SNSで話題の炊飯器を使った同時調理レシピ、試してみたいと思ったことはありませんか?
ご飯を炊きながらアルミホイルに包んだおかずも一緒に作れたら、忙しい日々の時短になって本当に便利ですよね。
でもちょっと待ってください。
炊飯器でアルミホイルを使うのは大丈夫なのか、それともダメなのか、きちんと確認したことはありますか?
家電量販店で働いていると、お客様から「炊飯器でさつまいもを焼くときにアルミホイルで包んでもいいの?」「保温モードなら問題ない?」といったご質問をよくいただきます。実は、多くのメーカーが炊飯器でのアルミホイル使用を推奨していないんです。
また、落し蓋の代わりに使えないか、ご飯がくっつくときの対処法はないかなど、具体的な疑問も多いですよね。
この記事では、炊飯器でアルミホイルを使うことの本当のリスクと、なぜメーカーが推奨しないのか、そして安全に使うために知っておくべきポイントをわかりやすくお伝えします。
炊飯器でのアルミホイル使用は危険?

- アルミホイルは大丈夫?ダメ?
- 安全性や害について
- 火事や故障のリスクは?
- なぜメーカーは推奨しないのか
- 保温モードでの使用について
まず最初に、一番気になる「炊飯器でアルミホイルを使ってもいいのか?」という安全性やリスクについて、詳しく見ていきましょう。
アルミホイルは大丈夫?ダメ?
SNSなどで「炊飯器でご飯と一緒に、アルミホイルに包んだおかずを同時調理!」といったレシピを見かけると、とても手軽で試してみたくなりますよね。
ですが、ほとんどの炊飯器メーカーは、炊飯器の「炊飯」モードでアルミホイルやラップ、ポリ袋などを使用することを推奨していません。
「ダメ」と断言される理由は、それが炊飯器の設計上、想定されていない使い方だからなんです。
炊飯器は、お米と決められた量の水を入れて、美味しくご飯を炊き上げるために特化した家電製品です。特に最近の圧力IHタイプの炊飯器は、内部で高い圧力をかけて高温で炊き上げます。
お客様からも「ちょっと野菜を蒸したいんだけど、アルミホイルで包んで入れちゃダメ?」と聞かれることがあるんです。
でも、そういった使い方をすると、思わぬトラブルの原因になる可能性があるんですよ。
例えば、タイガーや日立などの公式サイトや取扱説明書にも、クッキングシートやアルミ箔、ラップなどを使った調理は、蒸気口(調圧孔)をふさいでしまい、内容物が吹き出したり、やけどや故障の原因になるため危険、という趣旨の記載があります。
「調理モード」が搭載されている炊飯器であっても、そのモードで許可されている食材や使い方(例えば「ケーキモード」や「煮込みモード」)が決められており、アルミホイルの使用がOKとは限らないんです。
取扱説明書を必ず確認しましょう
お手持ちの炊飯器で何がOKで何がNGかは、機種によって異なります。
一番確実なのは、付属の「取扱説明書」や「料理集(レシピブック)」を確認することです。
もし「大丈夫」と書かれていなければ、それはメーカーが安全性を保証していない、ということになるんですね。
SNSの情報はあくまで個人の体験談であることが多く、安全が保証されているわけではありません。便利さの裏にあるリスクも知っておくことが大切だと思います。
安全性や害について
「アルミホイルを加熱すると、有害な物質が溶け出すんじゃないか?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
まず、アルミニウムが溶け出す「融点」は約660℃とされています。
一方、炊飯器の内部は、加熱時でもせいぜい100℃~130℃程度(圧力タイプの場合)です。そのため、炊飯器の熱でアルミホイルが溶け出して、有害物質が発生するという心配は、まずないと考えて良いと思います。
また、アルミニウムの摂取とアルツハイマー病などの関連性について、一時期話題になったことがありますが、現在のところ「アルミがアルツハイマー病の原因になる」というはっきりとした科学的根拠は見つかっていない、とされています。
食品に含まれるアルミは、ベーキングパウダーや漬物の色止めなどにも使われていて、摂取しても99%は体外に排出されると言われています。過度に心配しすぎる必要はなさそうですね。
炊飯器でアルミホイルを使う際、本当に気をつけなければいけない「害」や「危険性」は、化学的なものではなく、「物理的なトラブル」なんです。
具体的には、次の「火事や故障のリスク」で詳しくお話ししますが、アルミホイルが蒸気の通り道をふさいでしまうことが、一番大きな問題なんですね。
もう一つ、化学的な反応として知っておきたいのは、アルミホイルは「酸」や「塩分」に弱いということです。
梅干しや酢を使った料理、塩分の強い煮物などをアルミホイルで長時間包んでおくと、アルミが溶けて変色したり、穴が開いたりすることがあります。これは炊飯器での使用に限らず、アルミホイルの一般的な特性です。
もし、炊飯器の「調理モード」などで、調味料を使った料理にアルミホイルを落し蓋代わりに使う場合(これも推奨はされませんが)、こういった化学反応が起こる可能性もゼロではない、ということですね。
火事や故障のリスクは?

では、炊飯器でアルミホイルを使った場合に起こり得る、最も注意すべき「火事や故障のリスク」について、具体的に見ていきましょう。
最大の危険性は、「蒸気口(調圧孔)の閉塞(へいそく)」です。
蒸気口がふさがると…
圧力IH炊飯器のフタの内側には、圧力を調整するための大切な部品「調圧孔(ちょうあつこう)」や「安全弁」があります。
もし、炊飯中にアルミホイルの破片や、一緒に調理している食材(例えば葉物野菜の葉やトマトの皮など)がこの穴に詰まったり、貼り付いたりすると、大変なことになります。
- 蒸気の逃げ道がなくなり、内部の圧力が異常に高まる。
- 結果として、内容物(熱湯やご飯)が吹き出す。
- 最悪の場合、突然フタが開いて、中身が飛び散る。
火事や火災に直結するとは言えませんが、高温の蒸気や内容物が噴き出すわけですから、大やけどにつながる可能性があり、非常に危険です。
また、アルミホイルが内釜の底や側面にある「温度センサー」に影響を与え、誤作動を引き起こす可能性もあります。
最近の炊飯器は、センサーが細かく温度を感知して火加減を調整することで、美味しいご飯を炊き上げています。
そこにアルミホイルが挟まると、熱の伝わり方がおかしくなって、センサーが「あれ?まだ温度が低い?」と勘違いして、必要以上に加熱し続けてしまうかもしれないんです。
このセンサーの誤作動が引き起こすトラブルとしては、
- 内釜の底が焦げ付いてしまう。
- 内釜のフッ素コーティングが傷んで、ご飯がくっつきやすくなる。
- 炊飯器本体の故障や、プラスチック部品の変形につながる。
などが考えられます。
さらに、固いアルミホイルを無理に出し入れすることで、デリケートな内釜のコーティングを傷つけてしまうリスクもありますね。内釜が傷つくと、熱伝導率が変わってしまい、炊きムラができやすくなるんです。
これらのリスクは、すべてメーカーの保証対象外となる「想定外の使用」によって引き起こされるものです。万が一、故障してしまっても、保証が受けられない可能性が非常に高いので、注意が必要ですね。
なぜメーカーは推奨しないのか
ここまでの話で、メーカーが炊飯器でのアルミホイル使用を推奨しない理由は、もうお分かりかもしれませんね。
一言でいえば、「お客様の安全を最優先し、製品本来の性能を発揮させるため」だと思います。
家電量販店で働いていると、様々な家電の「取扱説明書」の分厚さや、注意書きの多さに驚くことがあります。ですが、それはすべて、過去に起きた事故やトラブルを防ぎ、お客様に安全に使ってもらうために、メーカーが「想定」して記載していることなんです。
「炊飯器でアルミホイルを使う」という行為は、メーカーの「想定外」なんです。
どんなに便利な使い方でも、メーカーが「安全です」と確認していない以上、「やめてください」と言うしかないんですね。
特に、圧力IH炊飯器は、名前の通り「圧力」を扱う調理器具です。市販の圧力鍋と同じように、使い方を間違えると大きな事故につながる可能性があります。
メーカーとしては、
- 蒸気口閉塞による、やけどやケガのリスク。
- 温度センサー誤作動による、製品の焦げ付きや故障のリスク。
- 内釜の損傷による、炊飯性能の低下リスク。
といった、様々な危険性を回避するために、「炊飯モードでのアルミホイル使用はNG」としているわけです。
「調理モード」や「調理機能付き炊飯器」は別?
最近は、「煮込み」や「ケーキ」「パン発酵・焼き」など、多彩な調理モードが搭載された炊飯器も増えています。(象印やタイガーの製品にもありますね)
これらの炊飯器は、そのモード専用の加熱プログラムを持っており、圧力のかけ方や温度管理も「炊飯」とは異なります。
ただし、調理モードがあるからといって、アルミホイルを使っても良いということにはなりません。
あくまで、「取扱説明書」や「付属のレシピブック」に記載されている調理法のみが、メーカーによって安全性が確認されている使い方です。ご自身の判断でアルミホイルを追加するのは、やはりリスクが伴います。
「SNSでみんなやってるから大丈夫」ではなく、ご自身の安全と、大切な炊飯器を守るためにも、メーカーの推奨する使い方を守ることが、一番大事なことなんだと思います。
保温モードでの使用について
「炊飯(加熱)」時は危険だとして、「保温」モードならどうでしょうか?
保温モードは、炊きあがったご飯を適温(一般的に70℃前後)でキープするための機能です。炊飯時のように高温になったり、高い圧力がかかったりすることはありません。
そのため、アルミホイルを入れても、炊飯時のような蒸気口の閉塞や、急激な内圧の上昇といったリスクは、格段に低いと言えるでしょう。
しかし、保温モードでの使用にも、いくつか考えられる懸念点はあります。
保温モードでの懸念点
1. センサーへの影響
保温時も、炊飯器はセンサーで温度を監視しています。アルミホイルがセンサー部分に触れていると、正確な温度が測れず、部分的に温度が高くなりすぎたり、逆に低くなったりする可能性があります。
2. 食材の腐敗リスク
専用の「低温調理」機能がない炊飯器の保温モードは、温度が不安定な場合があります。特に、肉や魚などのタンパク質を「保温調理」しようとすると、食中毒の原因となる細菌が繁殖しやすい温度帯(20℃~50℃)を長時間維持してしまう可能性があり、非常に危険です。
3. 酸や塩分による反応
先ほどもお伝えしたように、アルミホイルは酸や塩分に弱いです。もし保温する食材に調味料(酢、醤油、塩分)が多く含まれていると、長時間保温することでアルミホイルが変色したり、穴が開いたりするかもしれません。
炊きあがったご飯を、一時的にアルミホイルで仕切って、その横で買ってきた唐揚げを少し温める…といった程度であれば、大きな問題は起きにくいかもしれません。
ただ、それもメーカーが推奨している使い方ではない、ということは覚えておいてくださいね。
個人的には、保温モードであっても、アルミホイルを長時間入れっぱなしにするのは、あまりおすすめできないかな、と思います。
特に、ローストビーフやサラダチキンのような「低温調理」を、専用機能のない炊飯器の保温モードで挑戦するのは、食中毒のリスクが非常に高いため、絶対に避けるべきですね。
炊飯器とアルミホイル調理の疑問解消

- 同時調理は可能?
- さつまいも調理の注意点
- アルミホイルがくっつく時の対処法
- 落し蓋の代わりになるか
メーカーが推奨していないのは分かったけれど、それでもSNSで見るような便利な使い方に興味がある…という方もいらっしゃると思います。
ここでは、そういった具体的な疑問について、もう少し掘り下げてみますね。
同時調理は可能?
ご飯を炊くのと同時に、アルミホイルで包んだおかず(例えば、鮭のホイル焼きや、味付けした鶏肉など)を内釜の上に乗せて加熱する同時調理。これができたら、時短になって本当に便利ですよね。
ある人気料理研究家が紹介されていたレシピでも、アルミホイルや耐熱ポリ袋(アイラップなど)を使った同時調理について言及されていました。
その中でも触れられていますが、この方法にはいくつかのデメリットや注意点があります。
同時調理のデメリットとリスク
1. メーカー非推奨(自己責任)
まず大前提として、これはメーカーが推奨する使い方ではありません。アルミホイルや袋が膨張したり、破片が飛んだりして、蒸気口をふさぐ危険性(先ほどお伝えしたリスク)が常につきまといます。もし試す場合は、パンパンにならないように容量に余裕を持たせるなど、細心の注意が必要です。
2. ご飯の味が落ちる
これが結構大きなポイントだと思います。炊飯器が「踊り炊き」などの高性能な炊き方をしていても、上に「おもし」が乗っている状態では、お米がうまく対流できません。
結果として、ご飯がベチャッとした炊き上がりになったり、お米の美味しさが最大限に引き出せなかったりします。
3. におい移り
おかずの匂いが、炊きあがったご飯に移ってしまう可能性もあります。
せっかく良い炊飯器を使っていても、その性能を活かせないのは、ちょっと勿体ない気もしますよね。
「ご飯の味は多少犠牲にしても、とにかく時短!」という日や、「お弁当用に少量だけ」といった、目的を割り切った使い方なら、アリなのかもしれません。
もし試される場合は、蒸気口をふさがないよう、アルミホイルの包み方や置く場所に細心の注意を払い、あくまで「自己責任」で行う、という意識が重要ですね。
さつまいも調理の注意点
「炊飯器で焼き芋」というのも、よく聞くレシピですよね。
ホクホク、しっとりの甘いさつまいもが炊飯器でできるなら嬉しいです。
ここで注意したいのが、「アルミホイルをいつ使うか」です。
SNSなどでは、「さつまいもをアルミホイルで包んで、水と一緒に入れて炊飯スイッチオン!」というレシピを見かけることがあります。
しかし、これもメーカーが推奨しない「アルミホイルを炊飯器に入れて加熱する」行為に当たります。蒸気口をふさぐリスクや、センサー誤作動のリスクは、同時調理の時と同じように存在します。
おすすめは「アルミホイルを使わない」方法
そこで、とあるブロガーさんが紹介されていた、とても良い方法があります。
- さつまいもを洗い、両端をカットする。
- 炊飯器の内釜に、水(記事では200cc)と粗塩を少々入れる。
- アルミホイルで包まず、さつまいもをそのまま内釜に入れる。
- 「玄米モード」で炊飯スタート。(通常の「炊飯」モードでもOK)
- 炊きあがったら、熱いうちに(ここで初めて)アルミホイルで包み、15分ほど置いて余熱で蒸らす。
この方法なら、炊飯器でアルミホイルを加熱しないので、安全ですよね。
出来上がりは「焼き芋」というより、「ふかし芋」や「蒸し芋」に近い、しっとりとした食感になるようです。ですが、さつまいもの甘みが凝縮されて、とても美味しく仕上がるとのこと。
アルミホイルは、炊きあがった後の「保温・蒸らし」のために使うんですね。
これなら安心です!
「玄米モード」を使うのは、通常の炊飯よりも高温でじっくり加熱する時間が長いため、さつまいもが甘くなりやすいからだそうです。賢い使い方ですよね。
もし「炊飯器でさつまいも」を試すなら、アルミホイルで包んで炊飯するリスクのある方法ではなく、アルミホイルを使わずに炊飯し、仕上げに使う方法を強くおすすめします。
アルミホイルがくっつく時の対処法

自己責任で同時調理などを試した際に、「アルミホイルにご飯粒がびっしりくっついて、取るのが大変!」という問題が起こることがあります。
これは、アルミホイルの表面に、ご飯のデンプンが糊(のり)のようにくっついてしまうために起こります。
この問題への対処法としては、以下の2つが挙げられます。
くっつき防止のアイデア
1. くっつきにくいアルミホイルを使う
スーパーなどで売っている、片面がシリコン樹脂でコーティングされた「フライパン用」や「くっつかない」とうたわれているアルミホイルを使う方法です。
シリコン加工されている面をお米側に向ければ、くっつきにくくなるはずです。
2. オーブン用シート(クッキングシート)を敷く
普通のアルミホイルの下(お米と接する面)に、小さくカットしたオーブン用シートを一枚敷く、というアイデアです。これならお米はオーブン用シートに接するのでくっつきません。
ただし、ここでまた「安全性」の問題に戻ります。
オーブン用シート(クッキングシート)も、アルミホイルと同様に、メーカーは炊飯器での使用を推奨していません。
くっつく問題への対処法としてオーブン用シートを使うことは、リスクをさらに追加する(アルミホイル+クッキングシート)ことにもなりかねません。
「くっつく」という不便さを受け入れるか、それとも「メーカー非推奨」というリスクを承知の上で、くっつかないホイルやシートを使うか…という選択になりますね。
もし試すのであれば、シートやホイルは必要最小限の大きさにカットし、内釜の中で動いて蒸気口をふさぐことがないよう、くれぐれも注意が必要です。
落し蓋の代わりになるか
「落し蓋(おとしぶた)」は、煮物を作る際に、煮崩れを防いだり、味を均一に染み込ませたりするために使う、日本の伝統的な調理器具ですね。
ご自宅にちょうどいいサイズの落し蓋がない場合、アルミホイルやクッキングシートで代用するのは、一般的な料理のテクニックとして広く知られています。
お鍋のサイズに合わせてカットし、中央に蒸気穴を開けて使えば、アク取りや吹きこぼれ防止にもなって便利です。
では、これを「炊飯器」の「調理(煮込み)モード」で使っても良いのでしょうか?
答えは、やはり「NG(非推奨)」です。
炊飯器で「落し蓋代わり」が危険な理由
お鍋で使う場合と炊飯器で使う場合では、決定的な違いがあります。
それは、「フタの構造」です。
お鍋のフタはシンプルですが、炊飯器のフタには、先ほどから何度も出てきている「調圧孔(蒸気口)」や「安全弁」という、非常にデリケートで重要な部品が集中しています。
もし、落し蓋代わりに使ったアルミホイルやクッキングシートが、煮汁と一緒に浮き上がって、これらの穴に貼り付いてしまったら…?
もうお分かりですね。蒸気口がふさがれ、内部圧力が異常になり、吹きこぼれやフタが開くといった危険な状態を引き起こします。
炊飯器の調理(煮込み)モードで落し蓋が必要な場合は、アルミホイルやシートで代用するのではなく、「耐熱性のある、浮かび上がらない小皿」などを使うのが、安全な方法と言えそうですね。
お鍋での常識が炊飯器では通用しない。これは家電の特性を理解する上で、とても大事なポイントだと思います。
総括:炊飯器とアルミホイルの上手な使い方
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。



