炊飯器を買い替えるとき、「圧力IH」と「IH」のどちらを選ぶべきか迷ったことはありませんか?
店頭で値段を見ると、圧力IHの方が明らかに高価で、「本当に圧力機能にそれだけの価値があるの?」と疑問に思う方も多いはずです。
実際、圧力機能がついた炊飯器は確かにもっちりとした甘みの強いごはんが炊けますが、一方で「壊れやすいのでは?」「お手入れが面倒そう」「べちゃっとして美味しくない」といった不安の声も聞こえてきます。
私は家電量販店で長年働いていますが、この圧力機能についてのご相談は本当によく受けます。
圧力IHで炊いたごはんが「まずい」と感じる方もいれば、「これじゃないとダメ」という方もいて、好みが大きく分かれるんですよね。
玄米や雑穀米をよく食べる方なら圧力機能の恩恵を感じやすいのですが、白米中心で粒立ちの良いしゃっきりとしたごはんがお好みなら、実は圧力なしのIHで十分かもしれません。
この記事では、圧力機能の仕組みから、メリット・デメリット、「壊れやすい」という噂の真相、そして圧力なしのIHでも満足できるケースまで、炊飯器選びで迷っている方の疑問にお答えします。
炊飯器に圧力は本当に必要か?

- 炊飯器の圧力とは?
- 圧力炊飯器のメリットとデメリット
- 壊れやすいって本当?
- 圧力IHのご飯はまずいの?
- 圧力なしのIHで十分という声
まずは、多くの方が疑問に思っている「圧力機能」そのものについて、基本的なところから一緒に見ていきましょう。
圧力の「あり」「なし」で、ごはんの炊きあがりがどう変わるのか、そして「壊れやすい」といった気になる噂についても触れていきますね。
炊飯器の圧力とは?
まず、炊飯器の「圧力」って何をしているか、ご存知ですか?
これは、炊飯中に釜の内部に”文字通り”圧力をかける機能のことなんです。理科の授業を思い出すかもしれませんが、水は圧力がかかると100℃より高い温度で沸騰しますよね。
普通の炊飯器(IHやマイコン)は、基本的に100℃でごはんを炊きます。でも、圧力IH炊飯器は、例えば1.2気圧といった圧力をかけることで、沸点を105℃や110℃以上に引き上げるんです。
100℃を超える高温で一気に炊き上げることで、お米の芯までしっかりと熱が通ります。これによって、お米に含まれるデンプンが「アルファ化(糊化)」しやすくなるんですね。
アルファ化というのは、簡単に言うと、お米がベータデンプン(生の状態)からアルファデンプン(消化しやすく美味しい状態)に変わること。このアルファ化がしっかり進むと、お米の甘みや旨みがグッと引き出されると言われています。
また、高温で炊き上げることでお米が釜の中で激しく対流(おどるように動く)します。これにより炊きムラが少なくなり、一粒一粒が立った、ふっくらとしたごはんに仕上がるんです。
圧力をかけると、ごはんが「もっちり」とした食感になる傾向が強いですね。この食感がお好きな方には、圧力機能はとても魅力的なんじゃないかと思います。
まとめると、炊飯器の圧力機能は、100℃以上の高温調理を実現し、お米の甘みや旨み、もっちり感を引き出すための技術なんですね。
圧力炊飯器のメリットとデメリット
圧力機能がどういうものか分かったところで、次は具体的なメリットとデメリットを整理してみましょう。
| 項目 | 圧力炊飯器(圧力IH) | IH炊飯器(圧力なし) |
|---|---|---|
| 炊きあがり | もっちり、甘みが強い | しゃっきり、粒立ちが良い |
| 冷めたごはん | 美味しい(パサつきにくい) | ややパサつきやすい |
| 玄米・雑穀米 | ◎(ふっくら炊ける) | △(やや硬さが残ることも) |
| 価格帯 | 高め | 手頃~高め |
| お手入れ | 部品がやや多い | 比較的シンプル |
このように、メリットとデメリットは表裏一体です。
ご自身の好みやライフスタイル(お弁当は作るか、玄米は食べるかなど)と照らし合わせて考えるのが良さそうですね。
壊れやすいって本当?
これ、店頭でも時々聞かれるご質問なんです。
「圧力IHって、構造が複雑だから壊れやすいんじゃないの?」って心配になりますよね。
確かに、昔のモデルでは圧力をかけるためのパッキンが消耗しやすかったり、部品が多かったりすることで、故障のリスクがゼロとは言えませんでした。
でも、現在の炊飯器は、技術がすごく進歩しています。
各メーカーとも、耐久性はかなり重視して作られていますし、圧力IHだからといって「特別壊れやすい」ということは、まずないと思っていただいて大丈夫ですよ。
ただし、注意点がひとつあります。
それは、パッキンのお手入れと交換です。
圧力IHは釜を密閉するために、内ぶたにゴム製のパッキンを使っています。このパッキンは消耗品なんですね。使っているうちに少しずつ劣化して、密閉性が弱くなってしまうことがあります。
こんな症状が出たら、パッキンの寿命かもしれません。
パッキンはメーカーから取り寄せて自分で交換できる場合が多いので、説明書を確認してみてくださいね(だいたい3~5年くらいが目安と言われます)。
「壊れやすい」というよりは、「美味しさを保つために、少しだけメンテナンスが必要」と考えるのが正しいかもしれません。
もちろん、これは圧力なしのモデルでも同じことが言えますが、圧力IHは特に密閉性が大事なので、お手入れの際には内ぶたやパッキンの汚れをしっかり落としてあげることが、長持ちさせる秘訣だと思います。
最近のモデルは、お手入れがすごく簡単になっているものも多いですから、選ぶときに「洗いやすいか」もチェックすると良いですね。
圧力IHのご飯はまずいの?

「圧力IHのご飯はまずい」というよりは、「好みに合わなかった」という声が、時々「まずい」という表現になってしまうのかな、と私は思います。
これも店頭でお客様のお話を聞いていると感じることですが、理由は大きく二つあると思います。
一つは、先ほどもお伝えした「食感」です。
圧力IHはどうしても、ごはんの粘りを強く引き出す「もっちり系」の炊きあがりになります。お米屋さんで「あきたこまち」や「ゆめぴりか」を買うような、柔らかくてもちもちした食感が好きな方には、すごく美味しく感じられるはずです。
一方で、例えば「ササニシキ」のような、粒がしっかりしていて粘りが少なく、あっさり・しゃっきりした食感が好きな方にとっては、圧力IHの炊きあがりは「べチャッとしている」「柔らかすぎる」と感じてしまうことがあるんです。
これが「まずい」という感想につながってしまうケースですね。
もし、あなたが「しゃっきり派」なら、無理に圧力IHを選ばなくても、圧力なしのIH炊飯器で高火力のものを選んだ方が、好みに合う美味しいごはんが炊ける可能性も十分ありますよ!
もう一つの理由は、お米との相性です。
例えば、もともと粘りが強い「ミルキークイーン」のようなお米を、圧力IHの「もちもちモード」で炊いてしまうと、粘りが強く出すぎてお餅のようになってしまうことも…。
最近の高級な炊飯器は、「しゃっきり」「ふつう」「もっちり」など、炊き分け機能がすごく充実しています。
もし「圧力IHを買ったけど、柔らかすぎるな」と感じたら、まずは「しゃっきり」モードで炊いてみたり、水の量をほんの少し減らしてみたりすると、ガラッと好みに変わることも多いんです。
「まずい」という評判を心配するよりも、ご自身の好みの食感(もっちり系か、しゃっきり系か)をハッキリさせて、それに合った炊飯器や炊き方を選ぶことが大事だと思います。
圧力なしのIHで十分という声

では、圧力なしのIH炊飯器(普通のIH炊飯器)で十分、という方はどんな方でしょうか?
これもお客様からのお話や、私の周りの友人たちの声を聞くと、いくつかのパターンがあるように思います。
「しゃっきり・粒立ち」のごはんが好き
これは何度も出てきていますが、一番多い理由ですね。カレーやチャーハン、丼ものには、粘りが少なくて粒がほぐれやすい「しゃっきり」したごはんが合います。
お米の粘りよりも、一粒一粒の存在感を大事にしたいという方は、圧力なしのIHがおすすめです。
お手入れは、とにかくシンプルなのが良い
「毎日のことだから、洗うパーツは1個でも少ない方がいい!」という方です。圧力IHに比べて、圧力なしIHは内ぶたの構造がシンプルなモデルが多いのは事実。このお手入れの手軽さを重視する方は、IHで十分満足されていますね。
最近は、圧力IHでもお手入れが簡単な「蒸気ふたレス」のモデルや、洗うのが内ぶたと内釜だけ、というシンプルなモデルも出てきています。お手入れ重視の方は、こういうタイプを選ぶのも良いですね。
コストパフォーマンスを重視したい
「ごはんは普通に美味しく炊ければOK。それよりも初期費用を抑えたい」という堅実な考え方です。圧力機能がない分、同じ「5.5合炊き・IH」という条件でも、価格が手頃になることが多いです。
圧力IHの上位モデル1台分の予算で、そこそこのIH炊飯器と他の小型家電が買えてしまうこともありますからね。
玄米や雑穀米は、ほぼ炊かない
白米を炊くのがメインで、玄米などを炊く習慣がない場合、圧力機能のメリットである「玄米もふっくら」という恩恵を感じにくいです。
もちろんIHでも玄米モードはありますが、白米がメインなら、圧力なしのIHでも十分美味しいごはんは炊けます。
炊き分け機能などをあまり使わない
圧力IHの上位モデルは、「銘柄炊き分け」や「食感炊き分け」など、機能がとても豊富です。でも、「結局いつも早炊きモードしか使わないかも…」という方にとっては、宝の持ち腐れになってしまうかもしれません。
シンプルな操作で炊ければ十分、という方にも圧力なしのIHが向いていますね。
圧力なしのIH炊飯器も最近は火力がすごく強くなっていて、昔のモデルとは比べ物にならないくらい美味しく炊けます。「IHで十分」という選択も、まったく間違いじゃないんですよ。
圧力は炊飯器に必要か迷う方へ

- IHとマイコン炊飯器の違いを比較
- 炊飯器は圧力鍋代わりになる?
- おすすめの圧力IH炊飯器3選
ここまで圧力IHとIHの違いを中心にお話ししてきましたが、炊飯器選びにはもう一つ、「マイコン式」という選択肢もありますよね。また、「圧力」という言葉から「圧力鍋」を連想する方もいらっしゃるかもしれません。
後半は、そうした周辺の疑問や具体的なおすすめ機種についてご紹介しますね。
IHとマイコン炊飯器の違いを比較
炊飯器の加熱方式は、大きく「圧力IH」「IH」「マイコン」の3つに分けられます。
「マイコン炊飯器」は、釜の底にあるヒーターで釜全体を間接的に温める方式です。昔からある一番シンプルなタイプですね。
一方、「IH炊飯器」は、電磁誘導加熱(Induction Heating)の略で、釜自体を直接発熱させる方式です。内釜全体が発熱するので、マイコン式に比べて圧倒的に火力が強く、釜全体をムラなく加熱できるのが特徴です。
そして「圧力IH」は、そのIHの加熱方式に「圧力」機能をプラスした最上位のタイプ、という関係性なんです。
よく「IHとマイコン、どっちがいいの?」と聞かれますが、美味しさを重視するなら、私は断然IH(圧力あり・なし問わず)をおすすめします。
マイコン式は、3合炊きくらいまでの少量炊きなら美味しく炊けますが、5.5合炊きなどでたくさん炊くと、どうしても釜の上と下で炊きムラ(下がべチャッとして上が硬いなど)が出やすいんです。
IHなら、強い火力で釜の中にお米を対流させながら炊くので、5.5合炊きでも一粒一粒までムラなくふっくら炊き上がります。
| 加熱方式 | マイコン | IH(圧力なし) | 圧力IH |
|---|---|---|---|
| 加熱方法 | 釜の底からヒーターで加熱(間接的) | 釜全体が発熱(直接的) | 釜全体が発熱+圧力 |
| 火力 | 弱い | 強い | 非常に強い(高温) |
| 炊きムラ | 出やすい(特に多めに炊いた時) | 出にくい | 出にくい |
| 炊きあがり | ふっくら(柔らかめ) | しゃっきり・粒立ちが良い | もっちり・甘みが強い |
| 価格帯 | 安い | 手頃~高め | 高め |
| おすすめな方 | 一人暮らしで少量炊く方、 予算最優先の方 | しゃっきりごはんが好きな方、 コスパと美味しさを両立したい方 | もっちりごはんが好きな方、 冷めても美味しいごはんを 食べたい方 |
もし、ご予算が許すのであれば、マイコン式よりはIH式を選んだ方が、毎日のごはんの満足度はグッと上がると思います。
一人暮らしの方で、「炊飯器はとにかく安く!」ということであればマイコン式もアリですが、3合炊きのIHモデルも手頃な価格で出ていますから、ぜひ比較検討してみてほしいですね。
炊飯器は圧力鍋代わりになる?
「圧力IH炊飯器」という名前から、「じゃあ、圧力鍋みたいに角煮とかも作れるの?」と期待される方がいらっしゃいます。
これは、基本的には「NO」とお答えしています。
たしかに、最近の炊飯器には「調理モード」や「ケーキモード」が搭載されているものも多く、煮込み料理やサラダチキンなどを作れるレシピもたくさんありますよね。
ですが、これはあくまで炊飯器の「保温」や「炊飯」のプログラムを応用したもので、圧力鍋のように高い圧力をかけて短時間で調理するものではないんです。
圧力IH炊飯器の「圧力」は、あくまで「ごはんを美味しく炊くため」に最適化された圧力(1.05~1.3気圧程度)です。一般的な調理用の圧力鍋(1.4~2.0気圧以上)とは、かかる圧力も目的も全く別物なんですね。
また、メーカーが想定していない使い方(油を多く使う料理や、ルーのように粘度が高いもの)をすると、蒸気口が詰まって故障や事故の原因になる可能性もゼロではありません。
もし調理に使いたい場合は、必ず「調理モード」が搭載されている機種を選び、取扱説明書に載っているレシピの範囲内で楽しむようにしてくださいね。
炊飯器はあくまで「ごはんを炊く専門家」、圧力鍋は「高温高圧で調理する専門家」と、分けて考えていただくのが一番安全で、製品も長持ちすると思います。
ちなみに、最近は「電気圧力鍋」に炊飯機能がついているものもあります。こちらはまさに両方の機能を持っていますが、炊きあがりの美味しさは、やはり炊飯専門の炊飯器に軍配が上がることが多いですね。
おすすめの圧力IH炊飯器3選
「やっぱり、もっちり甘いごはんが食べたいから圧力IHが欲しい!」という方のために、今(2025年現在)特におすすめしたい、人気の圧力IH炊飯器を3つ、ご紹介しますね。どれも各メーカーさんのこだわりが詰まった素晴らしいモデルですよ。
1. 象印マホービン「炎舞炊き」NW-FB10
象印のフラッグシップモデル「炎舞炊き」です。
一番の特徴は、底にあるIHヒーターが複数に分かれていて、部分的に集中加熱できることです。釜の中で激しい対流(炎が舞うような)を起こして、お米をかき混ぜながら炊き上げます。
これにより、炊きムラを極限まで減らし、お米一粒一粒の甘みとハリを最大限に引き出してくれます。「これぞ、かまど炊き!」というような、粒立ちと甘みのバランスが絶妙なごはんに炊き上がりますね。
また、「わが家炊き」モードも人気です。
前回炊いたごはんの感想(硬かった、柔らかかったなど)を入力すると、炊飯器が自動で微調整して、どんどん自分好みの炊き方になっていくんです。賢いですよね!
- とにかくごはんの「甘み」と「ハリ」を追求したい方
- 炊きムラのない、完璧なごはんを目指したい方
- 自分好みの食感を細かく調整したい方
2. タイガー魔法瓶「ご泡火炊き」JRX-T100
タイガーと言えば、「土鍋」へのこだわりが強いメーカーです。この「ご泡火炊き」も、本物の土鍋(本土鍋)を内釜に使っているのが最大の特徴です。
土鍋は蓄熱性が非常に高く、遠赤外線効果でじっくりとお米の芯まで熱を伝えます。
さらに、炊飯時には土鍋ならではの細かくて力強い泡(ご泡火)が発生し、お米を優しく包み込みながら炊き上げるんです。
炊きあがりは、まるでお店で出てくる土鍋ごはん。
香りが高く、粒立ちがしっかりしていながらも、噛むと甘みがじゅわっと広がる感じです。おこげを作るモードも得意ですよ。
見た目も高級感があって、キッチンにあると気分が上がりますね。
- 土鍋で炊いたような香ばしさ、おこげが好きな方
- 粒立ちが良く、噛みごたえのあるごはんが好きな方
- デザイン性や高級感も重視したい方
3. パナソニック「おどり炊き」(スチーム&可変圧力)SR-VSX101
パナソニックの「おどり炊き」は、可変圧力と大火力IHの合わせ技が特徴です。炊飯中に圧力をかけたり抜いたり(加圧・減圧)を繰り返すことで、お米を釜の中で激しく「おどらせ」ます。
これによって、お米がしっかり運動して、一粒一粒がムラなく加熱されます。さらにパナソニック独自の「220℃高温スチーム」が、炊き上がりの最終工程で投入されます。
このスチームが、ごはんの表面をコーティングして、旨みを閉じ込め、ハリとツヤを与えてくれるんです。冷めても美味しいごはんが得意なのは、このスチームのおかげかもしれませんね。
お手入れが簡単な「蒸気ふたレス」構造も、忙しい方には嬉しいポイントです。
- ハリとツヤがあり、冷めても美味しいごはんが食べたい方
- お手入れの手軽さも重視したい方
- 最新の技術が詰まった多機能モデルが好きな方
どの機種も本当に美味しく炊けますが、「甘みとハリの象印」「香りと粒立ちのタイガー」「ツヤともっちり感のパナソニック」といった感じで、少しずつ個性が違います。
ぜひ、ご自身の好みに合わせて選んでみてくださいね。
総括:炊飯器に圧力は必要か
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。



