その精米、まだ「完成形」じゃないかもしれません。
「精米した米をもう一度精米する」という、ちょっと気になるテクニック、試してみたくありませんか?
キッチンで出番を待つ古米の隠れた美味しさを引き出したり、毎日の手間を少しでも減らすために精米した米を無洗米に近づけたり…。そんな期待が膨らみますよね。
でも、良いことばかりではないかも?
「精米しすぎ」によるリスクも気になるところです。
また、便利な家庭用精米機の「再精米モード」は、本当に使えるのでしょうか?
この記事では、精米した米をもう一度精米することのメリット・デメリットから、具体的な方法、注意点まで、あなたの疑問にまるっとお答えします!
精米した米をもう一度精米する影響とは?

精米したお米を、さらにもう一度精米機にかける。この行為がお米にどのような影響を与えるのでしょうか。
味や見た目、栄養価など、気になる変化について見ていきましょう。
精米直後の米はおいしい?
精米したてのお米は、新鮮で美味しいと感じることが多いですよね。
しかし、精米後のお米は時間経過とともに表面から酸化が進み、風味が落ちてしまうことがあります。
特に、保管状態が悪いと「ぬか臭さ」が発生することも。
では、精米した米をもう一度精米(再精米)すると味はどうなるのでしょうか。
再精米は、古くなったお米の酸化した表面部分を軽く削り取ることで、精米したてに近い風味を取り戻す効果が期待できます。いわば「白米のリフレッシュ」です。
ただし、注意点もあります。
精米しすぎると、お米の旨味層まで削ってしまい、かえって味が落ちる可能性も指摘されています。また、再精米によってお米が割れやすくなり、炊き上がりがべちゃっとしてしまうことも考えられます。
再精米が必ずしも味を良くするとは限らず、お米の状態や精米の程度によって結果が変わることを覚えておきましょう。
古米は再精米できる?
「古米」とは、収穫から1年以上経過したお米のことを指すのが一般的です。
古米は、新米に比べて水分量が少なく、酸化が進んでいるため、炊き上がりが硬くなったり、独特の匂いがしたりすることがあります。
このような古米は、再精米できるのでしょうか?
答えは「イエス」です。
古米の表面は酸化によって劣化しています。再精米によってこの劣化した部分を削り取ることで、古米特有の匂いを軽減し、食感を改善する効果が期待できます。
家庭にある金網のザルを使って、お米の表面を軽くこするように研ぐことでも、簡易的な再精米(表面を削る)効果があると言われています。
ただし、先ほどもお伝えしたように、精米しすぎると割れやすくなるなどのデメリットもあります。
また、全ての古米が再精米で劇的においしくなるわけではありません。お米の状態を見ながら試してみるのが良いでしょう。
茶色になる原因
精米したお米の中に、茶色い粒が混じっていることがあります。これは「茶米(ちゃまい)」や「着色粒(ちゃくしょくりゅう)」と呼ばれるもので、いくつかの原因が考えられます。
一つは、稲の生育期間中に籾(もみ)が傷つき、そこから菌が入ることで発生するケースです。
特に、高温や乾燥、倒伏(稲が倒れること)などが原因で稲にストレスがかかると発生しやすくなります。このタイプの茶米は、精米しても色が取れないことが多いです。
また、お米の成熟段階でカメムシなどの虫に吸汁された跡が、斑点状に茶色く残る「斑点米(はんてんまい)」も着色粒の一種です。
これらはお米自体の変色ですが、精米工程で発生した「ヌカの塊」が茶色く見えることもあります。これはお米由来の成分なので健康への影響はありませんが、取り除いてから炊くことが推奨されます。
再精米自体が直接お米を茶色くするわけではありませんが、精米の過程で元々あった茶米や斑点米が目立つようになる可能性は考えられます。
栄養価は下がる?

お米の栄養は、主に胚芽(はいが)と糠(ぬか)層に多く含まれています。
精米は、この胚芽や糠層を取り除く作業ですので、精米度合いが高くなる(より白くなる)ほど、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養価は基本的に低下します。
では、精米した米をもう一度精米すると、栄養価はさらに下がるのでしょうか。
答えは「イエス」です。
再精米は、すでにある程度精米されたお米の表面をさらに削る行為です。そのため、残っていたわずかな糠層や胚芽の一部、旨味層などが削り取られ、栄養価はさらに低下する傾向にあります。
特に、ビタミンB1やビタミンEなどは胚芽に多く含まれているため、再精米によって失われやすい栄養素と言えるでしょう。
一方で、無洗米加工(BG精米製法など)されたお米は、水で研がない分、水溶性のビタミンB1やナイアシンの流出が少なく、通常の白米より多く栄養が残るというデータもあります。
ただし、これは特殊な加工によるものであり、家庭での再精米が同じ効果をもたらすわけではありません。
美味しさや食感を優先するか、栄養価を重視するか、目的に応じて精米度合いを考える必要がありそうです。
精米しすぎで起こること
「お米はしっかり精米した方が美味しい」と思われがちですが、精米しすぎにはデメリットもあります。
最も大きな影響は「お米が割れやすくなる」ことです。
精米しすぎるとお米の粒がもろくなり、砕けたり割れたりしやすくなります。割れたお米が多くなると、炊飯時にでんぷんが溶け出しやすくなり、ご飯がべちゃっとした食感になる原因となります。
また、先ほどもお伝えしたように、精米しすぎると糠層と胚乳の間にある「旨味層」まで削り取ってしまい、お米本来の風味や甘みが損なわれる可能性があります。
さらに、栄養価の低下も無視できません。精米度合いが高まるほど、ビタミンやミネラルなどの栄養素は失われていきます。
美味しく、かつ栄養も考えた場合、過度な精米は避けた方が良いと言えるでしょう。家庭用精米機を使う場合は、好みの分づき(ぶづき)設定を見つけるのも楽しみの一つですね。
精米した米をもう一度精米する際の注意点

古米のリフレッシュなど、メリットも期待できる再精米ですが、行う際にはいくつか注意したい点があります。お米の状態や精米機の種類、使い方によっては、思わぬトラブルにつながる可能性も。
ここからは、安全にそして効果的に再精米を行うためのポイントを確認していきましょう。
精米した米を無洗米に
「無洗米」は、研ぎ洗いの手間が省けて便利なため人気があります。
市販されている無洗米は、主に「BG(ブラン・グラインド)精米製法」や「NTWP(ネオ・テイスティ・ホワイト・プロセス)加工」といった特殊な技術で作られています。
BG精米製法では、精白米の表面に残っている粘着性の高い「肌ヌカ」を、他のヌカの粘着性を利用して取り除きます。NTWP加工では、タピオカで肌ヌカを吸着させて除去します。
では、家庭で精米した米をもう一度精米すれば、無洗米のようにできるのでしょうか?
家庭用精米機の中には「無洗米モード」を備えた機種もあります。これは、通常の白米コースよりもさらに精米度を高めたり、特殊な方法で肌ヌカをある程度除去したりする機能と考えられます。これにより、研ぎ洗いの回数を減らしたり、軽くすすぐだけで炊飯できる状態に近づけることは可能です。
しかし、市販の無洗米と同レベルまで完全に肌ヌカを除去できるわけではない場合が多いようです。
家庭での再精米は、あくまで「無洗米に近い状態にする」または「研ぎ洗いを楽にする」程度と考えるのが良いかもしれません。
「再精米モード」とは?
最近の家庭用精米機には、「再精米モード」や「白米リフレッシュモード」、「みがき米モード」といった名称の機能が搭載されていることがあります。これらは、どのような機能なのでしょうか。
これらのモードは、主に「古くなった白米」を対象としています。
精米してから時間が経ち、表面が酸化してしまった白米を、再度軽く精米することで、酸化した層を取り除き、精米したてに近い風味や香りを取り戻すことを目的とした機能です。
通常の精米コース(玄米から白米へなど)とは異なり、すでにある程度精米されている白米を、さらに優しく、短時間で磨き上げるようなイメージです。機種によっては、精米時の温度上昇を抑える工夫がされているものもあります。
古米や、精米してから少し時間が経ってしまったお米の味を蘇らせたい場合に便利な機能と言えるでしょう。
ただし、このモードを使っても、完全に新米のような状態に戻るわけではありません。あくまで、風味を改善するための一つの手段と捉えるのが良さそうです。
再精米によるリスク

精米したお米をもう一度精米する際には、いくつかリスクも伴います。特に注意したいのが「お米の割れ」と「精米機の故障」です。
すでにお伝えしている通り、精米されたお米は玄米に比べて強度が落ちています。そのため、再精米を行うと、衝撃や摩擦によってお米が割れやすくなります。
特に、古いお米や乾燥しすぎているお米は、より割れやすい傾向にあります。割れたお米が増えると、炊き上がりの食感が悪くなる可能性があります。
また、割れたお米や、再精米によって細かくなったヌカが精米機の内部に詰まり、故障の原因となることもあります。メーカーによっては、お米の割れや機械の詰まり・故障につながる恐れがあるため、白米の再精米を推奨していない場合や、特定のモード以外での再精米を禁止している場合があります。
家庭用精米機で再精米を行う場合は、必ず取扱説明書を確認し、推奨されているモードや方法を守ることが重要です。また、一度に大量のお米を再精米したり、何度も繰り返し精米したりすることは避けた方が賢明でしょう。
石が混入?再精米時の確認点
お米の中に石などの異物が混入していることは稀ですが、可能性はゼロではありません。
石は、主に田んぼでの収穫時に混入することが考えられます。通常は、精米工場での選別工程(石抜き機など)で取り除かれますが、ごくまれに残ってしまうことがあります。
家庭で玄米を購入し、家庭用精米機で精米する場合、精米前に異物がないか確認することが大切です。
では、再精米時に特に石の混入を心配する必要はあるのでしょうか?
もちろん、再精米自体が石を発生させることはありません。しかし、もし元の白米に石が混入していた場合、再精米の工程でも取り除かれることは基本的にありません。
むしろ、精米機の種類や構造によっては、石のような硬い異物が混入していると、精米機の刃や内部を傷つけ、故障の原因になる可能性も考えられます。
再精米を行うかどうかにかかわらず、お米を研ぐ際には異物が混入していないか、念のため確認する習慣をつけると安心ですね。
コイン精米機での再精米は可能か

コイン精米機は、玄米を一度にたくさん精米したい場合に便利です。
では、このコイン精米機を使って、一度精米した白米を再精米することはできるのでしょうか?
結論から言うと、多くのコイン精米機では「白米の再精米はできない」または「推奨されていない」場合がほとんどです。
その理由として、多くのメーカーが「お米の割れによる機械の詰まり・故障につながる恐れがあるため」としています。
コイン精米機は不特定多数の人が利用するため、家庭用精米機以上に故障のリスク管理が重要になります。そのため、籾(もみ)の精米や白米の再精米は禁止されていることが多いのです。
ただし、一部のコイン精米機には「白米リフレッシュ機能」など、古米の再精米に対応したモードが搭載されている場合もあります。
もしコイン精米機での再精米を検討する場合は、必ずその精米機の表示や説明書きを確認し、対応しているかどうか、利用方法などをよく確かめるようにしましょう。
無断で対応していないモードを使用するのは絶対に避けてくださいね。
再精米に適したお米の状態とは
再精米を行う場合、どのような状態のお米が適しているのでしょうか。
まず考えられるのは「精米してから時間が経過し、表面が酸化してしまったお米」です。いわゆる古米や、精米後しばらく保管していた白米などが該当します。これらの表面の劣化した部分を削り取ることで、風味の改善が期待できます。
ただし、お米の状態には注意が必要です。極端に乾燥しているお米や、逆に湿気を含んでしまっているお米は、再精米によって割れやすくなる可能性があります。特に湿気ている場合は、精米機の内部でお米が滑りにくくなり、詰まりや故障の原因になることもあります。もしお米が湿気ていると感じる場合は、再精米の前に風通しの良い日陰で乾燥させるなどの対策が必要かもしれません。
また、先ほどもお伝えした通り、何度も繰り返し再精米を行うと、お米が割れやすくなるだけでなく、栄養価や旨味も損なわれていきます。
再精米は、あくまで「風味の改善」を目的とし、お米の状態をよく確認した上で、必要最低限の回数に留めるのが良いでしょう。家庭用精米機を使用する場合は、取扱説明書に従い、「再精米モード」など適切なモードを選ぶことが大切です。
総括:精米した米をもう一度精米する際のポイント
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。