冬の寒さが厳しくなると、温かい布団が恋しくなりますよね。
「一度入ったら出られない!」なんて方も多いのではないでしょうか。
そんな冬の強い味方といえば電気毛布ですが、あまりの心地よさに、ついついスイッチを切り忘れてしまったり、あえて朝までつけっぱなしにしてしまったりすること、ありませんか?
「電気代、高くなってないかな?」
「火事になったりしないかな?」
と、ふとした瞬間に不安になることもあると思います。
実は、電気毛布のつけっぱなしには、私たちが思っている以上に意外なメリットと、絶対に見過ごせないリスクの両方が隠れているんです。
この記事では、家電量販店で働く私の視点から、電気毛布をつけっぱなしにした場合のリアルな電気代や、体に及ぼす影響、そして安全に使うための具体的なテクニックまでを詳しくお話しします。
リスクを正しく理解して、この冬を安全に、そしてポカポカ快適に過ごすためのヒントを持ち帰ってくださいね。
- 驚くほど安い電気代の真実
- 低温やけどのリスクについて
- ペットへの使用は専用品を選ぶ
- タイマー活用で安全かつ快適に
電気毛布のつけっぱなしにかかる電気代と危険性

「つけっぱなし」と聞くと、とんでもない請求が来たり、すぐに火を噴いたりするイメージがあるかもしれませんが、実際のところはどうなんでしょうか?
数字を見ながら冷静に紐解いていきますね。
つけっぱなしによる電気代
「うっかり電気毛布を消し忘れて外出してしまった!」そんな経験、ありませんか?
帰宅した瞬間に「やってしまった…電気代が…」と青ざめる気持ち、すごくよく分かります。
でも、安心してください。
結論から言うと、電気毛布の電気代は、他の暖房器具に比べて圧倒的に安いんです。
一般的な電気敷き毛布(定格55W前後)を例に計算してみましょう。
今の電気料金の目安(31円/kWh)で考えると、実は「強」モードで1時間使っても、たったの約0.96円程度なんです。1円かからないんです!
もし仮に、丸一日24時間つけっぱなしにしてしまったとしても、約23円。
これをなんと1ヶ月間(30日間)、24時間ずーっとつけっぱなしにしたとしても、月額で約700円程度に収まってしまうんです。
これがもしセラミックファンヒーターだったら、1ヶ月で数千円から1万円近くいくこともありますから、電気毛布がいかに省エネ性能に優れているかが分かりますよね。
「消し忘れた!」という精神的なダメージは大きいかもしれませんが、お財布へのダメージは実はほとんどない、というのが真実なんです。
この安さが、逆に「つけっぱなしでもいいか」という油断を生んでしまう原因でもあるんですけどね。
ワット数(W数)の目安や電気代の計算の考え方は、電気毛布のワット数(W数)と電気代の目安も参考にしてください。
弱と強でのつけっぱなし比較
電気代が安いとはいえ、「弱」と「強」ではどれくらい違うのか、ここも気になるところですよね。お店でお客様に説明するときも、この設定温度の違いはよく話題になります。
ざっくり言うと、「強」は「弱」の約10倍のコストがかかると思っていただいて大丈夫です。
| 設定 | 表面温度 | 1時間の電気代 | 24時間の電気代 |
|---|---|---|---|
| 弱 | 約20℃ | 約0.09円 | 約2.16円 |
| 中 | 約36℃ | 約0.56円 | 約13.4円 |
| 強 | 約52℃ | 約0.96円 | 約23.0円 |
表を見ていただくと分かる通り、「弱」設定だと1時間あたり約0.09円。これはもう、誤差の範囲と言ってもいいレベルの安さです。
「強」にすると温度は約52℃まで上がり、ダニ退治などができる高温になりますが、それでも1時間1円未満です。
ただ、コスト面では大差ないように見えますが、体感温度と体への影響は段違いです。
「強」でつけっぱなしにすると、50℃近い熱源にずっと触れていることになるので、暑すぎて汗だくになったり、後でお話しする低温やけどのリスクが跳ね上がったりします。
逆に「弱」ならほんのり温かい程度なので、長時間触れていてもリスクは下がりますが、暖房としての効果は薄れます。
コストよりも、「どの温度帯で体に触れ続けているか」の方が、重要度は高いんですよ。
一週間使うと?
極端な話ですが、「もし一週間、電気毛布をつけっぱなしにしたらどうなるの?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。旅行に行っている間に消し忘れた、なんてシチュエーションですね。
まず電気代だけで見れば、「強」モードでも一週間(7日間×24時間)で約160円程度です。缶コーヒー1本分ちょっと。驚きの安さですよね。
「じゃあ、ずっとつけっぱなしでいいじゃん!」と思われるかもしれませんが、ここが落とし穴なんです。
一週間も熱を加え続けると、寝具の水分が完全に飛び、極度の乾燥状態になります。
布団がカラカラになるだけなら良いですが、もしその上に重い荷物が乗っていたり、毛布がクシャクシャに丸まっていたりしたら、熱の逃げ場がなくなって危険な温度まで上昇してしまう可能性があります。
また、電気毛布自体の寿命も縮まります。
ずっと通電しているということは、中のヒーター線やコントローラーの部品が常に働いている状態です。特に安価なモデルだと、長期間の連続通電を想定していないパーツが使われていることもあります。
コスト的には痛くなくても、製品の劣化という見えないコストを支払っていることになるんです。
なので、一週間のつけっぱなしは絶対に避けてくださいね。
危ない理由
「電気代も安いし、別にいいじゃない」と思いがちですが、私が店頭でお客様に一番強くお伝えしたいのが体への危険性です。電気毛布をつけっぱなしで寝ることは、実は体にとってかなり過酷な環境を作ってしまっているんですよ。
やはり怖いのは「低温やけど」です。
40℃〜50℃くらいの、「あたたかくて気持ちいい」と感じる温度でも、長時間皮膚の同じ場所に触れていると、じわじわと皮膚の深部がやけどを負ってしまいます。
たとえば、44℃では3〜4時間、46℃では30分〜1時間、50℃では2〜3分が目安とされています。
(出典:消費者庁『ゆたんぽを安全に正しく使用しましょう!』)
寝ている間は熱さに気づきにくく、朝起きたら皮膚が赤くなっていたり、最悪の場合は水ぶくれ を起こしていたりすることもあるんです。特に高齢者の方や、糖尿病などで感覚が鈍くなっている方は要注意です。
壊れる原因に

体への影響だけでなく、製品そのものが壊れる原因にもなります。
電気毛布の中には、細い電熱線が張り巡らされています。これが非常にデリケートなんですね。つけっぱなしにして、さらに寝返りで体重をかけたり、布団を畳んだりすると、この電熱線に負荷がかかり続けます。
特に危険なのが、「半断線(はんだんせん)」という状態です。
線が完全に切れるのではなく、切れかかった状態でつながっていること。こうなると、その部分の電気抵抗が増えて、異常発熱(ホットスポット)を起こします。
温度ムラなどの買い替え判断も含めて、電気毛布の寿命は何年?壊れる原因と買い替えサインで詳しく解説しています。
また、温度調節をするコントローラー部分も消耗します。
昔ながらのスライド式コントローラーなどは、内部の接点が長時間の通電で溶けてくっついてしまい(溶着)、温度調節ができずに暴走して熱くなり続けるという故障も稀にあります。
「最近、温度調節が効かないな?」と思ったら、すぐに使用を中止してくださいね。つけっぱなしは、こうした故障のリスクを確実に早めてしまいます。
シーン別に見る電気毛布のつけっぱなし対策

リスクは怖いけれど、やっぱり寒いのは我慢できない!
そんな皆さんのために、ここからはシーン別の具体的な対策をお話しします。
完全に使わないのではなく、「賢く使う」ことが大切なんです。ちょっとした工夫で、リスクを回避しながらポカポカ生活が送れますよ。
寝る時に消すべきか
これ、本当によく聞かれる質問No.1です。
「寝る時は消した方がいいんですか?」答えは、「基本的には消す、もしくはタイマーを使うのが正解」です。
人間は、深い眠りに入るときに体の中心の温度(深部体温)を下げる必要があります。
でも、電気毛布をつけっぱなしにしていると、体が外から温められ続けて体温が下がらず、結果として眠りが浅くなったり、疲れが取れなかったりするんです。
「朝起きた時になんだかダルい」と感じる方は、電気毛布のつけっぱなしが原因かもしれません。
理想的な使い方は、「就寝30分前にスイッチを入れて布団を温めておき、布団に入ったらスイッチを切る(または弱にする)」こと。これなら、入眠時の心地よさと、質の高い睡眠の両方を手に入れられます。
掛け・敷きの違いで最適な使い方も変わるので、迷う方は電気毛布は掛けと敷きどっちがいい?違いと使い分けも参考にしてみてください。
「でも、朝方の寒さが辛い…」という方には、コイズミの「KDS-50238T」のような、「快眠タイマー」付きのモデルが本当におすすめです!
寝始めの2時間は温めて、その後は自動でオフになり、起きる直前にまたオンになるという、まさに理想的な動きを自動でやってくれるんです。これ本当に便利ですよ。
快眠のためのゴールデンルール
- 寝る前に「強」でダニ退治&予熱
- 布団に入ったら「切」または「最弱」へ
- 朝の寒さが心配なら「プログラムタイマー」搭載機種を選ぶ
そのまま外出した場合
朝、バタバタしていて「あ!電気毛布消し忘れたかも!」と出先で気づいた時。
先ほどお話しした通り、電気代の面ではそこまで絶望する必要はありません。1日くらいなら数十円の出費です。
ただ、心配なのは火災のリスクですよね。
もし、電気毛布が「クシャクシャに丸まった状態」や「重いクッションの下敷き」になっていたとしたら、そこだけ異常に熱がこもって発火する可能性があります。
また、パナソニックの「DB-U12T」などに搭載されている「室温センサー」機能も優秀です。
室温が上がれば自動で温度を下げてくれるので、もしつけっぱなしにしてしまっても、過剰な加熱をある程度防いでくれます。
うっかり屋さんには、こうした安全機能が充実した国内メーカー品を強くおすすめします。
ペットへの影響

「留守番中の猫ちゃんやワンちゃんが寒いとかわいそうだから」と、人間用の電気毛布を床に敷いて出かける方、いらっしゃいませんか?
これ、絶対にやめてください!本当に危険なんです。
人間用の電気毛布は、全身で汗をかける人間向けに作られています。
汗をかけない犬や猫にとって、40℃以上の熱源はずっと触れていると暑すぎますし、逃げ場がないと熱中症や脱水症状になり、命に関わります。
また、コードを噛んでしまって感電したり、おしっこをして漏電したりする事故も後を絶ちません。ペットには必ず、「ペット専用のヒーター」を使ってあげてください。
例えば、貝沼産業の「ユカペットLX」という商品。これは素晴らしいですよ。
表面温度が約38℃(体温程度)以上に上がらないようになっていて、しかも防水、コードも噛みつき防止の保護管で覆われています。
「人間用のお古でいいや」ではなく、大切な家族のために、必ず専用の安全なものを選んであげてくださいね。
安全に使うためのタイマー活用術
今使っている電気毛布にタイマー機能がない…という方も、諦めないでください!
安価に機能をアップグレードする方法があります。
それが、ホームセンターなどで売っている「外付けのコンセントタイマー」を使う方法です。
例えば、リーベックスの「PT77」のような24時間プログラムタイマー。
これをコンセントと電気毛布の間に挟むだけで「夜11時にON、朝7時にOFF」といった設定が自由にできます。
これなら、高い電気毛布に買い替えなくても、消し忘れ防止と起床時の快適さを両立できます。
電気毛布は構造がシンプル(アナログなスイッチが多い)なので、こういった外付けタイマーとの相性が抜群に良いんです。
「寝る前につけて、寝たら消えて、起きる前にまたつく」なんていう、高級機種顔負けの動きも1,000円〜2,000円程度の投資で実現できちゃいます。
これ、個人的にすごくおすすめの裏技です!
電気毛布のつけっぱなしに関する総括
ここまで電気毛布のつけっぱなしについて、お金のこと、体のこと、安全のこと、いろいろとお話ししてきました。
最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
電気毛布は、正しく使えば最強のコスパを誇る暖房器具です。でも「安さ」に甘えて安全をおろそかにしてはいけません。
自分と家族、そしてペットの安全を守るために、ぜひ今日から「賢い使い方」を実践してみてくださいね。
| 項目 | つけっぱなしのリスク・評価 | 対策・推奨アクション |
|---|---|---|
| 電気代 | 非常に安い(月数百円程度) 家計へのダメージは小 |
消し忘れを過度に恐れる必要はないが、節電意識は忘れずに |
| 健康面 | 脱水、低温やけど、睡眠の質低下 リスク大 |
寝る時はOFF、または「快眠タイマー」活用 寝る前の水分補給も忘れずに |
| 火災・故障 | 半断線、蓄熱による発火リスクあり | 折りたたんで使わない 古い製品は買い替えを検討 |
| ペット | 熱中症、感電、漏電 絶対NG |
人間用は使わず、必ず「ペット専用ヒーター」を使用する |
「たかが電気毛布」と思わず、正しい知識を持って、この冬もぬくぬくと快適に過ごしましょう!


