冬の食卓に欠かせない土鍋ですが、食後の洗い物が本当に大変ですよね。
重くて大きな土鍋をシンクで洗うのは一苦労ですし、しっかり乾かさないとカビや臭い移りも心配です。
食洗機を使っているご家庭なら、この土鍋も食洗機で洗えたらどんなに楽だろうと一度は思ったことがあるはず。でも、従来の土鍋は多孔質構造のため洗剤を吸い込んでしまい、食洗機での洗浄は基本的にNGとされてきました。
ところが最近、高耐熱セラミック素材を使った食洗機対応の土鍋が続々と登場しているんです。丸利玉樹陶器のサーマテックシリーズや萬古焼の最新モデルなど、吸水率ほぼゼロで目止め不要、しかも食洗機でガンガン洗える画期的な商品が増えています。
この記事では、なぜ従来の土鍋は食洗機で洗えないのか、最新の食洗機対応土鍋はどんな仕組みなのか、そしてIH非対応やサイズなど購入前に確認すべきポイントまで、家電店員の視点から詳しくお伝えします。
食洗機に土鍋はNG?素材による違いとリスク

このセクションでは、なぜ従来の土鍋を食洗機で洗ってはいけないのか、その理由と無理に使ってしまった場合に起こりうるリスクについて解説していきます。
実は「洗えない」のには、土鍋ならではの「ある構造」が深く関係しているんです。
なぜ従来の土鍋は洗ってはいけないのか
結論から申し上げますと、昔ながらの一般的な土鍋を食洗機で洗うことは、残念ながらおすすめできません。
お店でお客様から「一回くらいなら大丈夫じゃない?」と聞かれることがあるのですが、そのたびに「長く大切に使いたいなら、手洗いが一番ですよ」とお伝えしています。
最大の理由は、食洗機ならではの「強力な水流」と「高温洗浄」、そして「専用洗剤」の組み合わせが、繊細な土鍋にとってはあまりにも過酷だからなんです。
手洗いであれば、スポンジで優しく汚れを落とし、サッと水で流すことができますが、食洗機の中では長時間にわたって高温のお湯と洗剤のシャワーを浴び続けることになります。
特に心配なのが、食洗機の中で土鍋同士や他の食器とぶつかってしまうことです。
土鍋は陶器ですので、衝撃には強くありません。食洗機の強い水流でガタガタと動いてしまい、見えないヒビ(貫入)が入ってしまったり、最悪の場合は欠けてしまったりするリスクがあります。
お気に入りの土鍋が、洗浄中に割れてしまったら悲しいですよね。
ここがポイント
土鍋は「急激な温度変化」や「衝撃」に弱いデリケートな調理器具です。食洗機のハードな洗浄環境は、土鍋の寿命を縮める大きな要因になってしまいます。
「頑丈そうに見えるのに意外とデリケート」というのが、土鍋の本当の姿なんです。まずはこの基本を押さえておきましょう。
洗剤を吸い込む多孔質構造のメカニズム
では、なぜ土鍋はそこまでデリケートなのでしょうか。その秘密は、土鍋の素材である「土」の構造にあります。
実は、土鍋の表面には目に見えない無数の小さな穴が開いています。これを専門用語で「多孔質(たこうしつ)」と呼びます。この穴のおかげで、土鍋は熱をゆっくりと伝え、一度温まると冷めにくいという、あの素晴らしい保温性を発揮できるんです。
「土鍋は呼吸している」なんて言われることもありますが、まさにその通りなんですね。
しかし、この「呼吸する穴」が、食洗機を使う上では最大の弱点になってしまいます。
食洗機用の洗剤は、油汚れをスッキリ落とすために、手洗い用の中性洗剤よりも成分が強い「アルカリ性」のものが多く使われています。
もし、多孔質の土鍋を食洗機に入れてしまうとどうなるでしょうか?
長時間、洗剤が溶けたお湯に浸かることで、土鍋の小さな穴の奥深くまで洗剤成分が染み込んでしまうのです。表面を水ですすぐ程度では、この染み込んだ洗剤はなかなか抜けません。
想像してみてください。次にその土鍋でおいしい水炊きや雑炊を作ったとき、熱せられた土鍋の奥から、残留していた洗剤成分がジワジワと料理に溶け出してくる様子を…。
せっかくの家族団らんの食事が、洗剤の混じったものになってしまうなんて、絶対に避けたいですよね。
また強いアルカリ成分は、土鍋の表面を守っている「釉薬(うわぐすり)」や土そのものを傷め、ボロボロにしてしまう原因にもなります。
カビや臭い移りの原因になる乾燥不足
食洗機のリスクは洗剤だけではありません。
「乾燥」の工程にも落とし穴があります。
食洗機内は、洗浄が終わった直後は非常に高温多湿な環境です。土鍋は吸水性が高いため、洗浄中にたっぷりと水分を吸い込んでいます。食洗機の乾燥機能を使ったとしても、分厚い土鍋の内部まで完全に乾かしきるのは、実は結構大変なんです。
中途半端に水分が残った状態で食器棚にしまってしまうと、何が起こるでしょうか?
そう、湿気を好む「カビ」の発生です。
特に、洗剤の残りカスや、落としきれなかった料理の微細な汚れが穴の中に残っていると、それらがカビの栄養分になってしまいます。
久しぶりに土鍋を使おうと思ったら、なんだかカビ臭い…なんてことになりかねません。
また「臭い移り」も深刻な問題です。
カレーやキムチ鍋など香りの強い料理をした後、その臭いが土鍋の穴に染み込んでしまうことがあります。食洗機の中で他の汚れた食器と一緒に長時間密封されることで、他の料理の臭いまで吸収してしまうこともあるんです。
ここに注意
土鍋トラブルで一番多いのがこの「カビ」と「臭い」です。一度内部にカビが生えたり強い臭いが染み付いたりすると、完全に除去するのは非常に困難です。
「しっかり乾かしたつもり」でも、内部に水分が残っていることが多いのが土鍋の難しいところ。食洗機の乾燥機能だけ過信するのは危険だと言えますね。
食器乾燥機なら使用可能なケースもある

「じゃあ、土鍋の手入れはどうすればいいの?」と不安になられた方もいるかもしれませんが、安心してください。実は「食器乾燥機」であれば使用OKとしているメーカーもあるんです。
例えば、伊賀焼で有名な長谷園では、食洗機(洗浄機能)の使用は推奨していませんが、「食器乾燥機のご使用は大丈夫です」と明記しています。
これはどういうことかというと、土鍋にとって最大の敵は「洗剤液への浸け置き」や「水流による衝撃」であって、単に「熱風で乾かすこと」自体は問題ないケースが多いからです。
むしろ、自然乾燥だと乾くまでに数日かかることもある土鍋にとって、食器乾燥機の高温の風は、カビを防ぐための強い味方になります。
家電店員のアドバイス
乾燥機を使うときは、必ず「底面を上にして」セットしてください。土鍋の底(高台)部分は釉薬がかかっていないことが多く、そこから水分が蒸発しやすいからです。風通しを良くしてあげるのがコツですよ。
ただし、すべての土鍋が乾燥機OKとは限りませんので、必ずお手持ちの土鍋の取扱説明書を確認してくださいね。
洗浄は手洗いで優しく、乾燥は機械の力を借りてしっかりと。
この使い分けが、お気に入りの土鍋を長持ちさせる秘訣かもしれません。
食洗機に入れていい素材とダメな素材
ここまでのお話で、「やっぱり土鍋を食洗機に入れるのは諦めよう…」と思われた方も多いはずです。でも最近は技術の進歩で「食洗機に入れても大丈夫な土鍋」が登場しているんです!
見分けるポイントは、ズバリ「素材」と「吸水率」です。
ここで、食洗機に入れていい素材とダメな素材の違いをわかりやすく整理してみましょう。
| 特徴 | 従来の土鍋(食洗機NG) | 最新の対応土鍋(食洗機OK) |
|---|---|---|
| 主な素材 | 粗い土(伊賀焼など) | 高耐熱セラミック |
| 構造 | 多孔質(穴がたくさん) | 高密度(穴がほぼない) |
| 吸水率 | 高い(水を吸う) | ほぼゼロ |
| 洗剤使用 | 染み込むためNG | 染み込まないのでOK |
| 目止め | 必須(使う前にお粥を炊く) | 不要(すぐ使える) |
従来の土鍋は、先ほどご説明した通り「多孔質」で水を吸うため食洗機はNGです。
特に長時間のつけ置き洗いや、急激な乾燥による収縮には耐えられません。
一方、食洗機OKの土鍋は、「高耐熱セラミック」などの特殊な素材で作られています。
これらは土の目をギュッと詰めて焼き上げているため、吸水性が極めて低く、洗剤も水分も吸い込みません。だから食洗機の強力な洗浄にも耐えられるんですね。
「土鍋の雰囲気は好きだけど、手入れの手間は減らしたい」
そんな現代のライフスタイルに合わせて、土鍋も進化しているんです。
次は、そんな便利な食洗機対応土鍋について、さらに詳しく見ていきましょう。
進化した食洗機対応土鍋の機能とおすすめ商品

「土鍋を食洗機で洗いたい!」という私たちの願いを叶えてくれるのが、最新技術で作られた食洗機対応の土鍋たちです。これらは単に洗えるようになっただけでなく、使い勝手の面でも驚くような進化を遂げています。
このセクションでは、実際にどのような仕組みで食洗機に対応しているのか、そして私が個人的にも注目しているおすすめの製品やブランドについてご紹介します。
「こんなに便利なら早く買い替えればよかった!」と思っていただける情報が満載ですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
吸水率ほぼゼロの高耐熱セラミックとは
食洗機対応土鍋の最大の秘密、それは「吸水率がほぼゼロ」という驚異的な素材特性にあります。
先ほど、従来の土鍋は「穴だらけ(多孔質)」だとお話ししましたが、食洗機対応の土鍋に使われている「高耐熱セラミック」は、その穴を極限までなくした高密度の素材です。ガラスや磁器に近いイメージを持っていただけると分かりやすいかもしれません。
穴がないということは、「水も洗剤も汚れも、一切染み込まない」ということです。
これにより、以下の3つの大きなメリットが生まれます。
- 洗剤の残留ゼロ:食洗機の強力な洗剤を使っても、内部に染み込む心配がありません。
- カビ・臭いの悩み解消:水分が内部に残らないのでカビが生えにくく、カレーなどの匂い移りも防げます。
- 高い強度:密度が高いため、従来の土鍋よりも硬くて丈夫。食洗機内の水流にも耐えられます。
もちろん、セラミック製であっても土鍋特有の「遠赤外線効果」や「蓄熱性」はしっかりキープされている製品がほとんどです。
「洗える」という利便性と、「美味しく作れる」という土鍋の本質を両立させた、まさに現代の素材という感じですね。
買ってすぐに使える目止め不要の手軽さ
新しい土鍋を買ったとき、最初にやらなければならない儀式、それが「目止め」です。
米のとぎ汁や小麦粉を溶かしたお湯を入れて、コトコトとお粥を炊いて、一晩放置して…。
土鍋好きの方には「土鍋を育てる楽しみ」でもありますが、忙しい平日や、すぐに鍋パーティーをしたいときには、正直ちょっと面倒ですよね。
食洗機対応土鍋の嬉しいポイントは、この「目止め」が一切不要だということです。
吸水性がほぼゼロなので、でんぷん質で穴を塞ぐ必要がありません。
パッケージから出して、サッと洗えば、その日の夕食からすぐに使い始めることができます。この手軽さは、共働きのご家庭や、初めて土鍋を使う若い世代の方にもとても好評なんです。
家事の時短ポイント
「目止め」にかかる数時間の手間がゼロに。買ってきたその日にキムチ鍋やカレー鍋など、匂いや色の強い料理をいきなり作っても大丈夫なのは、高耐熱セラミックならではの強みです。
「土鍋は手入れが大変そう…」と敬遠していた方にこそ、この手軽さをぜひ体験していただきたいですね。
丸利玉樹陶器などの人気シリーズを紹介
では、具体的にどんな商品があるのでしょうか。
市場で特に人気を集めているのが、丸利玉樹陶器の「サーマテック」や「玉樹窯」といったシリーズです。
中でも私が注目しているのが、「吹きこぼれにくい直火土鍋」や「超軽量直火浅鍋」などのラインナップです。これらの製品は、高耐熱セラミック製で吸水率ほぼゼロを実現しており、もちろん本体も蓋も食洗機でガンガン洗えます。
例えば、「吹きこぼれにくい直火土鍋」は、機能性だけでなく価格面でも魅力的です。
有名なデザイン家電メーカーの土鍋と比較しても、およそ半額程度の価格帯で購入できることが多く、コストパフォーマンスが非常に高いんです。
デザインもモダンで、ホワイトやグレー、ブラウンといった、現代のキッチンに馴染むカラー展開がされています。
また、「重い」という土鍋の欠点を解消した「超軽量直火浅鍋」や「Flow 直火軽量土鍋」も見逃せません。
土鍋はどうしても重くなりがちですが、軽量化されたモデルなら、食洗機への出し入れも楽ちんです。9号サイズ(4〜5人用)のような大きな鍋でも、軽いと扱いやすさが全然違いますよ。
これらのシリーズはAmazonなどのネット通販でも手に入りやすく、口コミでも「手入れが本当に楽になった」「もっと早く買えばよかった」という声が多く寄せられています。
萬古焼などの伝統ブランドも進化中
食洗機対応の波は、実は伝統的な焼き物の産地にも広がっています。国内シェアの多くを占める萬古焼のブランドからも、食洗機対応モデルが登場しているのをご存知でしょうか。
例えば、土鍋の定番中の定番デザインである「花三島(はなみしま)」
あのグレー地に白い花柄の土鍋ですが、製造元の銀峯陶器からは、伝統的なデザインはそのままに、現代のライフスタイルに合わせた高性能なモデルが販売されています。中には食洗機に対応したものや、レンジ調理・炊飯に特化したモデルもあり、進化を続けているんです。
また、「かもしか道具店」の「ごはんの鍋」なども人気です。
こちらは炊飯に特化した土鍋ですが、食洗機に対応しています。毎日ご飯を炊く道具だからこそ、食洗機で洗えるというのは非常に大きなメリットですよね。
「伝統的な和のデザインが好きだけど、機能は最新がいい」。そんなワガママも叶えてくれるのが、今の土鍋市場の面白いところです。老舗メーカーのプライドと技術革新が詰まった製品は、使うたびに愛着が湧いてくると思います。
IH非対応やサイズなど購入前の確認点
ここまで良いことづくめでお話ししてきましたが、購入前に必ず確認していただきたい注意点(デメリット)もいくつかあります。
購入前のチェックリスト
- 熱源のタイプ: IHクッキングヒーターに対応しているか?
- サイズ: ご自宅の食洗機に入る大きさか?
- 予洗いの手間: 焦げ付きはこすり落とす必要がある。
まず一番の注意点は、「食洗機対応=IH対応」ではないということです。
現在販売されている食洗機対応のセラミック土鍋の多くは、残念ながら「直火専用」か、IH非対応のものが主流です。
オール電化住宅にお住まいの方は、必ず「IH対応」と明記されているかを確認してください。もし非対応のものを買ってしまった場合は、カセットコンロを用意して卓上で楽しむというスタイルになります。
次に「サイズ」の問題です。
特に4〜5人用の9号サイズ(直径約28cm前後)となると、かなりの大きさになります。
パナソニックやリンナイの「深型(ディープタイプ)」のビルトイン食洗機なら余裕を持って入ることが多いですが、卓上型の食洗機や、浅型のビルトインタイプだと、「物理的に入らない!」という悲劇が起こりかねません。
購入前に、土鍋の直径と高さ、そしてご自宅の食洗機の庫内寸法をメジャーで測ることを強くおすすめします。
最後に、いくら食洗機対応といっても、頑固な焦げ付きまでは落とせません。
おじやの後にこびりついた焦げなどは、食洗機に入れる前に軽く予洗いして、物理的に落としておく必要があります。
焦げが残ったまま食洗機に入れると、フィルター詰まりの原因にもなりますので注意してくださいね。
毎日の家事が楽になる食洗機対応土鍋の魅力
今回は、食洗機対応土鍋について詳しくご紹介してきました。
土鍋はお鍋の季節だけでなく、炊飯や煮込み料理、オーブン料理など、実は一年中活躍できる万能な調理器具です。これまでの「手入れが面倒」「カビが心配」というネックが解消されることで、土鍋の出番は劇的に増えるはずです。
食事が終わった後、重たい土鍋をシンクでゴシゴシ洗うのではなく、サッと予洗いして食洗機にお任せできる。空いた時間で家族と食後のデザートを楽しんだり、ゆっくりお茶を飲んだりできる。
「食洗機対応土鍋」がもたらしてくれるのは、単なる便利さ以上に、そんな「心のゆとり」かもしれません。
もし今、土鍋の買い替えを検討されているなら、ぜひ「食洗機対応」という選択肢を加えてみてください。きっと、毎日の料理と後片付けがもっと楽しく快適になるはずですよ。


