エアコンをつけた瞬間に漂う嫌な臭いに、うんざりした経験はありませんか?
そんな時に話題となっているのが、16度設定で臭いを取るという手法です。
SNSでも注目を集めているこの方法ですが、なぜ16度という設定が効果的なのか、気になる電気代はどの程度かかるのか、風量と時間の設定はどうすればよいのかなど、疑問に思う点も多いでしょう。
また、30度設定とどっちが本当に効果があるのか迷ったり、実施後にカビが生える心配をしたり、試してみても効かない場合の対処法を知りたいという声もよく聞きます。
さらに、ゴキブリ対策としても使えるという話や、臭い取りスプレーとの併用について気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、16度設定でのエアコン臭い取りについて、科学的根拠に基づいた正しいやり方から注意点まで、家電に詳しい立場から分かりやすく解説していきます。失敗や後悔を避けるための重要なポイントも含めて、安全で効果的な実践方法をお伝えします。
16度設定でのエアコンの臭い取りのやり方|基本編

エアコンの臭い取りで16度設定を使う方法について、基本的な知識から実践方法まで詳しく見ていきましょう。
なぜこの温度が効果的なのか、具体的にどのような手順で進めればよいのか、気になる電気代はいくらかかるのかなど、初めて挑戦する方にも分かりやすく解説します。
なぜ16度が効果的?
エアコンから嫌な臭いがするとき、設定温度を16度にする方法が注目されていますね。実は、この方法には科学的な根拠があるんです。
16度設定が効果的な理由は、大量の結露水を発生させることで、エアコン内部の汚れを自然に洗い流すメカニズムにあります。エアコンの熱交換器(アルミフィン)は、冷房運転時に空気を冷やす役割を担っていますが、同時に空気中の水分が急激に冷やされることで結露が発生します。
通常の冷房運転では適度な結露しか起こりませんが、16度という極低温に設定することで、熱交換器やドレンパンに大量の結露水が生まれます。この豊富な水分が、臭いの原因となるカビやホコリ、生活臭の粒子を溶かし込んで、ドレンホースを通じて屋外へ排出してくれるわけです。
つまり、エアコン自身の結露機能を活用した「内部洗浄」とも言える方法なんですね。三菱電機などの一部メーカーでも、カスタマーサービスでこの手法を案内しているほど、効果が認められています。
ただし、この方法は外気温との温度差が重要になります。冬場のように外気温が低い時期には、16度設定でも十分な結露が発生しないため、効果が期待できない点は理解しておきましょう。
やり方と手順
- 雨天時や湿度80%以上の日は水漏れの危険があるため実施を避ける
- 外気温が低い冬場は結露が十分に発生しないため効果が期待できない
- 送風による内部乾燥を省略するとカビ繁殖の原因となる
- ドレンホースが詰まっている場合は事前に確認・清掃を行う
16度設定での臭い取りは、正しい手順で行うことが成功の鍵となります。間違った方法では効果が薄れるだけでなく、エアコンの故障につながる可能性もあるため、注意深く進めてください。
まず、事前準備として部屋の窓を全開にします。これは非常に大切なポイントです。窓を閉めたままだと、エアコンが設定温度に達してしまい、フル稼働状態を維持できません。窓を開けることで、エアコンが常に最大出力で運転し続け、大量の結露を発生させることができます。
次に、エアコンのリモコンで冷房モードを選択し、設定温度を16度にします。エアコンの機種によっては16度まで下がらない場合もありますが、その際は設定可能な最低温度を選んでください。風量は「自動」に設定することをおすすめします。
運転開始後は、そのまま1時間程度待ちます。タイマー機能は使わずに、時計を見ながら手動で管理しましょう。この間、エアコンは懸命に部屋を冷やそうとして大量の結露水を生成し、内部の汚れを洗い流してくれます。
1時間経過したら、いったん冷房を停止し、今度は送風モードに切り替えます。この工程が非常に重要で、30分から1時間程度の送風運転により、エアコン内部に残った水分をしっかりと乾燥させます。湿気が残ったままだと、かえってカビの繁殖を促進してしまう恐れがあります。
最後に窓を閉めて、通常の運転に戻します。作業完了後、多くの方がすぐに臭いの改善を実感できるはずです。
電気代はどれくらいかかる?

臭い取りのために16度設定を1時間続けるとなると、電気代が気になりますよね。実際のところ、思っているほど高額にはならないんです。
電気代の計算式は「消費電力(kW)×使用時間(時間)×電力料金単価(円/kWh)」で求められます。現在の電力料金単価は、一般的に31円/kWhで計算されることが多いです。
具体例を見てみましょう。8畳用のエアコンでは、最大消費電力が約1kWとなります。このエアコンで16度の冷房を1時間運転した場合、約31円の電気代がかかります。一方、18畳用のより大型なエアコンでは最大約2kWの消費電力となるため、1時間で約62円程度の計算になります。
エアコンの対応畳数 | 最大消費電力 | 1時間あたりの電気代 |
---|---|---|
8畳用 | 約1kW | 約31円 |
14畳用 | 約1.5kW | 約47円 |
18畳用 | 約2kW | 約62円 |
また、その後に必要な送風運転については、扇風機並みの消費電力しかかからず、1時間あたり1円以下となります。
つまり、臭い取り作業全体でかかる電気代は、小型エアコンで30円程度、大型エアコンでも70円程度です。この金額で不快な臭いが解消されるなら、十分にコストパフォーマンスが良いと考えられますね。
ただし、これらの数値は最大消費電力での計算です。実際の運転では、エアコンの効率や室内環境によって消費電力が変動するため、参考値として捉えてください。
風量と時間の最適な設定

16度設定での臭い取りを成功させるには、風量と運転時間の設定が非常に重要になります。多くの方が「節電のため」と風量を弱くしがちですが、これは逆効果なんです。
風量については「自動」設定が最も効率的です。ダイキン工業の実験データによると、風量「弱」と「自動」を比較した場合、「自動」の方が約3割も消費電力が少ないという結果が出ています。これは一見矛盾しているように思えますが、理由があります。
風量が弱いと、冷たくなった熱交換器を通過する空気の量が減ってしまい、部屋を冷やすのに時間がかかります。そのため、エアコンの心臓部である圧縮機がより長時間、高負荷で稼働することになり、結果的に電力消費が増えてしまうのです。
一方、「自動」設定では、室温が設定温度に近づくまでは強風で効率よく冷却し、その後は微風に切り替わって無駄な電力消費を避けます。臭い取りの観点でも、強い風量により熱交換器を通過する空気量が増え、より多くの結露水を発生させることができます。
運転時間については、1時間が目安となります。これより短いと十分な結露水が生成されず、効果が限定的になります。逆に長すぎても、追加の効果はそれほど期待できない上、電気代が無駄になってしまいます。
私も家電量販店で働いていて感じるのですが、お客様の中には「強い風量だと電気代が高くなりそう」と心配される方が多いんです。でも実際は、適切な風量設定の方が効率的で経済的なんですね。
その後の処置

16度設定での1時間運転が終わったら、すぐに通常運転に戻してはいけません。その後の処置こそが、臭い取り効果を確実にし、新たなトラブルを防ぐ重要なポイントになります。
最も大切なのは、送風運転による内部乾燥です。冷房運転を停止したら、すぐに送風モードに切り替えて30分から1時間程度運転してください。この工程を省略すると、エアコン内部に大量の水分が残り、かえってカビの繁殖を助長してしまいます。
送風運転中は、エアコン内部のファンが回転し続けることで、熱交換器やドレンパンに付着した水滴を蒸発させます。また、内部の空気を循環させることで、湿度の高い状態を解消し、カビが好む環境を取り除きます。
一部のエアコンには「内部クリーン機能」が搭載されている場合があります。この機能がある場合は、手動での送風運転の代わりに内部クリーンを使用しても構いません。内部クリーン機能は、自動的に最適な時間と方法で内部乾燥を行ってくれます。
送風運転が完了したら、窓を閉めて通常の使用に戻ります。この時点で臭いの改善を確認してみてください。多くの場合、作業前と比べて明らかな違いを感じられるはずです。
ただし、この方法はあくまで応急処置的な効果であることを理解しておきましょう。根本的な解決には、定期的なフィルター清掃や、年1回程度のプロによるエアコンクリーニングが必要です。16度設定での臭い取りは、それらの間のメンテナンスとして活用するのが賢明な使い方と言えるでしょう。
16度設定でのエアコンの臭い取りのやり方|応用編

基本的な方法を理解したら、次は応用的な知識も押さえておきましょう。
他の温度設定との比較や、実施時に気をつけるべきポイント、思わぬ副次効果についても詳しくご紹介します。
より深く理解することで、状況に応じた最適な判断ができるようになります。
30度設定と16度設定のどっちが効果的?
比較項目 | ❄️ 16度冷房 | 🔥 30度暖房 |
---|---|---|
作用メカニズム | 大量の結露水による物理的洗浄 | 高温乾燥によるカビ不活化 |
対象となる臭い | カビ・ホコリ・生活臭全般 | カビ臭に特化 |
適した季節 | 夏場・外気温が高い時期 | 冬場・外気温が低い時期 |
効果の範囲 | 総合的な臭い除去 | カビ対策のみ |
メーカー推奨 | 三菱電機など複数社が案内 | 一部で紹介 |
エアコンの臭い取りには、16度設定のほかに30度設定の暖房を使う方法もあるんです。どちらが効果的なのか、多くの方が疑問に思われるところですね。
30度暖房の仕組みは、16度冷房とは全く異なります。カビの生育最適温度が25~28度であることから、30度の高温状態を作り出してカビの繁殖を抑制し、一部を死滅させることを狙います。暖房をフル稼働させると、吹き出し口から40度以上の熱風が出るため、エアコン内部も乾燥した高温環境になります。
しかし、効果の範囲で比較すると、16度冷房の方が総合的に優れています。16度設定は結露水による物理的な洗浄効果があるため、カビだけでなく、ホコリや生活臭の粒子も一緒に洗い流すことができます。一方、30度暖房はカビに特化した方法で、その他の臭い成分には効果が限定的です。
使い分けの基準は季節と外気温です。夏場や外気温が高い時期には、16度冷房が威力を発揮します。外気との温度差が大きいほど結露量が増え、洗浄効果も高まります。
逆に、冬場や外気温が低い時期には、16度設定でも十分な結露が発生しないため効果が期待できません。この場合は30度暖房を選択するか、暖かい季節まで待つのが現実的です。
ちなみに、両方の方法を組み合わせる「合わせ技」も存在します。まず30度暖房でエアコン内部を乾燥させてカビを不活化し、その後16度冷房で結露による洗浄を行う方法です。時間と電気代はかかりますが、より徹底的な臭い取りが期待できます。
カビが生える心配は?

16度設定での臭い取りを実施する際、「逆にカビが生えやすくなるのでは?」と心配される方も多いでしょう。確かに水分が関わる作業ですから不安に思うのは当然ですね。
実際のところ、正しい手順で行えばカビが増える心配はありません。むしろ既存のカビを洗い流す効果の方が大きいのです。カビの繁殖には湿度65%以上、温度20~30℃の環境が必要ですが、16度設定の間はエアコン内部が極度に冷却されるため、カビの活動が抑制されます。
ただし、作業後の送風乾燥を怠ると、確実にカビの温床となってしまいます。大量の結露水が残ったまま放置すれば、温度が戻った時にカビにとって理想的な環境が整ってしまうからです。
また、実施する環境条件にも注意が必要です。屋外の湿度が80%以上ある雨天時には、この方法を避けてください。外部からの湿気により、エアコン本体の外側にも結露が発生し、下に設置された家具や床を濡らしてしまう危険があります。
逆に、湿度が適度で晴れた日に実施すれば、エアコン内部のカビや雑菌を効果的に除去できます。エアコンのエバポレーターには、運転開始からわずか数分で結露による水滴が発生し、これがカビや細菌の栄養源となっていますが、16度設定による大量の結露水がこれらを一掃してくれるのです。
予防の観点から言えば、16度設定での臭い取りは月1回程度の頻度で実施すると、カビの蓄積を防ぐ効果も期待できます。ただし、これは日常的な清掃の代替ではなく、補完的なメンテナンス方法として位置づけることが大切です。
臭い取りが効かない場合
効果が出ない原因 | 確認・対処方法 |
---|---|
実施条件が不適切 | 窓を開けずに作業・雨天時・外気温が低い日の実施を避ける |
フィルターの目詰まり | フィルターを外して汚れを確認し、必要に応じて清掃する |
ドレンホースの詰まり | 室外機付近のホースから正常に水が排出されているか確認 |
重度のカビ・汚れ | 吹き出し口に黒カビが見える場合はプロのクリーニングが必要 |
頑固な生活臭の蓄積 | タバコ・ペット・調理臭は複数回実施またはプロ依頼を検討 |
16度設定での臭い取りを試しても効果が感じられない場合、いくつかの原因が考えられます。諦める前に、以下のポイントを確認してみてください。
まず、実施条件が適切だったかを振り返ってみましょう。窓を開けずに作業した場合、エアコンが設定温度に到達してしまい、十分な結露が発生していない可能性があります。また、外気温が低い日や湿度の高い日に実施した場合も、期待した効果が得られないことがあります。
次に、エアコンの汚れの程度を考えてみてください。長期間清掃していないエアコンでは、フィルターが目詰まりを起こして空気の流れが悪くなり、結露水の生成や循環が妨げられている可能性があります。フィルターを外して確認し、汚れがひどい場合は清掃してから再度試してみてください。
ドレンホースの詰まりも効果を阻害する要因です。結露水を排出するドレンホースが詰まっていると、汚れた水が正常に流れ出ず、逆流して臭いを拡散させることもあります。室外機付近のドレンホースから正常に水が流れ出ているか確認してみましょう。
エアコン内部の汚れが重度の場合、16度設定だけでは限界があります。特に、吹き出し口を覗いて黒いカビが見える状態では、この方法だけでの改善は困難です。熱交換器やファンに蓄積した汚れは、家庭でできる範囲を超えているからです。
臭いの種類によっても効果に差があります。タバコの煙やペットの臭い、調理臭などが長期間エアコン内部に蓄積している場合、1回の作業では完全な除去は期待できません。これらの頑固な臭いには、複数回の実施や、プロのクリーニングサービスの利用を検討することをおすすめします。
ゴキブリ対策にもなる?

意外に思われるかもしれませんが、16度設定での臭い取りには、ゴキブリ対策としての効果も期待できるんです。これは嬉しい副次効果ですね。
ゴキブリは変温動物で、寒さに非常に弱い特性があります。気温が16度以下になると活動が著しく鈍くなり、さらに低温が続くと生存が困難になります。春や夏にゴキブリを見かけることがあっても、冬には姿を消すのはこのためです。
エアコン内部は、ゴキブリにとって格好の隠れ家になりやすい場所です。適度な温度と湿度、そして外部からの侵入経路があるドレンホース。さらに、フィルターに蓄積したホコリは彼らの餌にもなります。特に暖房を使う冬場には、エアコン内部の温かさを求めて侵入するケースが多いんです。
16度設定での運転により、エアコン内部が極度に冷却されると、潜んでいたゴキブリは寒さに耐えられず、外部へ逃げ出します。また、すでに死んでしまったゴキブリの死骸やフンも、大量の結露水と一緒にドレンホースから排出される効果があります。
ただし、この方法はあくまで予防的な効果であり、根本的なゴキブリ対策にはなりません。エアコンへの侵入を防ぐには、ドレンホースの先端に防虫キャップを取り付けたり、エアコン配管の隙間をパテで塞いだりする物理的な対策が必要です。
また、ゴキブリの完全な駆除には、専用の駆除剤やくん煙剤の使用を併用することをおすすめします。16度設定は、これらの対策と組み合わせることで、より効果的なゴキブリ対策となるでしょう。
臭い取りスプレーの注意点

市販のエアコン用消臭スプレーを併用しようと考える方もいらっしゃるでしょうが、実は注意が必要な点があります。安易に使用すると、かえってトラブルを招く可能性があるんです。
最も重要な注意点は、スプレーに含まれるエタノール成分です。多くの消臭スプレーには殺菌効果を高めるためにエタノールが配合されていますが、この成分がエアコン内部のドレンパンに使われているスチロール素材を溶解させる危険があります。ドレンパンが変形や破損すると、結露水の水漏れを引き起こし、修理が必要になってしまいます。
さらに、スプレーの洗浄液がエアコン内部に残ってしまうリスクもあります。家庭用のスプレーでは、業務用の高圧洗浄機のような強力なすすぎ効果は期待できません。残留した洗浄液は、時間の経過とともにカビの栄養分となり、結果的に悪臭の原因を増やしてしまう可能性があります。
また、ホコリや汚れが洗浄液によって固まり、フィルターやドレンホースの目詰まりを起こすケースもあります。これにより、エアコンの効率が低下したり、水漏れが発生したりする恐れがあります。
化学物質に敏感な方やアレルギー体質の方は、特に注意が必要です。スプレーに含まれる成分により、呼吸器系の症状や皮膚トラブルが発生することがあります。使用する場合は、必ずマスクを着用し、十分な換気を行ってください。
エアコンメーカー各社も、市販の洗浄スプレーの使用については推奨していません。ダイキンやパナソニックなどの公式サイトでは、「誤った洗浄方法は部品の破損や発火の恐れがある」として注意喚起を行っています。
16度設定での臭い取りは、このようなリスクがない安全な方法です。消臭スプレーに頼る前に、まずは自然な結露の力を活用した方法を試してみることをおすすめします。
総括:16度設定でエアコンの臭い取りのやり方
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。