最近、私が働く家電量販店でも「お風呂は沸かさないでシャワーだけで済ませたいんだけど、どんな給湯器がいいの?」というご相談をよく受けるようになりました。
特に都心のワンルームにお住まいの学生さんや社会人の方、あるいは団地のリフォームを考えているお客様からのお問い合わせが増えている印象ですね。
忙しい毎日、サッとシャワーだけで済ませたいというライフスタイル、私自身もすごく共感できます。でも実は、ガス給湯器を「シャワーのみ」で快適に使うためには、ただ安いものを選べばいいというわけではないんです。選び方を間違えると、「冬場にお湯がぬるくて震える…」とか「シャワーヘッドを変えたらお湯が出なくなった!」なんていうトラブルに見舞われてしまうことも。
そこで今回は、シャワーメインの生活を考えている皆さんが失敗しないために、給湯器の号数選びから、意外と知られていない節水シャワーヘッドとの相性問題、そして団地リフォームの裏技まで、私の販売員としての経験を交えて徹底的に解説します。
この記事を読めば、あなたのライフスタイルにぴったりの給湯器選びや、トラブルのない快適なシャワー生活を送るためのヒントが見つかるはずです。
- シャワー派とお湯はり派のコスト比較
- 無駄な水量を減らす節水テクニック
- 団地のお風呂を広くするリフォーム手法
- 節水シャワーヘッドと給湯器の相性問題
ガス給湯器をシャワーのみで使う際の選び方

「お風呂にお湯を溜めないなら、一番小さい給湯器で十分でしょ?」と思われがちですが、実はここが最初の落とし穴なんです。シャワーだけで生活するからこそ、こだわりたいポイントがいくつかあるんですよね。
ここでは、気になる設置費用の相場から、快適な湯量を確保するためのスペック選び、そしてランニングコストの比較まで、販売員の視点でわかりやすく解説していきます。
ガス給湯器のシャワー設置の価格
給湯器の交換となると、気になるのはやっぱり「お値段」ですよね。
私たち販売員も、ここが一番お客様が気にされるポイントだと痛感しています。正直なところ、給湯器の価格は「定価」と「実勢価格(販売価格)」に大きな差がある商品なんです。
例えば、一人暮らしのアパートなどでよく使われる16号の給湯専用機(屋外壁掛型)。定価で見ると10万円以上することもありますが、ネット通販やリフォーム店の実勢価格だと、本体と工事費込みで5万円〜8万円前後で収まることも珍しくありません。これ、知らないと損しちゃいますよね。
一方で、団地のリノベーションなどで使われる「壁貫通型(ホールインワン)」の場合は、浴槽の交換なども含めた大規模な工事になるため、総額で25万円〜30万円前後が相場になります。設置場所が高所だったり、配管のカバーが必要だったりすると追加費用がかかることもあるので注意が必要です。
| タイプ | 工事費込み目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般壁掛型(16号) | 5万〜8万円 | 最も一般的で安価。アパート等。 |
| 壁貫通型(ホールインワン) | 25万〜30万円 | 団地用。浴槽交換含む大規模工事。 |
相場を知るためにも、最低でも2〜3社から見積もりを取ることを強くおすすめします。
「今すぐ交換しないとお湯が出ない!」と焦っている時こそ、足元を見られないように冷静な判断が必要ですよ。
その点、私が個人的に推しなのが「交換できるくん」。
本当はうちのような家電量販店でお買い上げいただきたいのですが(笑)、料金、スピード、手軽さ、保証など、あらゆる面で時代の最先端を行っている感のある同社は、今いちばんコスパが良いのではないでしょうか。
シャワーとお湯はりどちらが安い?
これ、店頭でも本当によく聞かれる質問ナンバーワンかもしれません。「シャワーだけで済ませるのと、お風呂にお湯をはるの、結局どっちが安いの?」という疑問ですよね。
結論から言っちゃうと、これは「シャワーを浴びている時間」によるんです。
一般的な浴槽にお湯をはると、だいたい200リットルくらいのお湯を使います。一方で、シャワーは1分間に約10リットルから12リットルのお湯が出ると言われています。
単純計算すると、シャワーを出しっぱなしで約16分から20分以上浴びるなら、浴槽にお湯をはってしまった方がガス代も水道代も安くなる計算になりますね。
なお、シャワー1分あたりの使用水量の目安としては、国土交通省 関東地方整備局「家庭での節水」でも「シャワーは1分間に約12リットルの水を使う」と紹介されています。
「私は5分で終わるから絶対シャワー派!」という方は、間違いなくシャワーのみの方が経済的です。ただ、冬場に寒くてずっとシャワーを浴び続けてしまったり、家族が続けて入る場合は、お湯はりの方が安くなるケースも多いので注意が必要です。
最近のガス代の料金動向なんかを見ていると、原料調整費の影響で実質的な値上がりが続いていますから、数分の差でも月単位で見ると結構な金額差になっちゃいます。
節約の分岐点は「15分」
家族構成や季節にもよりますが、トータルでシャワーの使用時間が15分を超えるようなら、お湯はりの検討もアリです。
「少しでもガス代を浮かせたい…」という方は、後ほど紹介する節水テクニックや、適切な給湯器選びが重要になってきますよ。
また、キッチンで使う食洗機との組み合わせで光熱費を抑える考え方について知りたい方は、食洗機と給湯器の関係を分かりやすく解説した記事も参考になるはずです。
シャワーを出しっぱなしで使う水の量

シャワーを浴びている時って、気持ちよくてついつい出しっぱなしにしちゃいますよね。
私も疲れている時はボーッとして流しっぱなしにしちゃうことがあるので、偉そうなことは言えないんですが(笑)
でも、この「出しっぱなし」が家計に与えるダメージは意外と大きいんです。
先ほどもお話しした通り、一般的なシャワーは1分間に約10リットル以上の水を消費します。もし15分間出しっぱなしにしたら、それだけで150リットル。これは2リットルのペットボトル75本分です。
毎日これを続けると、1ヶ月で約4,500リットルもの水を使うことになります。水道代だけでなく、その大量の水を温めるためのガス代も比例してかかってくるのが痛いところですよね。
特に、プロパンガス(LPガス)の物件にお住まいの方は要注意です。
都市ガスに比べて単価が高いことが多いので、シャワーの出しっぱなしはダイレクトにお財布を直撃します。私が接客したお客様の中にも、「引っ越してプロパンガスになったら、シャワーだけの生活なのにガス代が倍になった!」と嘆いている方がいらっしゃいました。
対策としては、こまめに止めるのが一番なんですが、それが面倒だという方には「手元ストップボタン付き」のシャワーヘッドが最強のアイテムです。蛇口まで手を伸ばさなくても手元でカチッと止水できるだけで、無意識の節水効果が生まれます。
これ、本当に便利なので、まだ使っていない方はぜひ導入を検討してみてください。
給湯専用器の特徴とメリット
「シャワーのみ」の生活をするなら、高機能な「フルオート」や「追い焚き機能付き」の給湯器はオーバースペックかもしれません。
そこで選択肢に入ってくるのが「給湯専用」のガス給湯器です。
これ、シンプルですがシャワー派には嬉しいメリットがたくさんあるんですよ。
まず最大のメリットは、本体価格の安さです。
追い焚き機能や自動湯はり機能がない分、構造がシンプルで故障も少なく、初期費用をかなり抑えられます。賃貸物件のオーナーさんや、コストを抑えて交換したい方にはぴったりですね。
メーカーで言うと、リンナイの「RUXシリーズ」やノーリツの「GQシリーズ」などが定番です。
そして、もう一つ注目してほしいのが「Q機能」という技術です。
「なにそれ?」って感じですよね。これ、シャワーを使っている時に一度お湯を止めて、もう一度出した時に「冷たい水が出てきてヒヤッとする」あの現象(冷水サンドイッチ現象と言います)を防いでくれる機能なんです。
Q機能は必須レベル!
古い給湯器だと、再出湯時にお湯の温度が安定しないことがよくあります。Q機能搭載モデルなら、お湯を再使用した時の温度変化を最小限に抑えてくれるので、シャワーの快適性が段違いです。
特にノーリツさんの給湯器はこの温度制御技術に定評がありますし、パロマさんの製品だと音声で「お湯になります」と教えてくれる親切設計のものもあります。安く設置できるだけでなく、シャワーの快適さを決める「温度の安定性」もしっかり備わっているのが給湯専用器の良いところなんです。
ワンルームに適した号数選び
一人暮らしのワンルームだからといって、適当に安い給湯器を選ぼうとしていませんか?
ここで一番気をつけてほしいのが「号数」選びです。
給湯器の号数とは、「水温+25℃のお湯を1分間に何リットル出せるか」という能力を表す数字のこと。
結論から言いますね。
シャワーを快適に浴びたいなら、一人暮らしでも絶対に「16号」を選んでください。
たまに「キッチン用の5号の瞬間湯沸かし器でシャワーも賄えませんか?」と聞かれることがあるんですが、これは全力で止めます(笑)
5号はあくまで食器洗い用。シャワーとして使うには湯量が圧倒的に足りませんし、安全上のリスクもあります。
なぜ16号が必要かというと、ポイントは「冬場の水温」です。
夏場は水温が高いので小さい能力でもお湯が出ますが、冬場、水温が5℃近くまで下がると、水を温めるのにものすごいパワーが必要になります。
能力の低い給湯器だと、設定温度のお湯を作ろうとすると水量がチョロチョロになってしまい、全然温まらない…という悲劇が起きます。
16号あれば、冬場でも毎分10リットル前後の出湯が可能なので、ストレスなくシャワーを浴びることができます。
「大は小を兼ねる」と言いますが、給湯器に関しては「小は大を兼ねない」ので、ここはケチらずに16号を選んでおくのが、後悔しないための鉄則です。
ガス給湯器のシャワーのみの設置とトラブル対策

ここまでは選び方のお話でしたが、ここからはもう少し実践的な「設置」や、実際に使い始めてからの「トラブル対策」についてお話しします。
「あれ?お湯が出ない…故障?」と焦る前に知っておいてほしい、ちょっとした知識を詰め込みました。特に団地にお住まいの方や、節水シャワーヘッドを使っている方は必見ですよ。
団地でシャワーのみのリフォーム方法
団地や築古の集合住宅にお住まいの方、あるいはこれから引っ越す予定の方。「バランス釜」ってご存知ですか?
浴槽の隣に四角い機械がドーンと置いてある、あのタイプです。
あれがあると、浴槽が狭くて体育座りでしか入れない…なんてことも。
そんな悩みを解決する画期的なリフォームが、「壁貫通型給湯器(ホールインワン)」への交換です。
これ、私が個人的に団地リノベーションの最高傑作だと思っているシステムなんです。
今までバランス釜が置いてあったスペース(壁の穴)に、給湯器本体をスッポリ埋め込んでしまう技術なんです。
これにより、浴室内の邪魔な機械がなくなり、浴槽を80cmから110cm〜120cmまで広げることができます。これなら足を伸ばして入浴できますし、シャワースペースも広々確保できます。LIXIL(INAX)の専用浴槽なんかは、またぎが低い「浅型タイプ」もあって、高齢の方でも入りやすい設計になっています。
ただし、設置には注意点があります。
この壁貫通型給湯器は100Vの電源が必要になるんです。古い団地の浴室にはコンセントがないことが多いので、電気工事士による電源増設工事が必要になります。
また、壁の厚みによって専用のアダプターが必要だったりと、かなり専門的な知識が必要な工事になります。DIYは絶対に無理(というか違法で危険)なので、必ずガスの有資格者がいる専門業者に依頼してくださいね。
シャワーのお湯が出ない原因
「給湯器を新しくしたのに、シャワーの途中でお湯が水になっちゃう!故障!?」
…これ、お店の修理カウンターでも本当によくある相談なんです。
でも、サービスマンが見に行くと「機器に異常なし」で帰ってくることが多々あります。
原因は何だと思いますか?
実はこれ、「節水シャワーヘッド」が原因のケースが非常に多いんです。
ガス給湯器には「最低作動流量(MOQ)」というものがあります。簡単に言うと、「これくらいの水が流れないと、火を点けませんよ」という安全装置のラインです。だいたい毎分2.5〜3.5リットルくらい流れないと点火しません。
ところが、最近流行りの「超節水型シャワーヘッド(節水率50%〜80%!とか謳ってるやつ)」を使うと、蛇口を全開にしていても、給湯器側にはチョロチョロとした水しか流れていない状態になることがあるんです。
すると給湯器は「あ、水が止まったな」と勘違いして火を消してしまう。これが「冷水サンドイッチ」や「お湯が出ない」トラブルの正体です。
もしこの現象が起きたら、まずはシャワーヘッドを元々ついていた標準のものに戻してみてください。それでお湯が安定して出るなら、給湯器の故障ではなく「流量不足」が原因です。
故障だと思って修理を頼むと、出張費だけ取られてしまうこともあるので、まずはセルフチェックしてみてくださいね。
快適に使うためのシャワーヘッド交換
「じゃあ、どのシャワーヘッドならいいの?」ってなりますよね。
私が店頭で自信を持っておすすめしているのが、タカギの『キモチイイ』シリーズです。
これ、本当にバランスが良いんです。
おすすめの理由は「低水圧対応」の技術。節水率は約30%〜34%と、極端に高くはありません。でも、0.3mmという極細の穴をたくさん配置することで、少ない水量でも肌に当たる勢いはしっかり強く感じるように設計されています。
つまり、「給湯器に必要な流量は確保しつつ、ユーザーには強い水圧を感じさせる」という、絶妙なところを突いているんです。
これなら、先ほどお話しした「着火不良」のリスクを抑えつつ、水道代の節約も叶います。実勢価格も3,000円〜5,000円程度と手頃なので、半年も使えば元が取れる計算です。
もし今、「シャワーが弱くてイライラする」「お湯が途中で止まる」と悩んでいるなら、給湯器を変える前に、まずはシャワーヘッドをタカギ製に変えてみる価値は十分にありますよ。
ちなみに、メンテナンスとしてシャワーのフィルター掃除も重要です。フィルターが詰まると水圧が落ちますからね。
100円ショップで売っている「注ぎ口洗いブラシ」なんかでササッと掃除するだけで、水圧が復活することも多いので、ぜひ試してみてください。
より本格的に汚れを落としたい場合は、シャワーヘッドをオキシクリーンで掃除する方法と注意点もチェックしておくと安心です。
節水シャワーヘッドで壊れるリスク

節水シャワーヘッドのお話が出たので、もう少し怖い話もしておきます。
実は、相性の悪い節水シャワーヘッドを使い続けると、給湯器自体を壊してしまうリスクもあるんです。
特に注意してほしいのが「手元止水スイッチ」が付いているタイプ。便利なんですが、お湯を出している最中に手元で急に「バチン!」と水を止めると、配管内の圧力が急激に上昇する「ウォーターハンマー現象」が起きます。
「ドン!」という音が配管から聞こえたことはありませんか?
この衝撃波、給湯器内部のセンサーや配管にものすごい負担をかけます。最悪の場合、内部の水漏れや電子基板の破損につながることも。
これを防ぐためには、給湯器とシャワーホースの間に「逆止弁アダプター」を取り付けるのが有効です。最近の給湯器には内蔵されていることも多いですが、古いタイプだと付いていないことも。
「節水=善」と思われがちですが、給湯器にとっては「水が流れにくい=負担がかかる」という側面もあります。安易に「節水率◯%!」という数字だけで選ばず、給湯器への負担も考慮した製品選びが大切だと、私たちもお客様には必ずお伝えするようにしています。
まとめ:シャワーのみのガス給湯器
長くなってしまいましたが、ガス給湯器をシャワーのみで快適に使うためのポイントをまとめます。シンプルに見えるシャワーライフも奥が深いですよね。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| コスト | 使用時間15分が分岐点。給湯専用器なら設置費用も安く抑えられる。 |
| スペック | 一人暮らしでも冬場を考えて16号を選ぶ。Q機能付きで快適さアップ。 |
| 団地リノベ | 壁貫通型(ホールインワン)で浴槽を広く。電源工事の可否を要確認。 |
| トラブル回避 | 極端な節水ヘッドは着火不良の元。低水圧対応モデルを選び、逆止弁で故障を防ぐ。 |
シャワーだけの生活は、掃除も楽ですし、忙しい現代人には合理的な選択だと思います。
ただ毎日肌に触れるお湯のことですから、「安いからこれでいいや」と適当に選ばずに、ご自身の住環境に合ったベストな選択をしていただきたいなと思います。
この記事が、皆さんの快適なシャワーライフの助けになれば、家電店員としてこんなに嬉しいことはありません。もし給湯器選びやシャワーヘッドの交換で迷ったら、ぜひお近くの家電量販店やガスショップで相談してみてくださいね。


