排水溝の掃除に重曹とクエン酸を混ぜて使っても、期待したほど効果がないと感じたことはありませんか?
実は、この組み合わせが意味ないと言われるのには、ちゃんとした科学的な理由があるんです。
シュワシュワと泡立つ様子は確かに気持ちいいのですが、残念ながらその泡自体には強力な洗浄力がありません。
むしろ、重曹とクエン酸を混ぜることで、それぞれが持つ本来の洗浄効果を打ち消し合ってしまうことをご存じでしょうか?
キッチンやお風呂場の排水溝をきれいに保つには、汚れの性質を見極めて、正しい方法で掃除することが大切です。
この記事では、なぜ混ぜると効果が薄れるのか、それぞれを単体で使う正しい方法、そして頑固な詰まりやヘドロに本当に効く対処法まで、実践的な情報をお届けします。
無駄な時間を使わず、確実にきれいにする方法を知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください!
排水溝に重曹とクエン酸は意味ない?基本情報

ここでは、なぜ「意味ない」と言われてしまうのか、その科学的な理由と、本当に効果的な使い分けについて詳しく解説していきますね。
重曹とクエン酸のどっちが効く?
お掃除の定番アイテムとして人気の重曹とクエン酸ですが、これらは「混ぜて使う」よりも「汚れの性質に合わせて使い分ける」ほうが、断然効果的なんです。
まず、排水溝の汚れには大きく分けて2つのタイプがあります。
1つ目は、料理の油や皮脂などの「酸性の汚れ」。
2つ目は、水垢や石鹸カスなどの「アルカリ性の汚れ」です。
| 洗剤の種類 | 性質(pH) | 得意な汚れ |
|---|---|---|
| 重曹 | 弱アルカリ性 | 油汚れ、皮脂、ぬめり(酸性汚れ) |
| クエン酸 | 酸性 | 水垢、石鹸カス、尿石(アルカリ性汚れ) |
重曹は弱アルカリ性なので、酸性の油汚れやドロドロしたぬめりを中和して分解するのが得意です。一方、クエン酸は酸性なので、カチカチに固まった水垢や石鹸カスを溶かす力を持っています。
よくある間違いが、すべての汚れをまとめて落とそうとして最初から両方を混ぜてしまうこと。
実はこれ、お互いの性質を打ち消し合って「中性」に近い状態になってしまい、洗浄力がガクンと落ちてしまうんです。つまり汚れを落とすはずが、ただの発泡する水を作っているだけ…なんてことになりかねません。
汚れの種類を見極めて、重曹かクエン酸、どちらか一方を「単体」で使うのが正解です!キッチンの油汚れなら重曹、お風呂場の白い水垢ならクエン酸を選びましょう。
重曹だけ、またはクエン酸だけ使う方法
では、具体的にどうやって使えばいいのかですね。
まず「重曹だけ」を使う場合です。
キッチンの排水溝など、ベトベトした油汚れやぬめりが気になる時は、粉末のまま重曹を汚れに直接振りかけます。
この時、少し多めに山盛りにするのがコツです。重曹には研磨作用もあるので、スポンジや古歯ブラシでこすり洗いをする際のクレンザーとしても優秀なんですよ。
重曹を振りかけた上から少量の水を垂らしてペースト状にし、汚れに密着させてから30分ほど放置すると、アルカリの力で油汚れがじわじわと分解されます。
次に「クエン酸だけ」を使う場合です。
お風呂場の排水溝周りに白くカリカリした汚れがついていたら、それは水垢です。クエン酸小さじ1を水200mlに溶かした「クエン酸水」を作り、キッチンペーパーに染み込ませて汚れ部分に貼り付ける「パック」がとても効果的です。
スプレーで吹きかけるだけだとすぐに流れてしまうので、パックにしてじっくり成分を浸透させるのがポイントですね。
クエン酸は酸性なので、塩素系の漂白剤(カビキラーなど)と混ざると有毒なガスが発生して大変危険です。絶対に同時に使用しないでくださいね。
粉末のおすすめの割合
「洗浄力が落ちるとわかっていても、あのシュワシュワする泡で掃除したい!」という方もいらっしゃいますよね。その気持ち、すごくわかります。
泡が汚れを浮かせてくれるような視覚的なスッキリ感は、お掃除のモチベーションアップには欠かせません。
もし発泡作用を利用して、軽い汚れを浮かせたり消臭効果を狙ったりする場合は、「重曹 2 : クエン酸 1」の割合がおすすめです。重曹を多めにすることで、発泡後も液性を弱アルカリ性に保ちやすくなり、油汚れへの効果を多少残すことができるからです。
具体的には、重曹100g(約1カップ)に対して、クエン酸50g(約半分カップ)を用意します。先に重曹を排水溝全体に振りかけ、その上からクエン酸を振りかけます。最後にぬるま湯を少しずつ回しかけると、勢いよく発泡が始まります。
ただし、先ほどもお伝えしたとおり、この泡の力だけで頑固なヘドロ汚れや詰まりを解消するのは正直難しいです。「毎日の小掃除」や「ニオイ予防」程度に考えておくのが、がっかりしないための秘訣かなと思います。
基本的な掃除のやり方
ここでは、重曹とクエン酸の発泡作用を使った、基本的なお掃除手順をステップバイステップでご紹介します。
週末のリセット掃除など、軽い汚れを落としたい時に試してみてください。
手順1:部品を外してゴミを取り除く
まずは排水溝のフタ、ゴミ受け(ヘアキャッチャー)、トラップなどの取り外せる部品をすべて外します。たまっていた髪の毛や野菜くずなどの固形物は、この段階できれいに取り除いておきましょう。これが残っていると洗浄成分が行き渡りません。
手順2:重曹をたっぷりと振りかける
排水口の穴の中や取り外した部品全体に、重曹をたっぷりと振りかけます。「もったいないかな?」と思うくらい、白くなるまで覆ってしまって大丈夫です。特に汚れがひどい部分は、指やブラシで少しこすって馴染ませておくと良いですよ。
手順3:クエン酸水をかける
重曹の上からクエン酸の粉末を振りかけるか、あらかじめ作っておいた濃いめのクエン酸水を少しずつ回しかけます。シュワシュワと泡が出てきますので、汚れ全体を泡で包み込むようにしましょう。
手順4:放置して洗い流す
泡が出たらそのまま30分程度放置します。最後に水でしっかりと洗い流せば完了です。もし汚れが残っているようなら、古歯ブラシなどで軽くこすってあげると浮いた汚れがスルッと落ちますよ。
放置時間の目安
「洗剤は長く置けば置くほど効く」と思っていませんか?
実はこれ、半分正解で半分間違いなんです。
重曹やクエン酸を使ったナチュラルクリーニングの場合、適切な放置時間は「30分から1時間程度」が目安です。
30分程度置くことで、重曹のアルカリ成分が油汚れを分解(乳化)したり、クエン酸が水垢を溶かしたりする化学反応が進みます。短すぎると反応が不十分で汚れが落ちませんし、逆に長すぎても効果が頭打ちになるだけでなく、別のリスクが出てきます。
例えば、長時間放置しすぎると、浮き上がった汚れが乾燥して再びこびりついてしまったり、重曹自体が配管内で固まって詰まりの原因になってしまうこともあるんです。
特に冬場の乾燥した時期などは注意が必要ですね。
「寝る前にかけて翌朝流す」というやり方もよく耳にしますが、重曹を使う場合は粉残りが怖いので、私はあまりおすすめしていません。在宅中の1時間程度を目安に、しっかりと時間を管理して洗い流すのが安全で確実ですよ。
お湯の温度がポイント
掃除の仕上げに水を流す時、どんな温度の水を使っていますか?
実は、ここにも重要なポイントがあるんです。
正解は「40℃〜50℃程度のぬるま湯」です。
冷たい水だと、せっかく溶けかかった油汚れが冷やされて再び固まってしまうことがあります。これでは、排水管の奥で油の塊を作っているようなものです。
逆に、熱湯(60℃以上)を流すのは絶対にNGです!
なぜ熱湯がダメなのかというと、排水管(塩ビ管)の耐熱温度が意外と低いからなんです。
一般的な塩ビ管の耐熱温度は60℃程度と言われており、熱湯を流し続けると配管が変形したり、接続部分のパッキンが傷んで水漏れの原因になったりするリスクがあります。
動物性の脂(ラードなど)が溶ける温度は約40℃〜50℃と言われています。お風呂のお湯より少し熱いくらいの温度をたっぷりと流すことで、汚れをスムーズに押し流し、配管も傷めずに済みます。
毎日の洗い物の最後に、給湯器の温度を上げて少し流すだけでも、立派な詰まり予防になりますよ。
排水溝に重曹とクエン酸は意味ない?症状別の対処法

ここまで重曹とクエン酸の活用法をお伝えしてきましたが、正直なところ「もう既に詰まっていて水が流れない」「ヘドロの臭いが強烈」といった深刻な状況では、ナチュラルクリーニングだけでは太刀打ちできないことが多いんです。
ここからは、そんな時に試してほしい、より具体的で強力な解決策について、家電量販店ならではの視点も交えてご紹介します。
重曹が固まって詰まった時の解消法
「重曹で掃除したら、逆に詰まってしまった!」というSOS、実は少なくありません。
重曹は水に溶けにくい性質があるため、大量に粉を流し込んだり、十分にすすぎができていなかったりすると、排水管のカーブ部分(トラップ)に沈殿して石のように固まってしまうことがあるんです。
もし重曹が原因で詰まってしまった場合、やるべきことは「お湯とお酢(またはクエン酸)」での溶解です。
- 60℃未満(50℃前後)のお湯を、少しずつ時間をかけて流し込みます。固まった重曹を温めて溶けやすくするためです。
- 大量のクエン酸水(またはお酢)を一気に流し込みます。アルカリ性の重曹と反応して発泡し、その勢いと酸の力で塊を崩すきっかけを作ります。
- それでもダメな場合は、物理的に崩すしかありません。ラバーカップ(スッポン)を使って圧力をかけるか、ワイヤー式のパイプクリーナーを使って直接つつき、塊を粉砕します。
こうならないためにも、重曹を使う時は「粉のまま大量に流さない」「最後は大量の水でしっかり押し流す」ことを徹底してくださいね。
排水溝のヘドロはどうやって取る?
排水溝の嫌なニオイの元凶であるドロドロの「ヘドロ」。これは、食材のカス、油、石鹸カス、髪の毛、そしてそれらをエサに繁殖した雑菌の塊(バイオフィルム)です。
重曹やクエン酸の発泡パワー程度では、このバイオフィルムを剥がすことは難しいのが現実です。
ヘドロを確実に取るには、以下の2つのアプローチが必要です。
1. 化学の力で溶かす
ヘドロの正体である「タンパク質」や「油脂」を強力に分解できる、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)などを主成分とした塩素系や強アルカリ性の洗浄剤を使います。
2. 物理的な力で剥がす
こびりついた汚れをブラシでこすり落としたり、水圧で吹き飛ばしたりする方法です。ブラシが届かない奥の配管汚れには、後ほどご紹介する高圧洗浄機などが活躍します。
表面のぬめり程度なら古歯ブラシで十分ですが、見えない配管の奥に溜まったヘドロは、次に紹介するプロ仕様の洗浄剤で「化学的に分解」してしまうのが、最も手軽で確実な方法だと私は思います。
プロも使う強力な洗浄剤
「重曹でダメならどうすればいいの?」という方に、私が自信を持っておすすめしているのが、業務用のパイプ洗浄剤です。
中でも特におすすめなのが、和協産業の「ピーピースルーF」です。
これはプロの清掃業者さんも愛用しているほどの本格派ですが、一般家庭でも使える安全な成分(医薬用外劇物ではない)で作られています。
市販の液体パイプクリーナーとは比べ物にならないほどの高濃度で、以下の4つの力で汚れを徹底的に除去してくれます。
- 発泡:強力な泡で汚れを浮き上がらせる
- 発熱:反応熱で油汚れを溶かす
- アルカリ:油脂やタンパク質を強力に分解
- 酸素:有機汚れを分解し消臭
使い方は、粉末を排水口の周りに撒いて、40℃〜50℃の温水で流し込むだけ。重曹とは違い、髪の毛すらも溶かしてしまうほどのパワーがあります。
私も自宅で使ったことがありますが、ゴボゴボという音とともに詰まりが解消された時の爽快感はたまりませんよ。
参照情報
ピーピースルーFの詳しい成分や使用上の注意については、メーカー公式サイトの情報もぜひ参考にしてください。
(出典:和協産業株式会社『ピーピースルーF 製品情報』)
毎日の予防と便利グッズ
一度きれいにしたら、その状態をキープしたいですよね。
最後に、掃除の手間を減らすための予防策と、家電量販店店員としておすすめしたい便利グッズをご紹介します。
ゴミ受けを「銅製」か「ステンレス製」に変える
備え付けのプラスチック製ゴミ受けは、傷がつきやすくヌメリの温床になりがちです。
これをSANEIなどのメーカーから出ている「ステンレス製(パンチング加工)」に変えるだけで、汚れがツルッと落ちて掃除が劇的に楽になります。
さらに強力なのが「銅製」です。
銅には抗菌作用(微量金属作用)があり、置くだけでヌメリや雑菌の繁殖を抑えてくれます。
高圧洗浄機で定期メンテナンス
戸建てにお住まいで、配管の奥まで徹底的にきれいにしたいなら、ケルヒャーやアイリスオーヤマの高圧洗浄機が活躍します。
特にアイリスオーヤマの「パイプクリーナーホース」などの専用アタッチメントを使えば、ホースが自走して配管の奥まで入り込み、高圧水流でこびりついた汚れを削ぎ落としてくれます。
年に1回、大掃除の時期にこれを行うだけで、詰まりのリスクは格段に下がりますよ。
洗濯機のエラー(U11など)が出たら要注意
洗濯機で「U11(パナソニック)」や「E03(シャープ)」といった排水エラーが出る場合、洗濯機本体だけでなく、排水溝(防水パン)側の詰まりが原因のことも多いんです。
ドラム式洗濯機などは少ない水で洗うため、糸くずや汚れが流れにくく、排水トラップに溜まりがちです。
エラーが出たら、洗濯機のフィルターだけでなく、排水溝のトラップも必ずチェックしてみてくださいね。
まとめ:排水溝に重曹とクエン酸は意味ないのか
今回は「排水溝に重曹とクエン酸は意味ないのか?」という疑問について、科学的な視点と私の実体験を交えてお話ししました。
結論として、完全に無意味ではありませんが、その効果には明確な限界があります。
- 重曹とクエン酸は混ぜると効果が弱まるため、汚れに合わせて単体で使うのがベスト。
- 「重曹=油汚れ」「クエン酸=水垢」と使い分ける。
- 頑固な詰まりやヘドロには、重曹にこだわらず「ピーピースルーF」のような専用の業務用洗剤に頼る。
- 日々の予防には、銅製ゴミ受けや50℃のお湯流しが効果的。
「ナチュラルで安全」という響きは素敵ですが、解決できない汚れに時間を費やすのはもったいないですよね。状況に応じて、化学の力や便利な道具を上手に頼ることも、賢い家事の一つだと思います。
ぜひ、ご自宅の排水溝の状態に合わせて、最適な方法を選んでみてくださいね!


