愛車の輝きをいつまでも保ちたい、そう願う方は多いのではないでしょうか。高圧洗浄機を使った洗車やプロによるコーティングは、そのための有効な手段として注目されています。
しかし、「ガラスコーティングって高圧洗浄機で剥がれるんじゃないの?」といった疑問や不安を感じることもあるでしょう。
高圧洗浄機はその威力から、使い方を間違えるとコーティングや塗装を傷めてしまう可能性もゼロではありません。また、せっかく施工したコーティングの効果を長持ちさせるための洗車方法にも、いくつかポイントがあります。
この記事では、高圧洗浄機を使った洗車とコーティングに関する基礎知識から、よくある疑問まで、幅広く解説していきます。正しい知識を身につけて、大切な愛車をいつまでも美しく保ちましょう。
高圧洗浄機での洗車とコーティング|基礎知識

ここでは、コーティングが施された車に対して高圧洗浄機を使用する際の基本的な考え方や、高圧洗浄機自体の適切な使い方、そしてコーティングの種類による注意点の違いなど、知っておくべき基礎知識を解説します。
正しい知識を持つことが、愛車を安全かつ効果的にケアする第一歩となります。
コーティング車に高圧洗浄機は使える?
結論から言うと、適切に使用すればコーティング車に高圧洗浄機を使用することは可能です。
特に、専門店で施工されるような高品質なガラスコーティングやセラミックコーティングは、耐久性が高いため、一般的な家庭用高圧洗浄機の水圧であれば問題ないことが多いです。
ただし、いくつか注意点があります。
まず、コーティング施工直後は被膜が完全に硬化していない可能性があるため、最低でも1週間、できれば1ヶ月程度は高圧洗浄機の使用を避けるのが無難です。施工店に確認するのが最も確実でしょう。
また、高圧洗浄機の水圧が高すぎたり、ノズルをボディに近づけすぎたりすると、いくら耐久性の高いコーティングでもダメージを受ける可能性があります。特に、塗装に傷や劣化がある場合は、そこからコーティングが剥がれてしまうリスクも考えられます。
高圧洗浄機はあくまで洗車を効率化するツールの一つです。
コーティング車の場合、軽い汚れなら水洗いだけでも落ちやすいですし、シャンプーを使えばよりきれいに洗浄できます。高圧洗浄機は、手洗い洗車の補助的な役割として、適切な使い方を心がけることが大切です。
ガラスコーティングは高圧洗浄で剥がれる?
多くの方が心配される点ですが、適切に施工され、完全に硬化した高品質なガラスコーティングであれば、家庭用高圧洗浄機の適切な使用で簡単に剥がれてしまうことは基本的にありません。
ガラスコーティングは塗装面に強力に定着し、硬い被膜を形成するため、物理的な耐性が高いのが特徴です。
しかし、絶対に剥がれないわけではありません。
以下のようなケースでは注意が必要です。
簡易的なコーティング剤(スプレータイプなど)や、油脂系のワックスなどは、ガラスコーティングに比べて耐久性が劣るため、高圧洗浄機の使用で剥がれたり、効果が薄れたりする可能性が高くなります。
心配な場合は、まず目立たない場所で試してみるか、施工店に相談することをおすすめします。
適切な使い方と水圧
高圧洗浄機を安全かつ効果的に洗車に使うためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
特に水圧、ノズル、距離の3点が重要です。
一般的な家庭用高圧洗浄機の水圧範囲です。高すぎる圧力は塗装やコーティングを傷めるリスクがあります。
広角ノズルを使用すると水圧が分散されるため塗装面への負担が軽減されます。角度が狭いほど水圧は集中し、洗浄力は高まりますがダメージリスクも増大します。
ノズルをボディに近づけすぎると、水圧が集中しすぎてダメージの原因となります。できれば50cm〜1m程度離して噴射するのが安全です。
車全体を水で均一に濡らし、表面に付着した砂やホコリを流します。この段階で大まかな汚れを落とすことで、後のシャンプー洗車時に細かい砂などで傷がつくリスクを軽減できます。
フォームガンや専用のアタッチメントを使用して、カーシャンプーを車全体に均一に塗布します。フォームが汚れを浮かせ、洗浄効果を高めます。
適切な距離(30〜50cm)とノズル角度(25〜40度)を保ちながら、シャンプーを丁寧に洗い流します。上から下へと順に進め、すべてのシャンプーが完全に流れるまで洗浄を続けます。
マイクロファイバータオルを使って、車体に残った水分をしっかりと拭き取ります。乾いた清潔なタオルを使用し、優しく拭くことで水垢の発生を防ぎます。
コーティングの種類と高圧洗浄機の相性
車のコーティングには様々な種類があり、それぞれ耐久性や特性が異なります。
そのため、高圧洗浄機との相性も一概には言えません。
現在主流の高品質コーティングで、硬い被膜を形成します。適切に施工・硬化されていれば、正しい方法で高圧洗浄機を使用しても問題ありません。むしろ、予洗いで砂埃を効率的に除去できるため、洗車傷リスクを低減できるメリットもあります。
ガラスコーティングよりもガラス成分の含有量が少ない、あるいは構造が異なるコーティングです。製品によって耐久性は様々ですが、一般的にはガラスコーティングよりはやや耐久性が劣る可能性があります。高圧洗浄機の使用は可能ですが、より慎重に行うことをおすすめします。
高分子重合体(ポリマー)を主成分とするコーティングです。ガラス系に比べると被膜が柔らかく、熱や紫外線による劣化もやや早い傾向があります。高圧洗浄機の使用自体は可能ですが、強い水圧や近距離での噴射は被膜へのダメージにつながりやすいため、注意が必要です。
ロウを主成分とする、最も古くからあるタイプのコーティングです。艶出し効果は高いですが、被膜が柔らかく、熱や雨で流れ落ちやすいため、耐久性は高くありません。高圧洗浄機の水圧で剥がれたり、効果が大幅に低下したりする可能性が最も高いタイプです。ワックス施工車への高圧洗浄機の使用は、あまり推奨されません。
施工が簡単な反面、耐久性は本格的なコーティングに比べて劣ります。高圧洗浄機の使用で効果が薄れる可能性が高いため、製品の指示に従うか、使用を控えるのが無難です。簡易コーティングは頻繁に塗り直すことを前提としており、高圧洗浄後は再施工が必要になることが多いでしょう。
どのコーティングであっても、施工直後の使用は避け、完全に硬化してから、適切な方法で使用することが重要です。不明な点は、施工店や製品メーカーに確認しましょう。
高圧洗浄機での洗車とコーティング|疑問解決

ここからは、高圧洗浄機やコーティングに関して、多くの方が抱える具体的な疑問について掘り下げていきます。
「コイン洗車場って使っていいの?」「洗車ってどのくらいの頻度ですればいいの?」といった、日々のカーケアで気になるポイントを解消していきましょう。
コーティング車はコイン洗車場を利用できる?
コーティング施工済みの車でも、コイン洗車場を利用すること自体は可能です。ただし、利用する際にはいくつかの注意点があります。
最も注意したいのは、洗車機の「ブラシ」です。
多くのコイン洗車場に設置されている自動洗車機は、回転するブラシで車体を洗浄します。このブラシが、コーティング被膜や塗装面に細かい洗車傷(スクラッチ傷)を付けてしまう可能性があります。
特に、ブラシ自体が汚れていたり、硬い素材だったりすると、傷のリスクは高まります。コーティング施工車の場合、この洗車傷によって光沢が失われたり、撥水性能が低下したりすることが懸念されます。
そのため、コーティング車でコイン洗車場を利用する場合は、以下の点を考慮すると良いでしょう。
高圧の水流だけで汚れを落とすタイプの洗車機です。ブラシが使われないため、洗車機による傷のリスクがなく、コーティング施工車に最も適した洗車方法と言えます。
- 設置されている洗車場は比較的少ないため、事前に調べておくと良いでしょう
- 「タッチレス洗車」「ノンコンタクト洗車」などの名称で提供されていることもあります
- 撥水コートなどのオプションは、施工済みのコーティングと干渉する可能性があるため、基本コースのみを選択しましょう
多くのコイン洗車場には、高圧洗浄機が設置された手洗い用のスペースがあります。自分で持参した道具(バケツ、シャンプー、スポンジ、拭き取りクロスなど)を使って洗車するのが、コーティングにとって最も優しい方法です。
- 高圧洗浄機は予洗い(砂や汚れの除去)とシャンプーのすすぎに活用しましょう
- 柔らかいマイクロファイバースポンジやウォッシュミットを使用するとコーティングを傷めにくいです
- カーシャンプーは中性で、コーティング対応のものを選びましょう
- 洗車後は柔らかいマイクロファイバークロスでしっかり水分を拭き取ることが大切です
どうしても自動洗車機を利用したい場合は、「ソフトブラシ」や「布ブラシ」など、比較的柔らかい素材のブラシを使用している洗車機を選びましょう。コーティングへの影響は多少ありますが、選び方次第でリスクを抑えることができます。
- 「水洗いコース」や「シャンプーコース」など、ワックスや余計なコーティング剤が含まれない、シンプルなコースを選択しましょう
- 「撥水コート」「WAXコート」などのオプションは、施工済みのコーティングと干渉する可能性があるため避けた方が良いです
- 洗車前に車体の汚れが酷い場合は、簡単に予洗いをしてから自動洗車機に入れることで、ブラシによる傷のリスクを減らせます
- 洗車後は自前のマイクロファイバークロスで水分をしっかり拭き取りましょう
いずれの場合も、洗車後は速やかに水分を拭き取ることが、水シミ(イオンデポジット)の付着を防ぐ上で重要です。
コーティング後の適切な洗車頻度
コーティングを施工した後でも、定期的な洗車は必要不可欠です。コーティングは汚れを付きにくく、落としやすくするものですが、汚れが全く付かないわけではありません。
雨水、泥、砂埃、鳥のフン、虫の死骸、花粉、黄砂など、様々な汚れがボディに付着します。
これらの汚れを長期間放置すると、コーティング被膜にダメージを与えたり、固着して落ちにくくなったりする原因となります。
では、どのくらいの頻度で洗車するのが適切なのでしょうか。
これは、車の保管状況(屋内か屋外か)、走行距離、走行環境(都市部か郊外か、沿岸部か)、天候などによって大きく異なりますが、一般的な目安としては以下のようになります。
屋外に駐車している場合は、埃や雨、紫外線などの環境要因による汚れやダメージが蓄積しやすいため、定期的な洗車が重要です。以下のケースでは追加の洗車が推奨されます:
車庫やカーポートなど屋内に保管している場合は、屋外に比べて汚れの蓄積が少なく、雨や紫外線からも保護されているため、洗車頻度を少し減らすことができます。以下のケースでは追加の洗車が推奨されます:
特に注意したいのは、鳥のフン、虫の死骸、樹液、花粉などです。
これらは酸性度が高かったり、固着しやすかったりするため、発見したらできるだけ早く洗い流すことが重要です。放置するとコーティング被膜や塗装面にシミを作ってしまう可能性があります。
また、コーティング施工直後の洗車頻度には注意が必要です。
先ほどもお伝えしたように、コーティング被膜が完全に硬化するまでには時間がかかります。施工後、最低1週間~1ヶ月程度は洗車(特にシャンプー洗車や洗車機の使用)を控えるのが一般的です。この期間については、施工店に確認するのが最も確実です。
定期的な洗車は、コーティングの性能を維持し、愛車を美しく保つための基本となります。汚れ具合をこまめにチェックし、適切なタイミングで洗車することを心がけましょう。
水洗いだけでコーティングは維持できる?
「コーティングをしているから、洗車は水洗いだけで大丈夫」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、高品質なコーティングが施工されていれば、軽い砂埃や泥汚れ程度であれば、水洗いだけでも比較的簡単に洗い流すことができます。コーティングの防汚性能や滑水・撥水性能のおかげです。
しかし、結論から言うと、水洗いだけでコーティングを長期間維持するのは難しい場合が多いです。なぜなら、車の汚れには水だけでは落ちにくい「油性の汚れ」も含まれるからです。
例えば、排気ガスに含まれる油分、アスファルトのピッチ・タール、手で触った際の皮脂汚れなどが挙げられます。これらの油性の汚れは、水だけでは十分に分解・除去できず、徐々にボディ表面に蓄積していきます。この油膜が蓄積すると、コーティング本来の艶や撥水性が低下したり、水垢が付着しやすくなったりする原因となります。
なので、コーティングの効果を最大限に活かし長持ちさせるためには、定期的なシャンプー洗車が必要です。
目安としては、月に1回程度、あるいは数回の水洗い洗車の後に1回、コーティングに対応した中性のカーシャンプーを使って洗車するのがおすすめです。
シャンプー洗車を行う際は、以下の点に注意しましょう。
たっぷりの泡を作ることで、ボディとスポンジの間にクッションができ、洗車傷(スワールマーク)を防ぐことができます。泡立ちの良いカーシャンプーを使用し、バケツにたっぷりと泡を作りましょう。
- 車専用のカーシャンプーを使用する
- ぬるま湯を使うとより良く泡立つ
- フォームガンがあればさらに効果的
- 食器用洗剤の使用(コーティングを劣化させる)
- 泡が少ない状態での洗車
力を入れてゴシゴシ擦る必要はありません。泡の力で汚れを浮かせるイメージで、スポンジやウォッシュミットを滑らせるように洗いましょう。優しく洗うことで、コーティングへの負担を最小限に抑えられます。
- スポンジを滑らせるように動かす
- 柔らかいマイクロファイバーやウォッシュミットを使用
- 上から下へと洗う(屋根→ボンネット→サイド→下部)
- 力を入れてゴシゴシ擦る動作
- 粗いスポンジや布の使用
- 円を描くように擦る動作(渦巻き状の傷の原因に)
シャンプー成分が残らないように、たっぷりの水で洗い流すことが重要です。残ったシャンプー成分は乾くとシミや水垢の原因になります。特にドアの隙間やエンブレム周りなど、洗剤が残りやすい場所に注意しましょう。
- 十分な水量で上から下へ洗い流す
- ドアの隙間やエンブレム周りも丁寧に
- 最後は軟水やフィルター水で仕上げると水垢防止に効果的
- 水量が少ない状態でのすすぎ
- シャンプーを洗い流さずに乾かす
水滴が乾くとシミの原因になるため、すすぎ後は速やかに水分を拭き取りましょう。吸水性の高いマイクロファイバークロスを使って、優しく押さえるように水分を吸収させます。
- 清潔で吸水性の高いマイクロファイバークロスを使用
- タオルを折りたたんで使い、汚れた面が出たら折り直す
- 優しく押さえるように水分を吸収させる
- ドアの隙間や鏡の下など水分が残りやすい場所も丁寧に
- タオルを引きずるように拭く動作
- 吸水性の低いタオルの使用
- タオルを強く押しつける
- 水分を拭き取らずに自然乾燥させる
水洗い洗車は手軽で有効なメンテナンス方法ですが、それだけに頼らず、定期的なシャンプー洗車を取り入れることが、コーティングを美しく維持するための鍵となります。
高圧洗浄機用コーティング剤の選び方
ここで言う「高圧洗浄機用コーティング剤」とは、高圧洗浄機を使って施工できるタイプの簡易コーティング剤や、あるいはコーティング施工車のメンテナンスに使用するシャンプーなどを指します。
選び方のポイントをいくつかご紹介します。
使用目的によって最適なシャンプーが異なります。自分の目的に合った製品を選びましょう。
高圧洗浄機のフォームガン(泡噴射ノズル)や洗剤タンクに入れて使用できる「撥水シャンプー」や「簡易コーティング剤」があります。手軽に撥水性を付与できますが、耐久性は本格的なコーティングには劣ります。
コーティング被膜に影響を与えない「中性」のカーシャンプーを選びましょう。「コーティング施工車対応」と明記されている製品を選ぶのが確実です。泡立ちの良さや泡切れの良さも、使いやすさのポイントになります。
既に施工されているコーティングの種類に合ったシャンプーを選ぶことが重要です。コーティングの性能を最大限に保つためには、互換性を確認しましょう。
既に何らかのコーティング(特にガラスコーティングなど)を施工している車に、別のコーティング剤(特に撥水系)を重ねて使用すると、本来のコーティングの性能(例えば親水性や滑水性)を損なったり、ムラになったりする可能性があります。基本的には、施工済みのコーティングに合わせたメンテナンスシャンプー(中性シャンプー)を使用するのがおすすめです。
シャンプーの成分によっては、コーティングにダメージを与える可能性があります。特に注意すべき成分をチェックしましょう。
- 研磨剤(コンパウンド)含有シャンプー
- 強力なアルカリ性クリーナー
- 強い酸性クリーナー
これらの成分はコーティング被膜を削ったり、分解したりしてダメージを与える可能性があります。
製品によって、希釈倍率や使用方法(フォームガンでの使用可否など)が異なります。製品の説明をよく読んで、指示に従って使用してください。
フォームガン用、手洗い用、スプレー式など、製品タイプによって使い方が異なります。特にフォームガンを使用する場合は、対応製品か確認し、適切な希釈率で使用してください。一般的なカーシャンプーをそのままフォームガンに使用すると、詰まりや故障の原因になる場合があります。
高圧洗浄機は洗車を効率化する便利なツールですが、それに使用するケミカル類(シャンプーやコーティング剤)の選択も重要です。愛車の状態や目的に合わせて、適切な製品を選びましょう。
総括:コーティング車の高圧洗浄機での洗車
それでは最後に、この記事の内容をまとめます。