選ぶための条件をいくつかご紹介します。
一番分かりやすいのは、内釜にフッ素加工が施されていない炊飯器を選ぶことです。素材としては、主に以下の3つが挙げられます。
これらの素材は、コーティングがないため剥がれる心配がありません。素材そのものの力でご飯を美味しく炊き上げてくれるのが魅力ですね。
また、フッ素加工がされている炊飯器を選ぶ場合でも、「PFOAフリー」といった表記がある製品を選ぶと、より安心感が高まると思います。
先ほどもお伝えしたように、現在の製品は基本的に規制をクリアしていますが、メーカーが安全性をアピールするために、あえて表記している場合もあります。
内釜のコーティング剥がれの原因
フッ素加工は、使い方次第で長持ちさせることができます。
逆に言えば、何気ない普段の行動がコーティングを傷つけ、剥がれの原因になっているかもしれません。
主な原因は「摩擦」と「衝撃」です。
具体的には、以下のような行動が挙げられます。
ついついやってしまいがちな行動もあるのではないでしょうか?
特に、内釜の中で洗米するのは要注意です。お米と釜がこすれることで、目に見えない小さな傷がたくさんついてしまいます。少し手間ですが、ボウルなどで洗米するだけで、内釜の寿命はかなり変わってくると思いますよ。
フッ素加工なし炊飯器の選び方と使い方

- 素材で炊き上がりが変わる
- 長持ちさせるためのポイント
- 剥がれは修理できる?
- 内釜だけ買い替えるのはお得?
- フッ素加工なしのおすすめ炊飯器3選
ここからは、実際にフッ素加工なしの炊飯器を選ぶ際のポイントや、長く愛用するための使い方について解説します。自分にぴったりの一台を見つける参考にしてくださいね。
素材で炊き上がりが変わる
フッ素加工なし炊飯器を選ぶ上で一番の楽しみは、内釜の素材によってご飯の味が大きく変わることだと思います。それぞれの素材に特徴があるので、どんなご飯が好きかイメージしながら選ぶのがおすすめです。
素材 | メリット | デメリット | 炊き上がりの特徴 |
---|---|---|---|
ステンレス | ・丈夫でサビに強い ・お手入れが簡単 ・比較的軽い | ・熱伝わり方が穏やか ・ご飯がこびりつきやすい場合がある | お米の粒感がしっかりした、しゃっきりとした炊き上がり。 |
土鍋 | ・蓄熱性が高く、遠赤外線効果がある ・お米の甘みと香りを引き出す | ・重い ・衝撃に弱く、割れる可能性がある ・お手入れに気を使う | ふっくらもちもちで、香ばしい「おこげ」も楽しめる。 |
鋳物ホーロー | ・熱伝導と蓄熱性に優れる ・無水調理など炊飯以外にも使える ・デザイン性が高い | ・非常に重い ・価格が高い傾向がある ・衝撃でホーローが欠けることがある | 一粒一粒にムラなく火が通り、お米本来の旨みを感じられる。 |
例えば、硬めのご飯が好きならステンレス、料亭のような本格的な味を求めるなら土鍋、デザイン性や多機能性を重視するなら鋳物ホーロー、といった選び方ができますね。
毎日食べるものだからこそ、好みに合わせてこだわりたいポイントです。
長持ちさせるためのポイント
フッ素加工がある内釜も、ない内釜も、丁寧に扱うことで長くきれいに使うことができます。
先ほど「剥がれの原因」でご紹介した内容の裏返しになりますが、大切なポイントをまとめておきますね。
これらのポイントを少し意識するだけで、内釜の状態は全然違ってきます。お気に入りの炊飯器を長く愛用するためにも、ぜひ試してみてください。
剥がれは修理できる?

「コーティングが剥がれてしまったけど、炊飯器本体はまだ使えるし、買い替えるのはもったいない…」
そんなときに検討したいのが、内釜のフッ素を再加工してくれるサービスです。専門の業者さんにお願いすると、剥がれてしまったコーティングをきれいに修理してくれます。
私もお客様から教えていただいて知ったのですが、例えば大阪にある「センテック」さんのように、フライパンや鍋のフッ素加工を専門に修理している会社があるんです。炊飯器の内釜も対応してくれるんですよ。
費用は内釜のサイズや素材によって異なりますが、「センテック」さんの公式サイトの情報を見ると、5合炊きで2,000円~3,000円程度からのようです。
ただし、往復の送料は自己負担になります。また、南部鉄器など特殊な素材の場合は追加料金がかかることもあるので、事前に見積もりを取るのが安心ですね。
再加工サービスの注意点
修理を依頼すると、手元に内釜がない期間が発生します(通常2~3週間程度)。その間、お鍋でご飯を炊くなどの対応が必要になります。また、修理によって元々あった水位の目盛りが消えてしまう場合があるため、その点も確認が必要です。
新品の内釜を買い替えるよりは安く済むことが多いので、選択肢の一つとして知っておくと良いと思います。
内釜だけ買い替えるのはお得?
修理ではなく、メーカーから新しい内釜だけを購入するという方法もあります。ほとんどのメーカーで、部品として内釜を販売していますね。
ただ、この内釜が結構いいお値段なんです。機種にもよりますが、安いものでも数千円、高機能なモデルだと1万円を超えることも珍しくありません。
ここで判断のポイントになるのが、炊飯器本体の使用年数と価格です。
例えば、買ってから2~3年しか経っていない高価な炊飯器であれば、内釜だけを買い替える価値は十分にあると思います。一方で、5年以上使っている2万円程度の炊飯器の内釜に1万円をかけるのは、少しもったいないかもしれません。
なぜなら、炊飯器の技術は年々進化しているからです。5年も経てば、同じ価格帯でもっと美味しく炊けるモデルが出ている可能性が高いんですね。内釜だけでなく、圧力機能やIHの制御、パッキンなども経年劣化します。
内釜の価格と、新しい炊飯器の価格・性能を比較して、どちらが自分にとって満足度が高いか考えてみるのがおすすめです。
フッ素加工なしのおすすめ炊飯器3選
最後に、私がお客様にご案内する中でも特に人気が高い、フッ素加工なしの炊飯器(またはそれに近い考え方の製品)を3つご紹介します。
1. バーミキュラ ライスポット
鋳物ホーロー鍋で有名なバーミキュラが作った炊飯器です。なんといってもデザインがおしゃれで、キッチンにあるだけで気分が上がります。
鍋と調理器がセットになっていて、炊飯はもちろん、無水調理や低温調理など、様々な料理が楽しめるのが最大の魅力です。ご飯の味は、お米一粒一粒の輪郭がはっきりとしていて、甘みが強いのが特徴ですね。
2. 長谷園×siroca かまどさん電気
伊賀焼の有名な土鍋「かまどさん」を、スイッチひとつで全自動で炊き上げるために開発された炊飯器です。
本物の土鍋がそのままセットされているので、ガス火で炊いたような本格的な土鍋ごはんが手軽に味わえます。香ばしいおこげも作れるので、土鍋ごはんに憧れている方にはたまらない一台だと思います。
3. 象印 STAN. 自動調理なべ
こちらは厳密には炊飯器ではなく電気調理鍋なのですが、炊飯機能も備わっています。内釜はフッ素加工なしのホーロー製(土鍋コーティング)で、直火にもかけられるのが便利なポイント。白米3合まで炊けます。
炊飯だけでなく、煮込み料理や無水調理もできる多機能さと、お手頃な価格、そしてシンプルなデザインが人気の理由です。
総括:フッ素加工なしの炊飯器
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。