家庭から出る生ゴミ、捨てるだけだと思っていませんか?
実は、少しの手間でおいしい野菜やきれいな花を育てるための栄養満点な肥料に変身させることができるのです。
この記事では、「生ゴミ処理機を使った肥料の作り方」はもちろん、「そもそも肥料は作れるの?」という疑問から、牛乳パックやバケツ、ダンボールを使ったコンポストの基本的な方法、さらには便利なバイオ式処理機の活用、そして気になる堆肥化の際の注意点や問題点まで、幅広く解説していきます。
生ゴミを資源として活かす、環境にもお財布にも優しい暮らしを始めてみませんか?
家庭で実践!生ゴミ処理機での肥料作り方

ここでは、生ゴミ処理機を使わない、より手軽に始められる方法を中心に、家庭で生ゴミを肥料に変える様々なアプローチを紹介します。
特別な機械がなくても、アイデア次第で生ゴミは立派な資源になりますよ。
そもそも生ゴミから肥料は作れる?
はい、作れます。
生ゴミは野菜くずや果物の皮など、もともと植物だったものが多く含まれています。これらは微生物の働きによって分解されることで、植物が育つために必要な栄養素を豊富に含んだ堆肥、つまり肥料に変わるのです。
ただし、生ゴミをそのまま土に混ぜただけでは、分解がうまくいかなかったり、害虫や悪臭の原因になったりすることがあります。適切な方法で「堆肥化」というプロセスを経ることで、安全で質の高い肥料を作ることが可能です。家庭で出る生ゴミを減らすだけでなく、ガーデニングや家庭菜園に活かせる肥料が手に入るのは嬉しいポイントですね。
牛乳パックを使った簡単な堆肥作り
牛乳パックは、手軽に堆肥作りに挑戦できる便利なアイテムです。コンパクトなので、ベランダなど限られたスペースでも実践できます。
洗って乾かした牛乳パックと園芸用の土を用意する。(古い土でもOK)
「土 → 水気を切った生ゴミ → 土」の順で層にする。野菜くず、果物の皮、茶殻などが◎。
肉、魚、油物、塩分が多いものは分解しにくく悪臭の原因になるため避ける。
パックがいっぱいになるまで層を重ね、最後に土を多めにかぶせて生ゴミを隠す。
口は洗濯ばさみ等で軽く閉じ、空気穴を確保。雨の当たらない日当たりの良い場所へ。
週1〜2回、菜箸などで軽く混ぜて空気を入れると微生物が活発になり分解促進!
生ゴミ投入をやめて1〜2ヶ月。黒っぽくサラサラな土になれば熟成完了!
栄養満点の堆肥が完成!ガーデニングや家庭菜園に。
栄養価が高いので、堆肥1:元の土3〜5の割合で混ぜて薄めて使う。
まず、よく洗って乾かした牛乳パックを用意します。パックの中に、園芸用の土(古い土でも可)を少量入れ、その上に水気をよく切った生ゴミを入れます。生ゴミの種類は、野菜くずや果物の皮、お茶がら、コーヒーかすなどが適しています。肉や魚、油分の多いもの、塩分の強いものは分解しにくく、悪臭の原因にもなるため避けましょう。
生ゴミを入れたら、上からまた土をかぶせます。これを「土→生ゴミ→土」とサンドイッチのように繰り返し、パックがいっぱいになるまで続けます。最後に土を多めにかぶせて、生ゴミが見えないようにするのがポイントです。
パックの口は、洗濯ばさみなどで軽く閉じておきます。完全に密閉せず、少し空気の通り道を作っておくのがコツです。これを雨の当たらない、日当たりの良い場所に置きます。時々(1週間に1〜2回程度)、菜箸などで中身を軽くかき混ぜて空気を入れると、微生物の活動が活発になり、分解が促進されます。
生ゴミの投入をやめてから1〜2ヶ月ほど熟成させ、土が黒っぽく、サラサラの状態になったら完成です。できた堆肥は栄養価が高いので、使う際は元の土と混ぜて(堆肥1に対して土3〜5程度)薄めてから使用しましょう。
ダンボールコンポストの始め方と使い方
ダンボールコンポストは、比較的簡単に始められ、ある程度の量の生ゴミを処理できる方法です。
用意するものは、丈夫なダンボール箱(みかん箱程度の大きさ)、ピートモスとくん炭(ホームセンターなどで購入可能)、ダンボール箱の底に敷くための一回り小さいダンボール板、箱全体を覆える布、そして箱を置くための台(レンガやブロックなど)です。
丈夫な箱の底を補強する。(内側にもう一枚敷く)
ピートモスとくん炭を「3:2」の割合で入れ、よく混ぜる。
風通しが良く雨が当たらない軒下など。レンガ等の台の上に置く。
水気を切った生ゴミ(1日500g〜1kg目安)を投入。細かく切ると◎。
投入の都度、基材とよく混ぜ、虫除けに布で覆う。
毎日でなくてOK。2〜3日に1回、空気を入れるように混ぜる。
2〜3週間で温度上昇(40〜60℃)が分解のサイン。上がらない場合は米ぬか等を投入。
約3ヶ月投入後、投入をやめて1ヶ月熟成。週1〜2回混ぜる。
基材が黒っぽくサラサラになったら完成!土と混ぜて使おう。
まず、ダンボール箱の底が抜けないように、内側にもう一枚ダンボール板を敷いて補強します。次に、ピートモスとくん炭を「3:2」の割合(例えばピートモス30リットル、くん炭20リットル)で箱に入れ、よくかき混ぜます。これが生ゴミを分解する微生物の住処となる「基材」です。
設置場所は、風通しが良く、雨の当たらない軒下などが適しています。地面に直接置かず、レンガなどの台の上に置いて、ダンボールの底が湿気ないようにしましょう。
使い方は、水気をよく切った生ゴミを1日500g〜1kg程度を目安に投入し、その都度、基材とよくかき混ぜます。生ゴミは細かく切ると分解が早まります。全体を混ぜたら、虫が入らないように上から布を被せておきます。毎日かき混ぜる必要はありませんが、2〜3日に1回程度、全体に空気を行き渡らせるように混ぜると良いでしょう。
投入開始から2〜3週間ほどで、微生物の活動により基材の温度が上がってきます(40〜60℃程度)。これが順調に分解が進んでいるサインです。温度が上がらない場合は、米ぬかや油かすを少量加えると微生物の活動が活発になります。
約3ヶ月間生ゴミの投入と撹拌を続けたら、その後は投入をやめて熟成期間に入ります。週に1〜2回程度かき混ぜながら、1ヶ月ほど置きます。基材が黒っぽくなり、元の生ゴミの形がなくなってサラサラになったら堆肥の完成です。
バケツを使った堆肥の作り方とは?

密閉できる蓋付きのバケツを使った堆肥作りは、「生ゴミ発酵堆肥」や「ぼかし堆肥」とも呼ばれ、特に集合住宅のベランダなどでも取り組みやすい方法です。
用意するものは、蓋がしっかりと閉まるバケツ(10〜20リットル程度)、生ゴミの発酵を促進する「ぼかし肥料」または「EM菌」などの発酵促進剤(ホームセンターや園芸店で購入可能)、そして水気を切った生ゴミです。底に蛇口が付いている専用のコンポスト容器を使うと、発酵過程で出る液体(液肥)を取り出しやすくて便利です。
まず、バケツの底に発酵促進剤を薄く振りかけます。その上に、水気をよく切った生ゴミを入れます。生ゴミを入れたら、上からまた発酵促進剤を振りかけます。これを繰り返し、バケツがいっぱいになるまで続けます。生ゴミはためずに、こまめに入れるのがポイントです。
一層ごとに、手や押し蓋などで軽く押さえて、空気を抜くようにすると発酵が進みやすくなります。バケツがいっぱいになったら、最後に発酵促進剤を多めに振りかけ、蓋をしっかりと閉めて密閉します。
これを日陰の涼しい場所に置き、1〜2週間ほど発酵させます(一次発酵)。この間、底に液体が溜まってきたら、液肥として利用できます。液肥は水で500〜1000倍に薄めて、水やりと同じように植物に与えます。
一次発酵が終わった段階では、まだ生ゴミの形が残っています。これを土と混ぜて、さらに分解を進める必要があります(二次発酵)。プランターや畑の土に穴を掘り、一次発酵が終わった生ゴミを入れて土とよく混ぜ合わせます。上から土を多めにかぶせて、2〜4週間ほど置くと、完全に分解されて堆肥として使えるようになります。
ミミズコンポスト(Vermicomposting)の紹介

ミミズコンポストは、シマミミズなどの特定の種類のミミズの力を借りて生ゴミを分解し、良質な堆肥を作る方法です。ミミズが食べた生ゴミは、栄養豊富なフン(ミミズ堆肥)として排出されます。
始めるには、ミミズコンポスト専用の容器(市販品もありますが、プラスチックの衣装ケースなどで自作も可能)、ミミズ(釣具店やオンラインで購入できるシマミミズが一般的)、そしてミミズの住処となる床材(ココナッツ繊維、腐葉土、細かく裂いた新聞紙など)が必要です。
容器の底には、水はけと通気のための穴をいくつか開けておきます。底にまず湿らせた床材を10〜15cmほどの厚さに敷き詰めます。そこにミミズを入れ、環境に慣れるまで数日間そっとしておきます。
ミミズが落ち着いたら、生ゴミの投入を開始します。最初は少量から始め、ミミズが食べる量に合わせて徐々に増やしていきます。生ゴミは細かく刻み、床材の中に浅く埋めるように入れます。一度に大量に入れたり、表面に置いたままにしたりすると、腐敗や臭いの原因になることがあります。
ミミズは野菜くずや果物の皮、コーヒーかす、お茶がらなどを好みますが、肉類、乳製品、油分の多いもの、柑橘類の皮(少量なら可)、玉ねぎなどは避けた方が良いとされています。
床材の湿度は、固く絞ったスポンジ程度に保つのが理想です。乾燥しすぎたら霧吹きで水をかけ、湿りすぎている場合は乾いた新聞紙などを加えて調整します。
数ヶ月経つと、ミミズのフン(黒くてポロポロした土のようなもの)が溜まってきます。これがミミズ堆肥です。容器がいっぱいになったら、堆肥の収穫を行います。容器の片側に生ゴミの投入を集中させると、ミミズがそちらに移動するので、反対側の堆肥を収穫しやすくなります。収穫した堆肥は、そのまま、または土と混ぜて利用できます。
生ゴミ処理機での肥料の作り方と注意点

ここからは、生ゴミ処理機を使った肥料作りに焦点を当てます。処理機にはいくつかのタイプがあり、それぞれ特徴や使い方が異なります。
メリットだけでなく、注意点も理解して、ご自身のライフスタイルに合った方法を選びましょう。
バイオ式生ゴミ処理機での堆肥化プロセス
バイオ式生ゴミ処理機は、微生物の力を利用して生ゴミを分解・堆肥化するタイプの処理機です。多くの場合、専用の「基材(バイオチップなど)」を使用し、微生物が活動しやすい環境を機械内部で維持します。
使い方は比較的簡単で、日常的に出る生ゴミ(水気を切ったもの)を処理機に投入するだけです。投入できる生ゴミの種類や量、一度に投入できる頻度は機種によって異なりますので、取扱説明書をよく確認しましょう。
一般的に、野菜くず、果物の皮、ご飯、麺類、少量のお肉やお魚などは投入できますが、大きな骨や貝殻、多量の油、アルコール類などは投入できないことが多いです。
処理機内部では、微生物が活動しやすいように、温度調整や撹拌が自動で行われます。生ゴミは微生物によって分解され、数時間から数日で量が減り、堆肥化が進みます。
定期的に、分解された生成物(堆肥)を取り出す必要があります。取り出した堆肥は、そのまま肥料として使える場合もありますが、多くの場合、栄養価が非常に高いため、土と混ぜて(例えば堆肥1に対して土10〜20程度)薄めたり、数週間〜数ヶ月ほど寝かせて「熟成」させたりしてから使用することが推奨されています。熟成させることで、肥料としての効果が安定し、植物の根を傷めるリスクを減らすことができます。
バイオ式のメリットは、生ゴミを投入するだけで比較的短時間で堆肥ができる点ですが、基材の交換や補充が必要なこと、電気代がかかること、設置スペースが必要なことなどがデメリットとして挙げられます。
乾燥式生ゴミ処理機での肥料作りプロセス
乾燥式生ゴミ処理機は、温風などを使って生ゴミの水分を飛ばし、乾燥させることで容量を大幅に減らすタイプの処理機です。パリパリに乾燥させることで、腐敗や悪臭の発生を抑え、ゴミ出しの手間を軽減します。
使い方は、水気を切った生ゴミを処理機に入れ、スイッチを押すだけです。数時間で生ゴミは乾燥され、カサカサの状態になります。投入できるものはバイオ式と同様、機種によりますが、一般的に野菜くず、果物の皮、ご飯、麺類、肉、魚などが可能です。大きな骨や貝殻、多量の油などは避けた方が良いでしょう。
乾燥させただけでは、厳密には「堆肥」ではありません。乾燥処理物は、有機物は豊富に含んでいますが、微生物による分解は進んでいない状態です。これを肥料として使うためには、土の中に埋めて、時間をかけて土壌中の微生物に分解させる(堆肥化させる)必要があります。
庭やプランターの土に穴を掘り、乾燥処理物を入れて土と混ぜ合わせ、上から土をかぶせます。完全に堆肥化するまでには数ヶ月から半年程度の時間が必要です。
乾燥式のメリットは、操作が簡単で、生ゴミの量を大幅に減らせること、悪臭や虫の発生が少ないことです。一方、デメリットとしては、電気代がかかること、処理機本体が比較的高価な場合があること、そして乾燥させただけでは肥料にならず、土に埋めて時間を置く必要がある点が挙げられます。ただし、乾燥処理物を土壌改良材としてそのまま土に混ぜ込む使い方もあります。
生ゴミ堆肥化の一般的な問題点と対策
生ゴミの堆肥化は、環境に優しく有益な取り組みですが、いくつかの問題点が発生することもあります。主な問題とその対策を知っておきましょう。
悪臭がする…
水分が多すぎ /
空気不足 / 肉・魚の入れすぎ など
生ゴミの水気をよく切る
よくかき混ぜて空気を入れる
油分・肉・魚は控えるか少量に
米ぬか・くん炭・
コーヒーかす等を混ぜる
虫がわいてしまった…
生ゴミが表面に出ている /
糖分の多い果物の皮 など
生ゴミは必ず土や基材で覆う
容器に細かいネットや布を被せる
糖分の多いものは深く埋める
- ※アブの幼虫は分解を助ける益虫でもある
分解が遅い気がする…
水分不足 /
温度が低い /
生ゴミが大きい / 栄養不足 など
適度な水分を保つ (霧吹き等)
日当たりの良い場所に置く (冬場)
生ゴミを細かく切る
米ぬか・油かす等を加えて栄養補給
カビが生えてきた…
水分が多すぎ /
空気不足 など
よくかき混ぜて空気を通す
水分量を調整する
- ※白いカビは分解が進んでいるサインの場合も
これらの問題は、適切な管理を行うことで多くの場合解決できます。堆肥の状態をよく観察し、早めに対処することが大切です。
できた肥料を使う際の注意点と希釈方法

生ゴミから作った堆肥は、栄養が豊富に含まれているため、使い方には少し注意が必要です。特に、未熟な堆肥や濃度の高い堆肥をそのまま使うと、植物の根を傷めたり、生育障害(肥料焼け)を引き起こしたりする可能性があります。
まず、完成した堆肥が十分に熟成しているかを確認します。元の生ゴミの形がなくなり、黒っぽくサラサラとした土のような状態になっていれば、熟成が進んでいるサインです。まだ生ゴミの形が残っていたり、アンモニア臭がしたりする場合は、もう少し熟成期間を置きましょう。
使用する際は、必ず土と混ぜて薄めてから使うのが基本です。特にプランターなどで使用する場合、堆肥の割合が多すぎると水はけが悪くなったり、肥料濃度が高くなりすぎたりします。一般的には、堆肥1に対して、元の土を3〜10程度の割合で混ぜて使用します。混ぜる割合は、堆肥の種類(生ゴミ処理機で作ったものか、コンポストかなど)や、育てる植物の種類によって調整してください。
畑で使用する場合は、植え付けの2週間〜1ヶ月ほど前に土に混ぜ込んでおくと、土とよく馴染み、肥料成分が安定します。
バイオ式生ゴミ処理機などで作られた堆肥は、特に栄養価が高い場合があるので、製品の取扱説明書に記載されている推奨希釈倍率や使用方法をよく確認することが重要です。
堆肥化できる生ゴミ・できない生ゴミ一覧
堆肥作りに適した生ゴミと、避けた方が良い生ゴミがあります。これを理解しておくことで、分解をスムーズに進め、質の良い堆肥を作ることができます。
これらは一般的な目安です。堆肥化の方法(コンポストの種類や処理機)によって、投入できるものが異なる場合があるため、それぞれの方法の指示に従うことが大切です。
発酵で出る液体肥料の活用方法

密閉式のコンポスト容器(バケツ型など)で生ゴミを発酵させる過程では、「液肥(えきひ)」と呼ばれる液体が発生します。これは、生ゴミから溶け出した水分と栄養分が混ざり合ったもので、植物にとって valuable な液体肥料として活用できます。
この液肥は、窒素やカリウムなどの栄養素を含んでいますが、そのままでは濃度が高すぎるため、必ず水で薄めてから使用する必要があります。薄める倍率は、一般的に500倍から1000倍程度が目安です。例えば、ペットボトル(500ml)の水に対して、液肥をキャップ1杯(約5ml)程度混ぜるくらいです。植物の種類や生育状況によって適切な濃度は異なりますので、最初は薄めから試してみると良いでしょう。
薄めた液肥は、水やりと同じように、植物の根元に与えます。頻度は、週に1〜2回程度が目安ですが、これも植物の状態を見ながら調整してください。特に、野菜や花の生育期に与えると、成長を助ける効果が期待できます。
ただし、液肥は保存がききません。発生したら、なるべく早めに使い切るようにしましょう。また、独特の臭いがすることがありますが、これは発酵によるもので、通常は問題ありません。もし強い腐敗臭がする場合は、生ゴミの投入内容や管理方法に問題があった可能性も考えられます。
液肥は、排水溝に流すと環境負荷になる可能性があるため、薄めて植物に与えるか、土に撒くなどして活用するのがおすすめです。
総括:生ゴミ処理機を使った肥料作り
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。